もしかすると歴史的な瞬間を経験できたのかも・・・。
原作のない、日本オリジナルのミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』。僕が観たのは、残念ながら9月12日の初演ではなかったものの、初公演であることに違いはない。将来このミュージカルが繰り返し上演されるようになれば「僕は最初の公演を観たよ」と自慢したい。
何より清塚信也さんの音楽が良かった。アンドリュー・ロイド・ウェバーの曲に日本語の歌詞を付けたと言われれば、皆信じてしまうだろう。それだけ素晴らしい曲ばかりだった。「二人なら」はブロードウェイのフィナーレで歌われても全然おかしくない曲である。
僕は、清塚氏がMCを務めるNHKの『クラシックTV』を見てから、すっかり彼のファンである。彼の音楽に関する豊富な知識と音楽への深い愛情が感じられ、毎回楽しみに番組を見ている。しかし、彼が作曲をするとは聞いていたが、こんなに素晴らしい曲を書けるとは知らなかった(失礼)。まったくその才能には恐れ入ってしまう。
また、音楽には日本オリジナルの良さがある。そもそも日本語なので歌詞の意味は分かるし、言葉と曲はぴったり合っている。そこは英語のミュージカルや、日本語に訳されたミュージカルを観るのとは全然違う。セリフから歌への流れも自然だった。
さて、肝心のストーリーであるが、一言で言えば、絶望と再生の物語である。
不慮の事故で亡くなった大画家アンドレ・デジール。彼を信奉するエミールとジャン。運命的に二人は出会い、共に絵を描くようになる。二人の一風変わった協同作業で、一人では成し遂げ得ない芸術の高みへと彼らは到達する。だが、本人が描いたとしか思えない絵の出来映えゆえ、二人は贋作ビジネスに巻き込まれてしまう。そんな二人のもとにアンドレ・デジールが事故の前に描いた幻の『最後の作品』の依頼が来る。「究極の絶望」か「再生への希望」のどちらかが描かれたと言われる作品。それを想像して描いて欲しいというのである。二人でこの絵を描いて行く、アンドレ・デジールの気持ちになって絵を探し当てて行く過程で二人の間に亀裂が生じてしまう。二人の関係はどうなるのか、さらにはデジール本人を含め、彼らと繋がる人々の間で何があったのか、話は展開される。
脚本・作詞の高橋亜子さんは「共鳴」がテーマとおっしゃっている。互いに理解しあうこと、信じること、愛すること、そこから大きな力が生まれることがあるし、逆に失望や絶望が生まれることもある。この舞台は登場人物の間の共鳴が織りなす物語である。結末は舞台を観て確認して欲しい。
今回の公演はオリジナル・ミュージカルの初めての公演ということから、稽古には通常の倍、2ヶ月掛けたという。新しいものを創り上げていくのは大変なご苦労があったと思うし、一方でそれだけに無事公演を迎えることができた出演者・スタッフの皆さまの達成感というか、喜びもひとしおであろう。
もっとも“皆さま”と書いたが、出演者は8名しかいない。一人何役もこなし、ときに舞台裏でコーラスをする等、皆大忙しである。個人的にはジャン役の上山竜治さんと、デジールの恋人役ほか4役か5役こなしていた熊谷彩春(いろは)さんが良かった。彼女の澄んだ、そして凜とした歌声が素晴らしかった。
東京では9月23日までよみうり大手町ホールで、その後9月29日から10月1日まで大阪サンケイホール ブリーゼで公演が行われる。皆さん、将来「僕は/私はアンドレ・デジールの最初の公演を観たよ」と一緒に自慢できるよう、是非会場へどうぞ!
原作のない、日本オリジナルのミュージカル『アンドレ・デジール 最後の作品』。僕が観たのは、残念ながら9月12日の初演ではなかったものの、初公演であることに違いはない。将来このミュージカルが繰り返し上演されるようになれば「僕は最初の公演を観たよ」と自慢したい。
何より清塚信也さんの音楽が良かった。アンドリュー・ロイド・ウェバーの曲に日本語の歌詞を付けたと言われれば、皆信じてしまうだろう。それだけ素晴らしい曲ばかりだった。「二人なら」はブロードウェイのフィナーレで歌われても全然おかしくない曲である。
僕は、清塚氏がMCを務めるNHKの『クラシックTV』を見てから、すっかり彼のファンである。彼の音楽に関する豊富な知識と音楽への深い愛情が感じられ、毎回楽しみに番組を見ている。しかし、彼が作曲をするとは聞いていたが、こんなに素晴らしい曲を書けるとは知らなかった(失礼)。まったくその才能には恐れ入ってしまう。
また、音楽には日本オリジナルの良さがある。そもそも日本語なので歌詞の意味は分かるし、言葉と曲はぴったり合っている。そこは英語のミュージカルや、日本語に訳されたミュージカルを観るのとは全然違う。セリフから歌への流れも自然だった。
さて、肝心のストーリーであるが、一言で言えば、絶望と再生の物語である。
不慮の事故で亡くなった大画家アンドレ・デジール。彼を信奉するエミールとジャン。運命的に二人は出会い、共に絵を描くようになる。二人の一風変わった協同作業で、一人では成し遂げ得ない芸術の高みへと彼らは到達する。だが、本人が描いたとしか思えない絵の出来映えゆえ、二人は贋作ビジネスに巻き込まれてしまう。そんな二人のもとにアンドレ・デジールが事故の前に描いた幻の『最後の作品』の依頼が来る。「究極の絶望」か「再生への希望」のどちらかが描かれたと言われる作品。それを想像して描いて欲しいというのである。二人でこの絵を描いて行く、アンドレ・デジールの気持ちになって絵を探し当てて行く過程で二人の間に亀裂が生じてしまう。二人の関係はどうなるのか、さらにはデジール本人を含め、彼らと繋がる人々の間で何があったのか、話は展開される。
脚本・作詞の高橋亜子さんは「共鳴」がテーマとおっしゃっている。互いに理解しあうこと、信じること、愛すること、そこから大きな力が生まれることがあるし、逆に失望や絶望が生まれることもある。この舞台は登場人物の間の共鳴が織りなす物語である。結末は舞台を観て確認して欲しい。
今回の公演はオリジナル・ミュージカルの初めての公演ということから、稽古には通常の倍、2ヶ月掛けたという。新しいものを創り上げていくのは大変なご苦労があったと思うし、一方でそれだけに無事公演を迎えることができた出演者・スタッフの皆さまの達成感というか、喜びもひとしおであろう。
もっとも“皆さま”と書いたが、出演者は8名しかいない。一人何役もこなし、ときに舞台裏でコーラスをする等、皆大忙しである。個人的にはジャン役の上山竜治さんと、デジールの恋人役ほか4役か5役こなしていた熊谷彩春(いろは)さんが良かった。彼女の澄んだ、そして凜とした歌声が素晴らしかった。
東京では9月23日までよみうり大手町ホールで、その後9月29日から10月1日まで大阪サンケイホール ブリーゼで公演が行われる。皆さん、将来「僕は/私はアンドレ・デジールの最初の公演を観たよ」と一緒に自慢できるよう、是非会場へどうぞ!