GOKIGENRADIO

バーボングラス片手のロックな毎日

真田丸最終回

2016-12-18 23:55:46 | MUSIC/TV/MOVIE
真田丸の最終回を観る。
時代考証が無茶苦茶とか、観たいシーンがほとんどナレーションで語られるだけだとか、合戦シーンがチャチイとか、ボロクソ言いながらも結局最終回まで一回も欠かさず観てしまった。

いやぁ演出とか脚本はひどかったねぇ。
最初の武田勝頼の死による武田家の崩壊からヤバイなぁと思ったが、その後の本能寺の変や山崎の戦いなどをナレ死だけで描かず、北条征伐の無茶苦茶な設定とスケールの小ささ、徳川との第一次上田城の戦いあたりで何度観るのをやめようかと思ったか。
だけど父・真田昌幸役の草刈正雄の憎めない飄々としたキャラ、それに翻弄される兄・真田信幸の大泉洋が良かったため見続けたようなもんだ。のちに裏切りがバレて殺される西村雅彦が大泉洋に向かって怒鳴る「黙れ小童!」や、忍びの頭領・寺島進も良かったしね。大坂城に入ったあたりで小日向さん演じる秀吉、山本耕史演じる石田三成、片岡愛之助演じる大谷刑部が良く、堺雅人演じる真田信繁は完全に傍に回っていい感じだった。

しかし、肝心の秀吉の天下統一からの惣無事事業(刀狩りや太閤検地)は全く描かれないから、石田三成などの奉行衆の奔走は全く伝わってこない。したがってよほどの戦国時代マニアじゃなきゃ、なぜ三成が加藤清正や福島政則など秀吉子飼いの武将と反目し溝ができたのかわからない。またそれにより秀吉死後の五奉行と五大老がなぜ対立したのかも全くわからん。ここがわからんかったら、三成と家康がなぜ対立して関ヶ原の合戦になっていくのかが全くわからん。島左近など戦国マニアにはたまらん武将は全く描かれてない。そのくせ細川ガラシャの隠れキリシタン(これって江戸時代にできた言葉なんだけどな)はくどく描かれてた。三谷幸喜はクリスチャンかなんかか?大坂五人衆のキリシタン武将・明石全登の祈りのシーンも毎回描かれてたし。

その大坂冬の陣あたりから三谷幸喜脚本の無茶苦茶さはさらにエスカレート。
城内の真田屋敷(旧千利休邸)の庭を耕したら千利休が隠して埋めてた短筒(馬上筒)が出てくるとか、もうありえないことを平気で描く。
三谷幸喜は大阪の地理がよくわかってないのだろうな。随所にそれが垣間見え大阪人の俺としては苦痛だった。戦国マニアとしても杜撰な演出や設定は気になったが、これはあくまでも娯楽ドラマなんだから多少の脚色、演出、細かいところはどうでもいいと自分に言い聞かせ見てたのだけどね。最終回で天王寺以南で戦ってるのに大阪城本丸にすぐ戻ってこれたりしてるのは、「もう最後までこれかよ」ってもううんざりするほど。御堂筋線に乗ってもそんなに早く戻れんよ。しかも最初の妻・梅(黒木華)の兄・作兵衛は幸村の盾になり全身撃たれたのに、なぜか最後は城内の真田邸(利休の短筒が出てきた庭ね)まで戻ってきて死んでるし。これって東京で言えば上野駅あたりで瀕死になった奴が東京駅まで数分で(しかも徒歩で)戻ってきてるようなもんだぞ。

予想通りというかやっぱりというか、三谷幸喜は歴史物、戦国ものの脚本はもう書かないほうがいいな。キャスト(俳優)に合わせて脚本を書くアテ書きは、役者によってはハマってるんだが、これだけ有名俳優が出てると無茶だな。片倉小十郎や直江兼続など、それほど有名じゃない俳優が演じた場合はそれなりに見えるんだが(大蔵卿なんてとても憎たらしくてよかった)、遠藤憲一演じる上杉景勝のように名の通った役者が演じた役は、歴史上の人物ではなくあくまでも役者が演じてるとしか思えなかった。哀川翔の後藤又兵衛なんて完全に浮いてしまってたもの。三谷幸喜は先の新撰組や自身の映画・清洲会議でもう懲りてると思ったんだけどなぁ。
だいたい有名俳優を使いすぎだわ。脚本のまずさも演技力でカバーしてくれるだろうってか?
予算のほとんどはキャストのギャラに消えたんじゃないかね。合戦シーンのチャチさ、合戦シーンのエキストラの少なさは大河ドラマ史上でも類を見ないほどだったな。最終回の茶臼山徳川本陣への突入シーンはなんとかまだ見れたけど、家康や秀忠の陣からの逃亡シーンは「なにこれ?」ってほどちゃちかった。家康が自害しようとするシーンなどは臨場感が溢れて良かったが、これは内野聖陽の演技がうまかっただけだ。

