文系学部の校舎が占拠されてしばらくすると全共闘
系の武闘派の学生の一団が理学部教授会になだれ込ん
できました。すると近くに待機していたらしい全学連
系の学生がすぐ会議室へ入ってきて前者を追い出しま
した。
そのとき逃げまどっていた強硬派の学生が玄関の屋
根に追い詰められましたが、彼は高さ6メートルほど
のところを飛び降りて怪我をした様子を見せずに校門
のほうへ逃げていきました。彼は空手部に入っていた
とかで運動能力も高かったのでしょうね。
私はその少し前に、手ぬぐいで顔を隠していた彼と
対面したことがありました。そのとき彼は細長い金属
製の棒を持っていました。私が説得していたとき、彼
は突然その金属製の部を私の顔面めがけて突き出して
きました。私は身を引くこともできず、彼をぐっと睨
みつけました。その勢いに押されたのか棒は私に僅か
に届かなかったのです。彼は”お前は怖くないのか”と
激しく迫ってきましたが、私は”私は戦争中空襲で何
回も死にそこなってなってきたんだ、こんなことぐら
いで驚くか”と大声に叫びました。彼はたじろいで引
き下がっていきました。その後、彼は私の姿を見ると
身を隠すようになりました。
私も熱かったのですね。危うく自治会系学生の二の
舞になるところでした。君子ならぬ身の悲しさ危うき
に近寄ってしまいました。