「ギシ…………ギシ………」
外の樹木の軋む音が大きくなった。
気になる…💦
広すぎる和室だが、昔造りの家屋なので、天井が低い。
暗闇の中で、天井が迫ってくるような錯覚を感じる。
暗闇に目が慣れてくると、天井のシミさえ見えて来るような気がする。
シミが動いている?!💦
…まさか…。
いや、シミは動いている…というか浮いている…。
ピシッ!………ピシッ!
今度は家が軋む音だ。
コワイと思うと何でもコワくなる。
浮いて見えるシミも、コワイと思うから浮いて見えてくる。
「気のせい!気のせい!」
声に出してつぶやいた。
ギシ…ギシ…。
また、外の樹木の軋みが気になり出した。
ギシ…ギシ…。
あれ?違う…。
このギシギシは、外じゃない…。
だめだ。
気になり出すと眠れなくなる。
美枝さんは、布団を頭まで被った。
少し、うとうととしただろうか…と、ふと目を覚ましたら、ぐっすり深く眠っていたらしく、障子から差し込む明かりは朝になっていた。
「こんなにぐっすり、深く眠れたのは久しぶり」
前の日の夜、自分のアパートの近所から聞こえる赤ちゃんの泣き声で眠れなかったせいか、慣れないこのお屋敷の広すぎる和室でも、気を失うように寝てしまっていたようだった。
「おはよう!眠れた?」
敬さんが来てくれた。
「うん、ぐっすり。気を失うみたいに寝てしまっていたみたい」
「そりゃ良かった。慣れない家でひとりっきりだと、眠れないんじゃないかと心配したよ」
…優しい。
こんな言葉を聞いただけで、昨日の夜の不安なんて、どこかへ飛んで行ってしまう。
「庭は自然が豊富だから、聞いたことない音が気になって寝付けなかったけど、いつの間に寝てたみたい。」
「聞いたことない音?」
「うん、樹木の軋む音だと思うんだけど、
ギシギシいうのね」
「…そうなんだ。気がつかなかったなぁ…」
「敬さんは、子供のころから聞いてるから、気にならないのよ。」
「そうか…。」
…だけど、あんなに大きな音に気づかないなんて…不思議💦