元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

労働時間は就業規則の定めいかんでなく、客観的に決まる!!

2011-09-17 04:09:25 | 社会保険労務士

労働時間とは?使用者の指揮命令下にある時間!! 


 労働時間の管理方法は分かったが、果たして「労働時間」が何かがわからなければ労働時間を計りようがありません。
 
 実は、労働基準法には労働時間の定義は、どこにも見当たりません。
 
 厚労省の解釈のよれば、労働時間とは「一般的に、指揮命令のもとにあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体的を活動させていることを要件とはせず、業務に即応すべき体制にある状態の下で労働から解放されず待機している時間と評価される時間を含めて「使用者の指揮命令下に置かれている労働時間」をいう」とされています。(「改訂版労働基準法」)
 
 最高裁も「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、労働時間に該当するかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではないと解するのが相当である」(平成12・3・9最高裁、三菱重工業長崎造船所事件)としています。
 就業規則の定めによることなく、客観的に「使用者の指揮命令下の置かれている時間」であれば、労働時間としているわけです。
 
 そして、安西弁護士によれば、この指揮命令下の労働を判例や通達などから、次のように具体化しています。
 1、場所的(どこで業務や作業等の行為を行うか) 
 2、時間的(何時から何時までどのようなスケジュールで行うのか) 
 3、態度、行動上(どのような態度、秩序、規則等を守って行うのか) 
 4 内容・業務遂行上(どんな行為をどのような方法、手順で、どのようにしておこなうのか) 
 5、労働指揮権に基づく支配、監督的(上司の監督下、服務支配下に行う必要があるか、あるいはそれを行わないと懲戒処分などや上司からの叱責を受けたり、賃金・賞与等の取り扱い上不利益を受けるものであるか)
 に、この一定の拘束されるかどうかの要件を全て満たして、業務あるいは一定の使用者の事業のための行為をなしていると評価される時間が労働時間とされるとしています。
  
 例えば、自宅でちびりちびり酒を飲みながら、なでしこの試合を見ながら、仕事をしたとしても残業とはなりません。場所的にも、時間的にも、態度上にも自由任意であるからです。しかし、このような極端な例をあげましたので、労働時間ではないといえるのですが、次のような場合は、どうでしょうか。

 出張の場合の移動時間は、一般的には、労働時間ではないとされるが、事業所から利用者、利用者から利用者への移動をおこなう居宅介護事業者の場合、厚労省は「介護サービスの利用者間の移動を使用者が命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる場合には、労働時間に該当する。」とされるとしていますので、必ずしも場所的には事業所とは限らないことになります。
 
 また、終了間際になって、終了時間まで終わらないような仕事を与えたりした場合に、残業しなさいといわなくても「黙示的な命令」とみなされ、「労働時間」の延長となりますので、この黙示的な命令も、微妙なさまざまな場面が想定されます。このように、実際に具体的に見ていくと非常に難しい面がありますので、ここはまた、別の機会に譲ることにします。

(参考)安西愈著 「採用から退職までの法律知識」及び「労働時間・休日・休暇の法律実務」



 
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労働時間の管理は、いわゆる4・6通達があります!!

2011-09-16 03:22:00 | 社会保険労務士
 労働時間管理は難しいものですが、労働トラブルの大きな要因であり、使用者は避けては通れません。 
 
 とうとう長きに亘っての「パートさんのシリーズ」になりましたが、これもパートさんに限らず一般職員についても、いえることですが労働時間の管理を巡っての問題があります。
 
 基本的には、労働時間の把握方法は、1、上司による現認 2、タイムカード等による客観的な方法、それが困難である場合に、自己申告。その自己申告も、適切に行われるように、1、従業員への事前説明 2、適切な自己申告を阻害するような時間外労働の上限時間数設定などの禁止 3、必要に応じての実態把握 の措置を行うよう求めています。
 これについては、異論もあるようですが、厚労省が平成13年4月6日付で示した基準では、要約すれば以上のようになっています。
 
 以上のことを前提に、労働時間管理については、微妙なところもあり、かつあんちょこ的に(あんちょこの方が自分としては理由としては多いような気がします。)全面的に、北岡氏の著書の中から「パート社員の労働時間管理について」を紹介します。
 なお、原文をそのままの形で載せる(「てにおは」などの変換ミスはお許しください。)ことにしますが、紙面の関係上、前後を端折っていますので、北岡氏の意味するところと違っていたらごめんなさい。その編集責任は当然私にあります。
 
