天皇の御料車

 故ポール・フレール氏と並ぶ、世界一等のモータージャーナリストであった小林彰太郎氏(1929-2013)の編著書の一つに「天皇の御料車」(二玄社 1993年)がある。これは歴代天皇の御料車と世界の元首たちの車について記した貴重な一冊であるが、小林はその第1章に「陛下、こういう車にお乗り下さい」を当てている。小林は日本の皇室の車のTPOについて疑問を持っており、最初にそのことを書いたのである。いな、そのことを書くべくして「天皇の御料車」を著したと云っても過言ではないだろう。

 「(前略)車の世界でも同じような不文律が存在する。特に国と国とのお付き合いである外交、それも皇室外交には、われわれ市民のあずかり知らない、もっと厳しい外交儀礼(protocol)があるはずです。ところが、この国際的な約束ごとに反するような非常識が、日本ではこともあろうに、皇室の車に関して実際に罷り通っているようです。これは実に困ったものです」(同書5頁)と記し、具体的な例として、1990(平成2)年の、現上皇陛下の即位礼の後のパレードに使われた車が2ドアのロールス・ロイス・コーニッシュ・コンバーティブルであったことに触れている。

 コーニッシュは純粋にオーナードライバー用で、しかもオフタイムの、いわば遊び車であり、天皇・皇后両陛下のおでましのように公式な場合には、オープンカーでも必ず4ドアでなければならないと氏は主張している。そしてそのようなパレードにふさわしい車として観音開き4ドアのランドレー(フロントシート部は屋根付きで、リアシート部分だけがオープントップ(幌)になっている乗用車)を提案している。

画像は「天皇の御料車」6・7頁より

 さて、明日行われる天皇陛下の即位に伴う祝賀パレード「祝賀御列の儀」では、この日のためにトヨタ・センチュリーをベースに特別に製作されたにしたオープン仕様車が使われる。この国産フルオープンのセンチュリーを、小林彰太郎氏がどのように評価するのか、叶わぬことだとわかってはいても聞いてみたい気がする。

 blog「恩田の森Now」 https://blog.goo.ne.jp/ondanomori には11月2日に撮った写真を5点掲載いたしております。またまた散歩日和となった森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。

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