元・還暦社労士の「ぼちぼち日記」

還暦をずっと前に迎えた(元)社労士の新たな挑戦!ボチボチとせこせこせず確実に、人生の価値を見出そうとするものです。

パート就業規則等の労働時間が週30時間未満であれば、社会保険に加入させなくてよいのか。

2011-09-12 05:16:27 | 社会保険労務士
社会保険加入判断の「3/4基準」は、就業規則等でなく実態で判断!!
 
 今回は、前々回(9/5)から引き続き、パートさんの雇用保険及び社会保険(=健康保険と厚生年金保険、以下「健康保険」と「厚生年金保険」を併せて「社会保険」といいます。)の加入についての判断基準について、紹介してきましたが、今回は、この社会保険について、もう少し見ていきます。社会保険の加入の判断基準を再度申し上げますと、次のとおりです。
 
 下記の1,2の、勤務時間及び勤務日数の両基準を満たしたときに被保険者になります。
 1 一日、または一週間の所定労働時間が、その事業所で同種の業務を行う一般社員の労働時間の労働時間のおおむね4分の3以上であること。
 2 一か月の所定労働時間が、その事業所で同種の業務を行う一般社員の労働日数のおおむね4分の3以上であること。
  上記4分の3以上はひとつの目安で、個々の事例について就労形態等を総合的に勘案し、年金事務所等が「常態的な使用関係」にあるかを最終的に判断します。
 
 最終的に「常態的使用関係」にあれば、社会保険に加入させなければならないということですが、もともとは、これは昭和55年6月6日の厚生省の内かんに示されているものです。
 
 ところで、「常態的な雇用関係」であると認められるのは、勤務の実態なのか、雇用契約書や就業規則に定めているもので、判断するのかということです。就業規則等で定めているので判断するのであれば、例えば他の一般職員の一週間の労働時間が40時間とした場合に、就業規則で30時間未満の範囲に定めれば、3/4以上ではありませんので加入させなくてもよいことになります。しかし、「常態的」にパートに残業させている場合、就業規則に30時間未満で定めていたとしても、実態では、常に30時間以上となっているときに、これを加入させなくてもいいのかという問題です。

 ここで、前回紹介した、北岡大介氏に登場してもらいます。(以下、「有期雇用のトラブル対応実務チェックリスト」P55、同氏著からの引用です。)

 行政実務はこの点、明確な通達を示しておらず、今なお担当者によっては判断が右往左往している印象がありますが、会計検査院の監査の場(*先にこの本の中で、会計検査院が同行した、年金事務所の調査を説明しているが、このことを指すと思われる。)を見ると、基本的に勤務の実態をみて判断しています。監査当日に年金事務所等が重点的に見るのが直近3か月間のタイムカード、賃金台帳です。直近の月から社会保険未加入のパートタイマー・アルバイトの総労働時間が4分の3基準以上かどうかを確認していきます。超過したものがいれば、付箋をはり、前月、前々月の同人の勤務状況をさかのぼっていきます。
 直近3か月をさかのぼって正社員の所定労働時間数に比して4分の3以上の総労働時間数が認められるパート、アルバイトなどの短時間就労者がいれば、同人は「適用対象」とされ、さらに最大2年までチェックを受けることになるものです。(以上、同著)

 これについては、会計検査院が同行している場合は、年金事務所自身も「監査」を受けている立場でありと同氏は書いていますが、同じ国等の機関の中で会計検査院は、独立した強力な権限を持った監査を行う機関であり、不正や法律に違反しないかの、お目付け役です。この会計検査院同行の検査の場合、北岡氏の言うように、年金事務所は会計検査院から「ちゃんと事業所の調査を行っているか」の監査を受けている立場であり、その場合の年金事務所のその対応は法律、通知に基づいた厳正な対応をすることになりますので、この会計監査院同行の場合が、「年金事務所」の「最終的な判断」とみていいようです。ということは、「実態」が4分の3基準にあるかどうかで決めることは明らかです。

 届け出は、一般職員の記載のみで受け付けたではないかとの声がきそうですが、本来該当するパートがいたら、事業所側で届け出るべき筋合いのものであり、年金事務所も届け出の際に実地にチェックし、該当するパートがいますよということまではしないのが実情でしょう。就業規則等を届け出の際、添付させるのは、就業規則等と実態があっているとの前提で、一応の受付を行うに過ぎないということでしょう。

 このことは、就業規則や雇用契約書が4分の3基準を満たさなかったとしても、パート等に常に残業がある場合は、調査により2年間さかのぼって、社会保険を納付しなければならないリスクがあることになります。

 なお、前回も申し上げましたが、この社会保険加入のメルクマールの4分の3は、4分の3以上ですので、その時点からですので、4分の3は含みます,注意してください。また、一般職員の週の所定労働時間が、例えば、36時間の場合は、パート等の労働時間の目安は、36時間×3/4=27時間となり、必ずしも一般に言われているように、「30時間」ではありませんので、この点についても、注意してください。



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