 問題とされた相談内容というのは、ある会社で、パートの時間管理をタイムカードで行ってきたが、打刻漏れが多いため自己申告としたところ、労基署の調査によりが適切でないとされ、残業代の遡及支払いと労働時間の管理方法の変更を指導されましたが、このような指導に従わなければならないのかというものです。(以下「有期雇用のトラブル対応の実務」(北岡著)から)
 
 実務上よく問題になるのが、自己申告とその他の客観的に確認できる在社時間(例えば、事務職社員が使用するパソコンのログイン・ログオフ時間)との齟齬が生じている場合です。

 労基署担当者によっては、2つの時間を比較してその齟齬が大きい場合には、自主申告時間が適切なものではないとの心証を持ち、会社に厳しい指導を行う例が多いものです。パート社員についても、店舗勤務であれば警備記録・レジ閉めなどの時間と自主申告時間が比較され、齟齬が大きい場合は指導される可能性があります。

 労働時間管理の方法が不適切である等の指導を受けた場合には、やはり改善を図る必要があります。

 上記のような齟齬が生じて指導を受けた場合は、上長等が改めて出社時、退社時ではなく始業時・終業時にそれぞれタイムカードを打刻するよう指導し、タイムカードによる労働時間を確実なものにすることが考えられます。

 この方法がむずかしい場合には、社内点検をはじめとした適正管理のための対応を講じたうえで自主申告による管理を検討します。

 パート社員については特に休憩時間の管理が困難です。飲食業では、交代で細切れに与えている例が少なくなく、その休憩時間中に「お客がきたら対応してくれ」と指示している例も見受けられます。

 休憩時間は労働者の自由利用とするのが原則であり、実際に仕事を行わせた場合はもちろん、即時の顧客対応を求めていた場合、その休憩時間自体が労働時間に該当するおそれがあります。

 今後は、この休憩時間をいつからいつまで確実に取得しているか、確実に把握するべく、タイムカード等をはじめとした勤怠管理の方法を改善していく必要があります。(以上「北岡著」)


 
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採用の際の労働条件の書面不交付のリスクは?

2011-09-14 04:14:39 | 社会保険労務士
労働契約の労働条件を書面交付しないことは、大きなリスクがあります!!

 パートさんの社会保険・労働保険に加入しなければならない基準をシリーズになってしまいましたが、紹介してきました。この中で、私の不勉強のため、自分の言葉で説明できなくて、何度か北岡大介氏の著書からの引用に頼らざるを得ませんでした。北岡氏は、かって労働基準監督官であった人です。その北岡氏が、パートに限った問題ではなく、一般の雇用についてもありうることですが、次のような問題を提示しています。
 
 採用したAさんに、口頭で勤務内容は伝えたが契約書等の文書は交付しなかったところ、採用段階で申告していた能力・知識・経験いずれも偽りであったことが発覚し、採用から1か月もたたないうちに自己都合退職しました。その後、書面交付がなかった旨のクレームが来ましたが、退職していたのでそのままにしていたところ、労基署に労基法15条違反を理由に告訴したと連絡して来ました。
 
 使用者は、労働契約の締結の際に、労働条件を明示しなければなりません。その労働条件の範囲は、労規則5条に示してありますが、特に 1、労働契約期間、2、就業の場所・業務、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、並びに2組以上で就業させる場合の就業転換に関すること、3、賃金に関すること、4、退職に関することに対しては、契約書や労働条件通知書などの書面で交付しなければなりませんが、就業規則で書いてある箇所を示して交付することも可としています。以上が労基法15条の内容です。しかし、これについては、厚労省がモデルの様式の「労働条件通知書」を示していますので、これを交付すれば、まず問題はありません。
 
 問題とされるのは、採用に当たって、事例のように、全て口頭の説明のみで行った点です。この場合は、口頭で説明しているし、単に形式的に違反しているだけでそんなに大きな問題にならないと思われるかもしれませんが、そうではないということなのです。再び、北岡氏に説明していただきます。
 
 労働基準監督官は、労基法等の労働関係法令に違反する行為に対して、特別司法警察職員としての職権が付与されており、犯罪捜査の上、検察庁に事件送致する権限が与えられています。(労基法102条)、犯罪捜査は、任意捜査はもとより、いわゆるガサ入れといわれる「捜索差押」、さらには被疑者の逮捕も裁判所の令状を得て行うことが可能です。(以上北岡著「有期雇用のトラブル対応実務」p19)
 