全五十回通じて観て、室内セットの装飾や小道具などはさすがNHKだけにしっかり作ってたと思う。
それはいいんだが、だからと言って室内シーンが多すぎるのはどうなのよ。三谷幸喜は舞台とか室内劇が得意だからか?室内シーンの会話劇はさすが三谷幸喜って感じで面白いんだが、それにしても外撮りのシーンが少なすぎるんじゃないかね。大河ドラマの醍醐味はやっぱり大人数での迫力の戦闘シーンだったりするのではないかね。

なんやかんや言っても最終回までの全五十回見たんだから、毎回いいシーンやいいセリフ、いい演技があったりしたってことだ。
最終回前の信之の「黙れ小童!」返しも良かったが、なんといってもラスト5分のきりと幸村の抱擁シーン。

幸村(このシーンでは源次郎と呼んだほうがふさわしい)から「明日私は城を出て家康に決戦を挑むことにした」と覚悟を告げられ大仕事を依頼されるきり。「終わった後、お前はどうする?沼田へ帰るか」と聞かれたきりは「いいえ、ここへ戻ってきます。こうなったらおかみさま(茶々)とご一緒しますよ。」「それに源次郎様がいない世にいてもつまらないから」と。この時に微笑む長澤まさみがとても愛おしい。こんな表情されたら堺雅人(源次郎)でなくても抱きしめてしまうだろう。
源次郎に抱きしめられたきりが言う「遅い」
源次郎「すまぬ」
もっと早くにこうしてくれたら良かったのにと「せめて10年前に・・・」と言うきりの唇を塞ぐ源次郎。
照れ隠しかキスされながらも「あの頃が一番綺麗だったんですからね」と話し続けるきり。
長澤まさみのアイデアらしいが、このシーンに今まで源次郎-信繁-幸村を見続けてきたきりの心情が全て表されててとても良かった。
抱き合って涙を流す二人に、さらに有働さんのナレーションがかぶさってくる。
「高梨内記の娘(きりの事)に関しては様々な言い伝えがある。真田信繁の側室であったとも彼の子供を宿したとも。真偽はともかく一つだけ確かなのは、信繁に関わった女性たちの中で最も長くそばにいたのは彼女だという事である」

真田丸屈指の名シーンだ。
ただしこのキスシーンは三谷幸喜の台本(脚本)には無く、長澤まさみ(きり)と堺雅人(幸村)のアドリブだったらしいがね。

このシーンがあるから最終回で、幸村から依頼された大仕事、秀頼の妻・千姫を家康のもとに連れてくきりが、家康の陣と戦ってる幸村を見つめるシーンに活きてくる。敵味方が入り乱れる戦場を駆け抜ける真田幸村。本当の別れがもうすぐ現実のものになってしまう。このシーンが真田丸ベスト2シーンだな。

エンディングはちょっと不満足。
自害を決意し走馬灯のように人生を振り返る幸村まではいい。自害したか、佐助が解釈したかも描かれていないのもいいい。
できれば最後は波の音がして、船が航海してる演出で終わってほしかった。
ルソンに逃がした秀次の娘=三番目の妻のところへ行ったのかもって思わせてくれたらなぁ。
秀次の娘を逃したり、妻にしたり、その妻が九度山に訪ねてきたりって史実には無い事を入れてたんだから、最後もいっそ三谷幸喜オリジナルの結末で良かったのでは。真田幸村は抜け道から逃げたって伝説(大阪には本当に真田の抜け道(穴)ってのがある)があるくらいだからさ。
まぁ、面白かった。