縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

初めの一歩 ~ 共に生きる社会に

2013-04-15 00:26:50 | 最近思うこと
 分かっていても、出来ないこと、難しいことがある。

 今月の初め、まだ寒い日の朝だった。僕は、隅田川に架かる橋を渡っていた。風が冷たい。橋も終わりに近づいた頃、遠くから何かブツブツ言っている声が聞こえる。気味が悪い。何かと物騒な世の中だし、おまけに季節の変わり目、注意するに越したことは無い。
 だんだん声がはっきり聞こえてきた。橋へと続く階段を上がっている人の声だ。それは「・・・から帰る。カエルが鳴くから帰る。カエルが鳴くから帰る。カエルが・・・」と呪文のように繰り返されていた。子供の声ではない。低く、太い声。大人の男性だ。彼は小さな犬を連れていた。

 すれ違いざま、彼が言った。「メガネ、曇ってる、曇ってる。」そして、また「カエルが鳴くから・・・」と始めた。
 僕はマスクをしていた。この時期、花粉対策として欠かせないマスク。その日はまだ寒かったため、マスクの上から漏れた息でメガネが曇ってしまう。彼はそのことを言ったのである。僕は、咄嗟の事に何も言うことが出来ず、ただ通り過ぎただけだった。

 皆さんも、よく電車の中で、奇声をあげる人や、訳のわからないことをつぶやいている人に会うことがあるだろう。そのときの周りの反応はと言うと、触らぬ神に祟りなしといった感じで、聞こえない振り・見ない振りをしたり、その場を離れる人が多いと思う。その人の気持ちなど考えることなしに、ただ怖いとか、気持ち悪いとか、何か危害を加えられたらどうしようと考えてしまうのである。僕もその口だった。
 が、先日、ある人から、彼らが奇声を発したりするのは、ただ感情表現が下手なだけであったり、あるいは逆に彼らの方が怖く、恐怖を感じ、半ばパニックになって声を上げているのだと聞いた。我々を威嚇しているのでもないし、ましてや危害を加えようとしているのでもない。

 ところが、それが分かっているにも拘わらず、あのとき僕は何も言うことが出来なかった。せめて「本当だね、曇ってるね。」と笑って応えられると良かった。それに「あなたは、メガネもマスクもなくていいね。」と付け加えられれば言うことは無い。彼は素直に見たこと、感じたことを言っただけであり、変に構えてしまったのは僕の方なのである。人を色眼鏡で見てはいけない。
 これからは、知的障害を持った方に会ったとき、やさしく微笑んであげたり、「大丈夫だよ、何も心配することは無いよ。」と励ましてあげられるようになりたい。実際実行に移せるかどうかはともかく、まずはそう思うことから始めたい。