労基法では法定労働時間超の場合に割増を付ける!!
経営者の方に申し上げますが、時間外労働の割増賃金を支払わなければならない場合は、あくまでも一日8時間、週40時間を超えた労働の場合ですよね。例えば、一日7時間、週35時間の会社があったとして、一日1時間、週5時間の労働時間の超過までは残業させても、労働基準法では、割増賃金を付けなくても問題ありません。
しかし、この会社の決めた労働時間である、所定労働時間を超えた場合には、割増賃金を支払う就業規則になっている会社も多いと思われます。もちろん、労働基準法は、労働者の労働条件の最低限の保障をしているものであり、それ以上の割増賃金を支払えればそれに越したことはありません。しかし、このご時世で、残業代が嵩み経営を圧迫しているにもかかわらず、漫然と支払っているとしたら、それは問題ですね。
逆に、中には、就業規則では、この「所定労働時間を超えている場合に、割増を支払うとしている」にかかわらず、労働基準法によって、法定の一日8時間、週40時間を超えた場合にしか割増を付けていないところもあるかもしれませんが、就業規則によらない点において、それも問題ですというより、法律違反(労働契約法/労働基準法)です。
これは、会社の労働時間を就業規則で決める際に、その会社で決めた「所定労働時間」と労働基準法の定めた労働時間の「法定労働時間」をちゃんと区別することを意識せず、就業規則を定めたことに原因がありそうです。所定労働時間と法定労働時間が同じ場合は、全く問題ありませんが、その所定労働時間と法定の労働時間が同じであることを前提に作られたモデル就業規則を参考に、単に、労働時間を短縮させているだけの規定としたら、やはり意識して就業規則を見直す価値はありそうです。
次のとおり、ちょっとした条文を就業規則に加えることで、割増賃金を支払わなければならない場合とそうでない場合を区別することができます。
第○条 割増賃金は、本就業規則の規定により時間外労働を行った場合で、実労働時間が法定労働時間を超えた場合、その時間について支給する。所定労働時間を超えた時間外労働であっても、法定労働時間を超えない労働時間については、通常支給する賃金を元に算出した賃金を支給する。→以下、割増賃金の計算方法を続ける。(この○条の規定は、前回の「未払い残業代問題解決の実務」糀谷博和共著に掲載されており、これを参考としている。)
もちろん、これは就業規則の不利益変更に当たりますので、労働者と同意等を図ることが前提になることは、言うまでもありませんので、念のため申し添えます。