「ただいま~」
玄関だけでも、自分の部屋より広いのではないか…と思われるくらいのスペースだが、昔作りの土間という空間を残した、特に飾り立てることもない、質素で上品な玄関だ。
「どうぞ、入って!」
敬さんに促され、中へ。
公民館の体育室くらいはあるんじゃないか…と思われるほどの広々とした居間に通され、
部屋の中央には囲炉裏…。
本当に日本昔話の世界だ…。
どこを見ても、これは…、かなり高いハードルになりそうだ…。
「いらっしゃ~い❗」
お義母さんが奥から小走りに走ってきた。
小柄でかわいい人だ。
「いらっしゃい。遠いところを、よく来たね」
お義父さんも、奥の座敷からゆっくりと現れ、笑顔で歓迎してくれた。
「…は、はじめまして…。お邪魔します」
イケメン敬さんの結婚がうまくまとまらなかった理由は、きっと親にあると思っていた美枝さんは、拍子抜け、
お義父さんもお義母さんも、笑顔で歓迎してくれていて、優しい人柄のようだ。
「妹は、I市に住んでるんだけど、君に会いたくて、今日夕方には帰ってくるよ」
…そっか…妹がいたのか…。
それじゃ、妹がイジワルだとか…。
「兄さん、お帰り❗美枝さん、はじめまして‼️兄から噂は聞いてます。」
夕方、買い出しの荷物を抱え、キラキラの瞳で美枝さんの手をとった。
…これまた、拍子抜けだ。
イジワルな要素は全く感じられない妹だ。
…皆が皆、絵に描いたように理想的な家族だ…。
これにさえ違和感を感じてしまう。