縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

『カエルの王子が導く超個人的恋愛作法』

2009-06-06 19:08:26 | 芸術をひとかけら
 我が家の年末の定番といえば(まだ6月なのにスミマセン)『第九』と『ア・ラ・カルト』。

 この『ア・ラ・カルト』というのは、もう20年続く演劇である。クリスマスの夜に「ア・ラ・カルト」というレストランで繰り広げられる人間模様。恋人達あるいは恋人一歩手前の二人のドラマ、仲の悪い夫婦のディナー、老夫婦の愛情などが、ユーモラスに描かれている。ペーソスの漂う感じもするし、それでいてどこか温かく、観た後に不思議と元気をもらえる舞台だ。
 演じているのは、かつて遊機械/全自動シアターを支えた面々、白井晃、高泉淳子(あつこ)、陰山泰(たい)。又、サブ・タイトルが「役者と音楽家のいるレストラン」といい、バイオリニストの中西俊樹を中心とした演奏もある。そう、歌あり踊りありのエンターテイメントなのである。この3人は皆インド映画でも主役になれるに違いない(?)芸達者振りである。

 その中の紅一点、高泉さんは大変かわいらしい女性であるが、子供から老人に至る幅広い年代を、それも性別問わず見事に演じている。少年、若い女性、老婆、どれを見ても違和感はない。もう20年もこの劇を続けているわけだし、それなりの年齢かと思うが、本当に不思議な、もとい素敵な女性である。おまけに遊機械の頃から作品はすべて彼女が書いているとのことであり、まさに天から二物も三物も与えられた女性といえる。

 そんな高泉さんが、『カエルの王子が導く超個人的恋愛作法』という舞台をやるというので観に行って来た。場所は青山円形劇場。年末の『ア・ラ・カルト』と同じ場所だ。そう、昨年『ア・ラ・カルト』に行った際、アンケートに回答したことから、この『カエル~』の案内が送られてきたのであった。

 彼女は、グリム童話の『カエルの王子』を読み、考え込んでしまったという。お姫様に壁にぶつけられたカエルが、つまり酷いことをされた王子がお姫様のことを好きになるのかしら、逆にお姫様は王子に負い目を感じないのかしら、そんな二人が結婚して幸せになれるのかしら、というのである。
 そしてここからの彼女の想像力が凄い。彼女は思う、もしやカエルが王子に変身したのではなく、もともと別人だったのではないか、真摯に愛を告白したカエルさんは別にいるのではないだろうか、と。

 『カエルの王子が導く超個人的恋愛作法』は、この『カエルの王子』をモチーフに書いたという。偶然と誤解、外見と中身、不思議な三角関係。ありそうにないが、いつも近くで起こっているかもしれない物語。
 この劇の設定自体、本当にありそうにない話なのだが、所詮、他人がどんな人間なのか、何を考えているかなどはわからない。そう思えば、こうした恋愛物語が近くで起きていてもおかしくないのかもしれない。
 ~ あの愛の告白は誰の言葉? この愛の行方は?

 高泉さんが二人の男性の間で揺れ動く女性を演じており、そのお相手がパントマイムの山本光洋とフランス人アーティストのロイック・ガルニエ。声優の雨蘭咲木子の演技も良い。
 残念ながら明日(6/7日曜日)までだが、ちょっと現実から離れ、不思議なタカイズミ・ワールドにトリップしてみたい方は、明日15時、青山円形劇場に行かれてみては如何だろうか。
(当日券がなかったらゴメンナサイ。その場合は年末の『ア・ラ・カルト』へどうぞ。こちらの方がわかりやすいというか、何も考えずに楽しめる舞台です。)