労働契約の労働条件を書面交付しないことは、大きなリスクがあります!!
パートさんの社会保険・労働保険に加入しなければならない基準をシリーズになってしまいましたが、紹介してきました。この中で、私の不勉強のため、自分の言葉で説明できなくて、何度か北岡大介氏の著書からの引用に頼らざるを得ませんでした。北岡氏は、かって労働基準監督官であった人です。その北岡氏が、パートに限った問題ではなく、一般の雇用についてもありうることですが、次のような問題を提示しています。
採用したAさんに、口頭で勤務内容は伝えたが契約書等の文書は交付しなかったところ、採用段階で申告していた能力・知識・経験いずれも偽りであったことが発覚し、採用から1か月もたたないうちに自己都合退職しました。その後、書面交付がなかった旨のクレームが来ましたが、退職していたのでそのままにしていたところ、労基署に労基法15条違反を理由に告訴したと連絡して来ました。
使用者は、労働契約の締結の際に、労働条件を明示しなければなりません。その労働条件の範囲は、労規則5条に示してありますが、特に 1、労働契約期間、2、就業の場所・業務、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、並びに2組以上で就業させる場合の就業転換に関すること、3、賃金に関すること、4、退職に関することに対しては、契約書や労働条件通知書などの書面で交付しなければなりませんが、就業規則で書いてある箇所を示して交付することも可としています。以上が労基法15条の内容です。しかし、これについては、厚労省がモデルの様式の「労働条件通知書」を示していますので、これを交付すれば、まず問題はありません。
問題とされるのは、採用に当たって、事例のように、全て口頭の説明のみで行った点です。この場合は、口頭で説明しているし、単に形式的に違反しているだけでそんなに大きな問題にならないと思われるかもしれませんが、そうではないということなのです。再び、北岡氏に説明していただきます。
労働基準監督官は、労基法等の労働関係法令に違反する行為に対して、特別司法警察職員としての職権が付与されており、犯罪捜査の上、検察庁に事件送致する権限が与えられています。(労基法102条)、犯罪捜査は、任意捜査はもとより、いわゆるガサ入れといわれる「捜索差押」、さらには被疑者の逮捕も裁判所の令状を得て行うことが可能です。(以上北岡著「有期雇用のトラブル対応実務」p19)
このトラブルは、形式的には労基法違反、刑事罰の対象となりますが、在職中に求めがあったなら、それに応じて交付、また行政指導があったなら必ず交付したはずですので、こういった形式犯に対して、刑事告発をして、刑事罰の対象とすることは、一般にはおおいに疑問のあるところでしょう。
ところが、北岡氏は、次のように言っています。
本事案において注目すべきは、Aさんが「刑事告訴」すると主張している点です。この刑事告訴がなされた場合、刑事訴訟法242条のとおり、司法警察官は速やかに検察官に事件送致しなければなりません。そのため、いかに形式犯であれ、労働基準監督官が同事件の告訴を受けた場合は、犯罪捜査をし、検察庁に事件送致をしなければなりませんし、会社側も捜査に応じなければなりません。・・・・・・・・・・
これに対し会社側が(この)任意調査を拒否した・・・・場合には、・・・・前述の強制捜査(捜索差押・逮捕)の対象となるリスクがありますので、ここでの対応には十分な注意が必要です。
以上のとおり、従業員を雇い入れた際の「労働条件の明示」は、一見さほど重要でないものにみえて、実のところ、会社側に大きなリスクが潜在するものです。リスク回避のためには、まず採用段階で完全な労働条件明示を実施することが重要です。・・・としています。(以上、北岡同著)
先に、紹介しましたが、厚労省の様式がありますので、これに記入して交付するだけで、こういったリスクは回避できます。
パートさんの社会保険・労働保険に加入しなければならない基準をシリーズになってしまいましたが、紹介してきました。この中で、私の不勉強のため、自分の言葉で説明できなくて、何度か北岡大介氏の著書からの引用に頼らざるを得ませんでした。北岡氏は、かって労働基準監督官であった人です。その北岡氏が、パートに限った問題ではなく、一般の雇用についてもありうることですが、次のような問題を提示しています。
採用したAさんに、口頭で勤務内容は伝えたが契約書等の文書は交付しなかったところ、採用段階で申告していた能力・知識・経験いずれも偽りであったことが発覚し、採用から1か月もたたないうちに自己都合退職しました。その後、書面交付がなかった旨のクレームが来ましたが、退職していたのでそのままにしていたところ、労基署に労基法15条違反を理由に告訴したと連絡して来ました。
使用者は、労働契約の締結の際に、労働条件を明示しなければなりません。その労働条件の範囲は、労規則5条に示してありますが、特に 1、労働契約期間、2、就業の場所・業務、始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、並びに2組以上で就業させる場合の就業転換に関すること、3、賃金に関すること、4、退職に関することに対しては、契約書や労働条件通知書などの書面で交付しなければなりませんが、就業規則で書いてある箇所を示して交付することも可としています。以上が労基法15条の内容です。しかし、これについては、厚労省がモデルの様式の「労働条件通知書」を示していますので、これを交付すれば、まず問題はありません。
問題とされるのは、採用に当たって、事例のように、全て口頭の説明のみで行った点です。この場合は、口頭で説明しているし、単に形式的に違反しているだけでそんなに大きな問題にならないと思われるかもしれませんが、そうではないということなのです。再び、北岡氏に説明していただきます。
労働基準監督官は、労基法等の労働関係法令に違反する行為に対して、特別司法警察職員としての職権が付与されており、犯罪捜査の上、検察庁に事件送致する権限が与えられています。(労基法102条)、犯罪捜査は、任意捜査はもとより、いわゆるガサ入れといわれる「捜索差押」、さらには被疑者の逮捕も裁判所の令状を得て行うことが可能です。(以上北岡著「有期雇用のトラブル対応実務」p19)
このトラブルは、形式的には労基法違反、刑事罰の対象となりますが、在職中に求めがあったなら、それに応じて交付、また行政指導があったなら必ず交付したはずですので、こういった形式犯に対して、刑事告発をして、刑事罰の対象とすることは、一般にはおおいに疑問のあるところでしょう。
ところが、北岡氏は、次のように言っています。
本事案において注目すべきは、Aさんが「刑事告訴」すると主張している点です。この刑事告訴がなされた場合、刑事訴訟法242条のとおり、司法警察官は速やかに検察官に事件送致しなければなりません。そのため、いかに形式犯であれ、労働基準監督官が同事件の告訴を受けた場合は、犯罪捜査をし、検察庁に事件送致をしなければなりませんし、会社側も捜査に応じなければなりません。・・・・・・・・・・
これに対し会社側が(この)任意調査を拒否した・・・・場合には、・・・・前述の強制捜査(捜索差押・逮捕)の対象となるリスクがありますので、ここでの対応には十分な注意が必要です。
以上のとおり、従業員を雇い入れた際の「労働条件の明示」は、一見さほど重要でないものにみえて、実のところ、会社側に大きなリスクが潜在するものです。リスク回避のためには、まず採用段階で完全な労働条件明示を実施することが重要です。・・・としています。(以上、北岡同著)
先に、紹介しましたが、厚労省の様式がありますので、これに記入して交付するだけで、こういったリスクは回避できます。