ホントに笑えるのはプロだけかも

 ヒンデミットの作品に「朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された『さまよえるオランダ人』序曲」と云う冗談っぽい名前の付けられた弦楽四重奏曲がある。たまにテレビのクイズ番組などで出題されたりするので名前と「触り」だけはご存じの方もおいでかと思う。実は郷秋<Gauche>のその一人であったのだが、一度はちゃんと聴いてみなければと、CDを買ってみた。

 タワーレコードのサイトで、曲名で検索をかけたけれど、ヒットしたのはライプツィヒ弦楽四重奏団のたった一枚だけだったが、ライプツィヒSQに不足がある訳ないので勿論、ポチッ。いや、実に面白い。面白いとは云っても、物まねを面白いと思えるためには、真似されている本人を知らなければならないのと同じ。つまり、真似された「さまよえるオランダ人 序曲」を知らなければ、単に下手な演奏と云う事になってしまうので、まったく笑えない。

 心地よい和音となるべきところが、例えば第二ヴァイオリンの音が半音下がっているとか、チェロが半拍遅れるとか等々。そのように書かれた楽譜通りに演奏するのは相当高度なテクニックが無いと無理だろう。アンサンブルをしていれば、楽譜とは関係なく、無意識のうちにハーモニーするように、小節の頭で拍が合うように演奏したくなってしまうものなのだ。少なくとも郷秋<Gauche>の合唱経験によれば、そうだ。

 それを、あえて不協和音、あえて拍の合わない演奏をするためには、一人一人が高度な演奏技術を持っていて、なおかつ自信を持って間違った音、間違ったリズムで演奏することが必要である。これは常人には至難の業である。だから、この曲を聴いてホントに笑えるのは、プロの演奏家だけかも知れないな。と云う訳で、ライプツィヒ弦楽四重奏団が演奏する「朝7時に湯治場で二流のオーケストラによって初見で演奏された『さまよえるオランダ人』序曲」を聴いて、辛うじて笑わせていただいた郷秋<Gauche>である。

 さて、このアルバムを購入したのは、実は「朝7時に~」と共に、プッチーニの「菊」(Crisantemi)が入っていたから。郷秋<Gauche>、実はこれが好きなんです。でもね、最近聞いた中ではロータスカルテットの「菊」の方が、泣かせる。日本人がググッと来るポイントを知っているから、ことさらにそれを強調する、と云うか弾いていてそうなっちゃうんだろうと思う。ググッと来過ぎちゃうほど、良いですよ、ロータスカルテットの「菊」(^^)


blog「恩田の森Now」に、6月10日に撮影した写真を掲載いたしておりますのでどうぞご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/ondanomori/

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