縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

人形町『柳屋』、美味“高級”鯛焼の謎

2007-02-03 23:56:00 | おいしいもの食べ隊
 今日、人形町に行った。近くに用事があったのだが、久々の人形町、懐かしく思い、少し歩いた。水天宮で節分際をやっていたせいか、なかなかの賑わいだった。

 昔、そう20年くらい前だろうか、近くに取引先があり、この界隈に何度か通った。その頃よく行った、あるいは気になっていた店が何軒かある。いずれの店もまだ残っている。
 いつかは一度入ってみたいなと思いながらも入ったことのない店。親子丼で有名な「玉ひで」と、その並びにある喫茶「快生軒」。「玉ひで」はいつも混んでいて入れなかったという単純な理由。昔も今もお昼の行列は変わらない。もう一つの「快生軒」は、気にはなるものの、ちょっと引いてしまったというのが正直なところ。大正8年創業(現存する喫茶店では日本最古?)のレトロな店で、メニューや味も古いのかなと、入るのを躊躇してしまった。いわば食わず嫌いである。

 一方、よく行った店は「柳屋」。鯛焼の店である。ここの鯛焼は旨い。本当に旨い。そんじょそこらの鯛焼とは全然違う。まず皮が違う。皮は薄く、かりっとしている。カステラ風のやわらかい感じではないし、最中とも違う。次に餡。甘さを抑えた上品な味である。この店は“高級”鯛焼本舗を謳っているが、看板に偽りなしだ。又、しっぽの先まで餡がぎっしり詰まっているのが嬉しい。
 
 が、一番違うのは焼き方だ。大抵の店は一度に沢山の鯛焼を焼いているが、ここは鯛焼きを一つずつ焼いている。つまり、普通は鯛の型が沢山ある焼き型を使っているが(タコ焼きと同じイメージ)、ここは一つの鯛の型しかない焼き型を使っている。鯛の形の焼き型には棒が付いており、何十個の焼き型・棒を使って鯛焼を焼いているのである。

 しかし、ここの焼き方の凄さはそれだけではない。鯛焼を一つずつ焼くのは確かに珍しいが、まったく無いわけではない。さらに上を行く凄さがこの店にはある。
 それは“踊り”。踊りながら鯛焼を焼くことだ。体をリズミカルに動かしながら、焼き型の棒を右に左に動かしては鯛焼を焼いて行く。その見事さ(ユニークさ?)には恐れ入ってしまう。見ていて飽きない。僕は列に並びながら、いつも楽しくその“踊り”を見ていた。
 “踊り”に何の意味があるのかはわからない。凡人の僕には却って疲れるだけの無駄な動きにしか思えない。もしかすると、それには深い理由、例えば、達人の技、長年の修行で見出した究極の焼き方、単なる癖、はたまた運動不足解消のため、等々があるのかもしれないが。

 さて、今日、あれっと思ったことが一つ。「柳屋」の行列は変わらない。相変わらず20人近い待ちだ。焼き方も変わらない。やっぱり踊っている。小柄なおじさんが体をくねくねしながら鯛焼を焼いている。ん、でもどこか変、何か違和感が。
 そう、焼き手、焼いているおじさんだ。背格好や頭の形は昔と同じだが、年が前より若くなっている。それに少し太った気も。僕の記憶は止まったままだったが、さすがに当時からもう20年近く過ぎ、既に代替わりしたのであろう。
 でも待てよ、人が変わっても同じ焼き方ということは、やはりそれには何か深い訳、おいしく焼く秘訣が隠されているのだろうか。それとも唯のパフォーマンスか? うーん、謎は深まるばかりだ。