11月21日に公開が予定されているガールズ&パンツァー劇場版の特報が、6月に公開されました。以前の予習PVの内容と繋がっている部分もありますが、大半は新たなシーンで占められて更に多くの情報が散りばめられています。新たに登場する戦車も幾つか紹介されていて楽しいですが、これまで活躍してきたお馴染みの戦車にも目を向けると、もっと楽しくなるかもしれません。
例えば、ウサギさんチームのM3中戦車リーは、以前の記事にて述べたように、劇場版での仕様が、テレビシリーズやアンツィオ戦OVAのそれとは異なっています。上のワンシーンでも分かるように、後部左右の雑具箱が水平にセットされ、左右フェンダーの後端部が追加されています。さらに主砲の手前には警笛もつき、車体そのものが低く据えられて履帯との隙間が狭くなっています。
全体としては、タミヤ製のプラモデルキットの姿に近くなっており、またアカデミー製のキットの特徴も混じっています。私が以前に作った際に色々と作り替えた部分の何割かが、キット本来の状態に戻されている形です。劇場版に向けての戦車のCGモデルの作り直しが図られたとの情報を聞きましたが、それが模型キットの形状に準拠するような方向で実施されたものと考えて良いでしょう。
つまりは「劇場版仕様」、というべきものであり、これまでの姿形を「テレビ版仕様」と呼んで区別することになりますが、これが模型製作のフィールドにも新たな一ページを加えることになるのかもしれませんね。
そうなると、他の戦車にも変更点があるのだろう、ということになってきます。主役のあんこうチームの搭乗車であるⅣ号戦車D型改(H型仕様)「劇場版仕様」はどうかというと、上のワンシーンでは車体前部増加装甲板の上端のボルトの一つが復活しているのが分かります。Ⅳ号戦車D型改(H型仕様)のプラモデルキットでもそうなっていますから、「劇場版仕様」に仕上げる場合はボルトの削り取りの必要がなくなります。
別アングルからのⅣ号戦車D型改(H型仕様)の姿も特報で見られますが、こちらでは特に変化が無さそうに思えます。これまでの姿形そのものがタミヤ製品のキットの状態を参考にしたと言われていますから、M3中戦車リーほどに目立った変更点は無いのかもしれません。
しかし、車体前部増加装甲板の上端のボルトのような、細かく目立たない箇所が幾つか変えられている可能性は、否定出来ません。そういえば、シュルツェン前端部にある三つのボルトが無くなっているような・・・。
カバさんチームのⅢ号突撃砲F型と、カメさんチームのヘッツアーです。前者は遠景ばかりで近景が無いので細部がほとんど見えず、車体色も暗いので外見上の細かい変化があっても識別出来ません。どこかに変更点があるかもしれない、と推測するにとどめておきます。
ヘッツアーの方は、主砲防盾の上部の円形モールドが復活しています。「テレビ版仕様」ではこのモールドが省略されていましたので、ここでもプラモデルキットの姿に近くなっています。要するに実車通りの特徴が追加されているわけですね。
アリクイさんチームの三式中戦車チヌです。ファインモールド製の公式キットが出ていますが、「テレビ版仕様」とは相違点もあったので各所の改造および修正が必要でした。
ところが「劇場版仕様」は、色々と公式キットの形状に近づけてあるようです。例えば車体前面左右のスリット、車体側面の幾つかのボルト、砲塔左右の小さな扉の鍵穴カバーなどが復活しています。また砲塔上に据えられた機銃架の形状も、キットのパーツのそれに替わっています。
したがって、今夏にリニューアル発売される公式キットの制作においては、ほとんど素組みでいけそうな感じがします。改造などの手間が少なくなり、組み立て易くなって、気軽に楽しめることでしょう。
特報で最も勇壮な疾駆シーンをみせてくれた、レオポンさんチームのポルシェティーガーです。こちらは車体前面と砲塔左側面の状況しか分かりませんが、見た感じでは変化が無いようです。車体側面に細かい変更点があるのかもしれませんが、それとは別に、全く変更が無い「テレビ版仕様」のまま、という可能性も否定出来ません。
以上の数例を概観しますと、劇場版に登場する戦車には、変更点の多い「劇場版仕様」タイプと、従来の「テレビ版仕様」のままのタイプとがあると考えて良さそうです。前者に共通するのは、「テレビ版仕様」が実車およびそのプラモデルキットと異なった特徴を多く有していた点なので、劇場版に向けての戦車のCGモデルの作り直しというのも、実車およびプラモデルキットとの相違点を少なくする目的によったものかもしれません。
しかし、完全に実車と同じ姿にするとタブーであるそうです。細かな相違点は依然として維持され、アニメの戦車としての立ち位置も不変である、と理解すべきでしょう。
また、「劇場版仕様」タイプの登場の一背景として、「ガールズ&パンツァー 登場全戦車キット化プロジェクト」の存在があるのかもしれません。タミヤなどが参画してキット供給を行ない、これによって全ての登場戦車の公式キット化を図る、という取り組みだということです。
その場合、例えばM3中戦車リーのように、タミヤが供給するキットとアニメの仕様が色々と異なる、というのは何かしら都合が悪いに決まっているので、そのあたりで修正しキットの形状に準拠させる、という流れがあっても当然だろうと思います。
同じ意味で、三式中戦車チヌも、ファインモールド製の公式キットとの相違が多くては困る、ということになりそうですので、「劇場版仕様」への変化も必然的なものだろうと思います。
いずれにせよ、ガルパン戦車のキットを色々作って楽しむ側としては、今後作るべき新たな対象が増えるわけです。楽しみが増えた、ということだなあ、と感じています。