元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

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テレワーク中の転倒事故は労災(業務災害)か=自宅かどうかは労災の要件ではない

2021-02-21 13:35:39 | 社会保険労務士
 業務災害は「業務起因性」「業務遂行性」によって判断=会社の事故と同様

  テレワーク中の業務に関する事故による負傷について、労災は適用になるのか。自宅の仕事であって、会社での事故ではないからといって、一概に、労災(業務災害)ではないとはいえません。

 労災(業務災害)の要件は、①「業務起因性」といいますが、簡単に言うと「業務による危険等によって実際に負傷等が起きたこと」、すなわち業務と負傷した事故等との関連性があることが重要なのです。また、②「業務遂行性」という「その労働者が事業者の支配下において、命じられた業務に従事しようとする意志行動」かどうかも必要となります。会社の命じられた仕事をするのであれば、自宅か会社か関係なく、この業務起因性に該当する可能性があるのです。この①業務起因性と②業務遂行性を判断して、両方とも満たした場合に、はじめて労災は適用になります。

 どこにも、会社での仕事中でないといけないとは書いてないのです。自宅で仕事中にけがをした場合に、必ずしも労災が適用にならないとはいえません。

 さて、労働基準監督署では「自宅で、会社の仕事としてパソコン業務を行っていた方が作業場所からトイレに立ち、作業場所に戻った際に椅子に座ろうとしたところ、転倒した事故」が労働災害として認められています。まず、業務遂行性については、端的に言えば、会社が自宅で仕事をするように命令して、その仕事をしている最中ですので、これはいうまでもなくOK。業務起因性はどうでしょうか。トイレ後に作業場所に座ろうとしたときに転倒した例です。業務による危険が現実に起きたことになります。トイレに行く行為はどうなのかという方がいるかもしれませんが、これは仕事中の「自然行為」です。会社にあっても、トイレに行く行為は認められますので、それに伴う一連の行為として起きた転倒事故と考えられます。そして、これは、まぎれもなく、業務遂行性と起因性によって起きた転倒ですね。一言申し上げると、転倒が労働者の不注意があったとかは関係ありません。労働者の不注意があったとしても、労災としては認められます。民法上の損害賠償とは違いますので、留意してください。

 しかし、焼酎を飲んでいて、飲みすぎた状態で、仕事をしていて、酔っぱらったことが原因で、けがをした場合はどうでしょう。酔っぱらったことが原因と書きました。これでは仕事に関して負傷したとはいえませんので、アウトでしょう。

 テレワークでは、だれも見ていませんので、業務が原因で起こったのかが分かりません。労働者も意図的でなくとも、自分に良いように申し上げることがないとは言えません。会社も自宅で仕事を命じた以上、労災事故なのかも分からないリスクがあることは考えなければなりません。会社は、日ごろから、在宅の就業場所、適正な労働時間、業務の進捗、私的時間の把握等を管理して、労災事故の危険に備えるようにしましょう。

 参考 テレワークの労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本 秀和システム 寺林顕ほか著


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