 このトラブルは、形式的には労基法違反、刑事罰の対象となりますが、在職中に求めがあったなら、それに応じて交付、また行政指導があったなら必ず交付したはずですので、こういった形式犯に対して、刑事告発をして、刑事罰の対象とすることは、一般にはおおいに疑問のあるところでしょう。
 
 ところが、北岡氏は、次のように言っています。
 本事案において注目すべきは、Aさんが「刑事告訴」すると主張している点です。この刑事告訴がなされた場合、刑事訴訟法242条のとおり、司法警察官は速やかに検察官に事件送致しなければなりません。そのため、いかに形式犯であれ、労働基準監督官が同事件の告訴を受けた場合は、犯罪捜査をし、検察庁に事件送致をしなければなりませんし、会社側も捜査に応じなければなりません。・・・・・・・・・・
 これに対し会社側が(この)任意調査を拒否した・・・・場合には、・・・・前述の強制捜査(捜索差押・逮捕)の対象となるリスクがありますので、ここでの対応には十分な注意が必要です。
 以上のとおり、従業員を雇い入れた際の「労働条件の明示」は、一見さほど重要でないものにみえて、実のところ、会社側に大きなリスクが潜在するものです。リスク回避のためには、まず採用段階で完全な労働条件明示を実施することが重要です。・・・としています。(以上、北岡同著)
 
 先に、紹介しましたが、厚労省の様式がありますので、これに記入して交付するだけで、こういったリスクは回避できます。


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パート就業規則等の労働時間が週30時間未満であれば、社会保険に加入させなくてよいのか。

2011-09-12 05:16:27 | 社会保険労務士
社会保険加入判断の「3/4基準」は、就業規則等でなく実態で判断!!
 
 今回は、前々回(9/5)から引き続き、パートさんの雇用保険及び社会保険(=健康保険と厚生年金保険、以下「健康保険」と「厚生年金保険」を併せて「社会保険」といいます。)の加入についての判断基準について、紹介してきましたが、今回は、この社会保険について、もう少し見ていきます。社会保険の加入の判断基準を再度申し上げますと、次のとおりです。
 
 下記の1,2の、勤務時間及び勤務日数の両基準を満たしたときに被保険者になります。
 1 一日、または一週間の所定労働時間が、その事業所で同種の業務を行う一般社員の労働時間の労働時間のおおむね4分の3以上であること。
 2 一か月の所定労働時間が、その事業所で同種の業務を行う一般社員の労働日数のおおむね4分の3以上であること。
  上記4分の3以上はひとつの目安で、個々の事例について就労形態等を総合的に勘案し、年金事務所等が「常態的な使用関係」にあるかを最終的に判断します。
 
 最終的に「常態的使用関係」にあれば、社会保険に加入させなければならないということですが、もともとは、これは昭和55年6月6日の厚生省の内かんに示されているものです。
 
 ところで、「常態的な雇用関係」であると認められるのは、勤務の実態なのか、雇用契約書や就業規則に定めているもので、判断するのかということです。就業規則等で定めているので判断するのであれば、例えば他の一般職員の一週間の労働時間が40時間とした場合に、就業規則で30時間未満の範囲に定めれば、3/4以上ではありませんので加入させなくてもよいことになります。しかし、「常態的」にパートに残業させている場合、就業規則に30時間未満で定めていたとしても、実態では、常に30時間以上となっているときに、これを加入させなくてもいいのかという問題です。

 ここで、前回紹介した、北岡大介氏に登場してもらいます。(以下、「有期雇用のトラブル対応実務チェックリスト」P55、同氏著からの引用です。)

 行政実務はこの点、明確な通達を示しておらず、今なお担当者によっては判断が右往左往している印象がありますが、会計検査院の監査の場(*先にこの本の中で、会計検査院が同行した、年金事務所の調査を説明しているが、このことを指すと思われる。)を見ると、基本的に勤務の実態をみて判断しています。監査当日に年金事務所等が重点的に見るのが直近3か月間のタイムカード、賃金台帳です。直近の月から社会保険未加入のパートタイマー・アルバイトの総労働時間が4分の3基準以上かどうかを確認していきます。超過したものがいれば、付箋をはり、前月、前々月の同人の勤務状況をさかのぼっていきます。
 直近3か月をさかのぼって正社員の所定労働時間数に比して4分の3以上の総労働時間数が認められるパート、アルバイトなどの短時間就労者がいれば、同人は「適用対象」とされ、さらに最大2年までチェックを受けることになるものです。(以上、同著)

