友人A氏の話です。A氏は頭脳明晰、体力は頑健とは
言えないが相当自信を持っていたようです。何しろ80
歳近くになるまで寝込んだことがないという人でした。
資格試験などにも強く目標とした試験に失敗したこと
がないというような人でした。
そのA氏の様子が最近おかしくなってきたと細君から
連絡がありました。何事なるぞと早速出しゃばってA氏
に会いに行きました。まずは世間話から世界情勢などか
ら話をはじめ、いよいよ本題に入ると、A氏は生涯初め
て試験に失敗したと打ち明けてくれました。それでひど
い挫折感に襲われているというのです。
というのはA氏の誕生日は1月中旬で今年が免許証の更
新時期になったというのですね。それで最寄りの警察署
へ行き手続きをして試験を受けたそうです。
その前に高齢者講習を受けたのですがこちらはすべてう
まくいったというのですね。しかし本番で目の検査を受け
たら、視力が足りないということで眼鏡をもって再検査を
受けるようにと言われたというのです。こんな経験は生ま
れて初めてだというわけです。それで俺も年を取ったなあ
と感じてしまい大きな挫折感を味わってしまったというの
です。
私はなぜかホッとしました。A氏もこれで一人前になれた
と言って慰めましたが(変な慰め方ですが?)初めての経験
をこの年になってするなんと言っていました。
挫折感などというのは普通の人はもっと若い時に経験する
ことでしょうが、いい年になって経験するとその程度が大き
くなるものなのかもしれませんね。