これが灯芯草の中から髄を引き出すための芯引き台です。
朝倉市では既に芯を引く人がいなくなっており、芯引き台の現物も失われていたために、奈良県安堵町歴史民俗資料館の協力を得て引き台を複製しました。
朝倉方式では丸太に刃を上に向けて刺すやり方でしたが、奈良ではこのような芯引き台が伝わっています。
芯を引く人は台の上に座布団を敷いて座ります。昔は正座してやってたんでしょうね。要するに自分の体の重みで引き台を固定するわけです。私は椅子に引き台を置いて、その上に座布団を敷いてから座って作業しています。
刃の先端が尖っているので少々扱いに注意が必要です。
おおざっぱな私は何度も手首が触れて小さな切り傷だらけになりました。
しかし刃の側面はむしろ柔らいカーブになっていて、中の髄を切り刻まないようにしています。
安堵町に残る芯引き台は見れば見るほど機能的にできていると思います。人間工学的にもよく考えられてるんじゃないでしょうか。
複製を作るにあたっては、今の時代にこういうの作れる人がいるだろうかと不安がありました。
台はともかく、刃は非常に特殊な加工が必要です。
きっと「なんですか、これ?」と妙な目で見られて説明するのに一苦労するだろうなぁと、気が重いながらも刃の加工をしてくれる人を探してみると、意外にも地元・田主丸町に住んでいる方が得意ということで頼むことにしました。
偶然でしたが、なんとその方の隣の家はろうそく職人が住んでいて、芯引きも見たことがあると言われていました。おかげで、用途のイメージがきちんと理解できたため、刃を芯引きしやすいよう見事に加工していただきました。
あまりの加工の素晴らしい刃を見て、私は息を呑みました。
「昔、隣で手がけでろうそくを作りよったよ。よく覚えとる。」とその方は言われました。
伝え聞くところによると、そのろうそく職人の家は、昔の立派な職人屋敷のようで風情があったということです。
もちろん、その家は今はもう跡形もありません。
加工していただいた方は思わぬところから当時の和ろうそく職人の風景を思いだして、懐かしさがあふれてきたようでした。
私はこの刃の加工の出来映えに、目に見えぬ応援が込められているような気がしました。
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台はともかく、刃は非常に特殊な加工が必要です。
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