 これについては、会計検査院が同行している場合は、年金事務所自身も「監査」を受けている立場でありと同氏は書いていますが、同じ国等の機関の中で会計検査院は、独立した強力な権限を持った監査を行う機関であり、不正や法律に違反しないかの、お目付け役です。この会計検査院同行の検査の場合、北岡氏の言うように、年金事務所は会計検査院から「ちゃんと事業所の調査を行っているか」の監査を受けている立場であり、その場合の年金事務所のその対応は法律、通知に基づいた厳正な対応をすることになりますので、この会計監査院同行の場合が、「年金事務所」の「最終的な判断」とみていいようです。ということは、「実態」が4分の3基準にあるかどうかで決めることは明らかです。

 届け出は、一般職員の記載のみで受け付けたではないかとの声がきそうですが、本来該当するパートがいたら、事業所側で届け出るべき筋合いのものであり、年金事務所も届け出の際に実地にチェックし、該当するパートがいますよということまではしないのが実情でしょう。就業規則等を届け出の際、添付させるのは、就業規則等と実態があっているとの前提で、一応の受付を行うに過ぎないということでしょう。

 このことは、就業規則や雇用契約書が4分の3基準を満たさなかったとしても、パート等に常に残業がある場合は、調査により2年間さかのぼって、社会保険を納付しなければならないリスクがあることになります。

 なお、前回も申し上げましたが、この社会保険加入のメルクマールの4分の3は、4分の3以上ですので、その時点からですので、4分の3は含みます,注意してください。また、一般職員の週の所定労働時間が、例えば、36時間の場合は、パート等の労働時間の目安は、36時間×3/4=27時間となり、必ずしも一般に言われているように、「30時間」ではありませんので、この点についても、注意してください。



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パートは短期雇用契約期間を更新すれば、雇用保険に入れなくてもいいの?

2011-09-09 06:45:09 | 社会保険労務士
 パートの継続雇用31日以上の見込があれば、雇用保険の被保険者!!

 雇用保険の被保険者になるのは、1.1週間の所定労働時間が20時間以上の場合 2.同一の事業者に継続して31日以上雇用されることが見込まれること これが1.2.両方とも満たされれば、被保険者でありますので、雇用保険の対象者として、計算の基礎に入れなければなりません。前回(9/5)までの結論をまとめますと以上です。これを考えなければならないのは、いわゆるパートさんなどであると申し上げました。

 では、週の所定労働時間がちょうど20時間、継続雇用31日ちょうどの場合はどうなるかというと、「以上」ですから、そこから適用ですので、被保険者となります。契約期間を決めていない場合も同様です。定めていないのは、ずーとということになりますから、どちらかが辞めるといわない限り、ずーと勤めることになりますので。また、契約更新が約束され、それにより31日以上となる場合も同様です。 21年4月1日から、1か月(正確には31日)の継続雇用に、1年継続雇用から変更になっていますので、行政調査等で分かった場合は、21年4月からまとめて取られてしまうことになります。

 これは、法律を見る限り、当然の解釈です。では、この継続雇用期間の31日以上は、「見込み」となっていますが、契約更新が必ず定められているのでなく、「場合によって契約期間を更新する場合」は、どう考えたらいいのでしょうか。以下、「有期雇用のトラブル対応実務チェックリスト」(北岡大介著)から、引用します。

 問題は、31日未満の雇用契約を締結し、かつ一定の条件(例えば成績優良など)を付した上で更新する旨を定めている場合などです。この場合、ただちに雇用契約が31日以上となることを確約したものとは言えないので、一見、継続雇用の見込みはないように思われます。

 これについては厚労省は、行政解釈で「雇い入れの目的、当該事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者の過去の就労実績等からみて、契約を更新し、31日以上雇用されることが見込まれる場合」は、契約当初から「31日以上の雇用契約の見込み」があると判断するとしています。同種労働者の過去の就労実績等において、大多数が実態として「31日以上」の雇用継続実績が認められればこれにあたるとされる余地を残す判断基準であり、思いのほか厳しいものといえます。

 以上のような雇用実績等がみられない31日未満の有期雇用契約者が、雇い入れから31日以上引き続き雇用された場合はどうでしょうか?この場合については、その後31日未満で離職することが確実であることを除き、31日の雇用実績「以降」、雇用保険の適用対象者となります。となっています。(以上、北岡著)

 何度も言いますが、雇用保険の被保険者の適用対象者は、1年の継続雇用から1か月の継続雇用に、22年4月1日から変更になっています。行政調査があってあわてる前に、アルバイト、パートの雇用状況を見直ししてみましょう。




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