あの日、泊まった、怖い部屋にきた。
暗闇の中、雲の間から、すぅーと、月明かりが射した。
歓迎されているんだろうか?
深呼吸をして、例の部屋の扉に手を掛けた。
月明かりが差し込んで部屋の中が見える。
深夜に忍び込んで電灯を点けるわけにはいかない。
月明かりで充分だ。
少しカビくさかった。
あれ以来、この部屋を使ってないんじゃないか…と思われる。
殺風景で何もなく、あの日と何も変わりない。
こそこそと、皆が寝静まった部屋に忍び込むとは、何と思われるか…。
もうやめよう。
部屋を出ようとした時、
『ギシッ…』
襖を隔てた隣の部屋からだ。
…そう言えば、謎の何者かは、襖を開けて、隣の部屋から入ってきた…。
美枝さんは、襖に手を掛けた。
すーっ。
音もなく開くと、月明かりは届かず、漆黒の暗闇だ。
そして、さらにカビ臭さが強くなる。
…ん?
カビ臭さの中に線香のにおいがする。
目が馴染んできて、暗闇の部屋の様子が見えてきた。