稽古は順調だった。
Aも稽古場で静かにしている。
Aは、私を避けているようだった。
ただし、大昔の学園ドラマのイジメシーンのように、地味に意地悪をされているような気がした。
稽古中…肝心な時に、必要な小道具が無い…。
例えば、私が舞台中で使うお盆。
舞台を知ってる人ならわかるかも知れませんが、舞台で使う小道具を私物と間違えないように上手・下手の舞台袖に『小道具置き場』にまとめて置いておく。
だから、紛失はあり得ない。
…なのに、消えていた。
ましてや、必ず使うものだから、どこかへ仕舞うことは絶対あり得ない…。
あわてて給湯室に走って急場しのぎのトレーを持ってきたりした。
また、舞台半ばで、下駄を履くシーンがあった。
稽古前のセッティングで、忘れ物をしないように、メモを見ながら用意していた。
…それが、消えて無くなっている。
セッティングをし忘れるハズは無いのに…。
結局、やむを得ず、裸足で『外へ出かける』という状況となった。
「アンコ!裸足でどうした?!」
先生の怒号が飛んだ。
「すみません💦セットし忘れました」
忘れてなんかいません。つい先日、仲間のMが同じように、草履のセットを忘れたので、かなり意識していた。だから、間違いなく、確かにセットした。
…まぁ、でも、ただの言い訳にしかならないので、自分のミスとして、頭を下げた。
「アンコが下駄をセットしたの見てたよ。」
Uが私に近づいて、ボソッと話しかけてきた。