あの頃(舞台)7

2020-04-22 06:03:35 | 日記
いきなりの先生の登場で、Aが傍若無人なにわか演出をしていたことがバレた。

烈火のごとく怒った先生に怒鳴られ、Aは稽古場を出ていった。

ーーあの流れからすると、もう戻れないんじゃないだろうか…。

しばらくAは、稽古場に現れなかった。

Aの役は、代役を立てて進行していたが…、そのまま代役さんが、本役さんになりそうだ…。

Aは、戻るか辞めるかを決めないとまずい日がやってきた。

舞台監督との打ち合わせで、正式なキャストじゃないと困るという日だ。

先生は、早くから来ていた。



「おはようございます」

Aがやって来た。

荷物を持ったまま、先生のところへ向かい、何度も頭を下げる。

「もういい」

と、先生が合図をすると、Aはこそこそと準備をして稽古場の隅に座った。

そして、Aは、稽古に戻った。

皆は時折ひそひそと内緒話しをする中、稽古は進められた。

今思うと、本当にAは、メンタルが強かったと思う。

そうでもないと、子役からこの世界で頑張って来れないんだろうなぁ…と、思った。

彼女Aは、子役と言っても、本当に小さい頃、有名な女優さんの子供役を演じていた…と聞いただけで、実際見た!という人はいなかった。

むしろ、Aよりも、現在進行形で活躍中の仲間もいたので、過去を振り回すAの存在は、仲間から鬱陶しがられていた。



それからAは、すっかりおとなしくなった。

…かのように見えた。

表面上は、おとなしかったが、

「彼女が、このままおとなしくなるはず無いじゃない!」

…と、思われていて、裏では何かを画策しているんじゃないか…と、仲間も言っていた。