候補者12

2020-09-07 07:43:12 | 日記
「ギシ…………ギシ………」

外の樹木の軋む音が大きくなった。

気になる…💦

広すぎる和室だが、昔造りの家屋なので、天井が低い。


暗闇の中で、天井が迫ってくるような錯覚を感じる。

暗闇に目が慣れてくると、天井のシミさえ見えて来るような気がする。

シミが動いている?!💦

…まさか…。

いや、シミは動いている…というか浮いている…。

ピシッ!………ピシッ!

今度は家が軋む音だ。 

コワイと思うと何でもコワくなる。

浮いて見えるシミも、コワイと思うから浮いて見えてくる。

「気のせい!気のせい!」

声に出してつぶやいた。

ギシ…ギシ…。

また、外の樹木の軋みが気になり出した。

ギシ…ギシ…。

あれ?違う…。

このギシギシは、外じゃない…。

だめだ。

気になり出すと眠れなくなる。

美枝さんは、布団を頭まで被った。


少し、うとうととしただろうか…と、ふと目を覚ましたら、ぐっすり深く眠っていたらしく、障子から差し込む明かりは朝になっていた。




「こんなにぐっすり、深く眠れたのは久しぶり」

前の日の夜、自分のアパートの近所から聞こえる赤ちゃんの泣き声で眠れなかったせいか、慣れないこのお屋敷の広すぎる和室でも、気を失うように寝てしまっていたようだった。


「おはよう!眠れた?」

敬さんが来てくれた。

「うん、ぐっすり。気を失うみたいに寝てしまっていたみたい」

「そりゃ良かった。慣れない家でひとりっきりだと、眠れないんじゃないかと心配したよ」

…優しい。

こんな言葉を聞いただけで、昨日の夜の不安なんて、どこかへ飛んで行ってしまう。

「庭は自然が豊富だから、聞いたことない音が気になって寝付けなかったけど、いつの間に寝てたみたい。」

「聞いたことない音?」

「うん、樹木の軋む音だと思うんだけど、

ギシギシいうのね」

「…そうなんだ。気がつかなかったなぁ…」

「敬さんは、子供のころから聞いてるから、気にならないのよ。」

「そうか…。」

…だけど、あんなに大きな音に気づかないなんて…不思議💦