候補者22

2020-09-18 08:46:14 | 日記
あの日、泊まった、怖い部屋にきた。

暗闇の中、雲の間から、すぅーと、月明かりが射した。

歓迎されているんだろうか?

深呼吸をして、例の部屋の扉に手を掛けた。


月明かりが差し込んで部屋の中が見える。

深夜に忍び込んで電灯を点けるわけにはいかない。

月明かりで充分だ。

少しカビくさかった。

あれ以来、この部屋を使ってないんじゃないか…と思われる。

殺風景で何もなく、あの日と何も変わりない。

こそこそと、皆が寝静まった部屋に忍び込むとは、何と思われるか…。

もうやめよう。

部屋を出ようとした時、

『ギシッ…』

襖を隔てた隣の部屋からだ。

…そう言えば、謎の何者かは、襖を開けて、隣の部屋から入ってきた…。

美枝さんは、襖に手を掛けた。

すーっ。

音もなく開くと、月明かりは届かず、漆黒の暗闇だ。

そして、さらにカビ臭さが強くなる。

…ん?

カビ臭さの中に線香のにおいがする。

目が馴染んできて、暗闇の部屋の様子が見えてきた。