猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

タカ派であるべきか否かに悩むアメリカ人

2022-06-18 21:41:01 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

(映画 Ogniem i mieczem)

きのう朝日新聞の〈コラムニストの眼〉に、また、ロシアーウクライナ戦争に醒めた意見が寄稿されていた。ニューヨク・タイムズのOpinionの欄に6月4日にのったロス・ドゥザットの『ウクライナへの支援 ずっとタカ派ではいられない』の抄訳である。抄訳とは一部翻訳しなかったとのことである。

アメリカにも「タカ派」という言葉があったのか、と思わず、原文を読んでみた。Ross Douthat の“We Can’t Be Ukraine Hawks Forever”である。わかったのは、「タカ派(hawkish)」とは武力で相手国に自分の言うことをきかすという立場のことだった。別に権威的とかいう意味はない。暴力こそ人間界の紛争を解決する手段という考え方である。

自分をかえりみると、そんな思いが私の中にときどき息を吹き返すことがあった。今から70年前、建前で「法治」をいうが、日本の社会は暴力によって動いていた。警察が善人を守ることはなかった。自分を守るには暴力で対抗するしかなかった。悪人が社会を完全にぎってしまうと、社会の安定化のために、悪人は「法治」を言い始める。暴力装置は国家が独占し、国民はもっていけない。国民は非武装化されなければいけない。もちろん、いまだに、どこの国にもヤクザやギャングという非合法暴力集団がいるが。

戦後の混乱期だけでなく、私の若い頃は、会社や銀行や政治家が暴力団をやとって、組合を潰したり、土地を暴力で買い上げたり、建設反対派を脅かしたり、していた。暴力を振るうやつはクズだが、自分たちは暴力をふるっていけないのか、泣き寝入りするしかないのか、悩む毎日であった。

私の20歳近く年上のいとこは、元刑事と結婚(?)した。内縁なのか、単なるヒモだったのか私にはわからない。名古屋のキャバレーで裸同然の姿で働かされ、それが嫌で、よく、田舎の私の家に逃げてきた。元刑事はヤクザだったようだ。彼女を追ってきた元刑事は、私の家にあがり、「堅気には迷惑をかけない」とすごんで名古屋にいとこを連れ戻すのであった。私の親は、なぜ、そんなヤクザみたい男の言うことに従うのだろう、と心の中で子どもの私は親をなじっていた。

日本は素晴らしい憲法をもっている。「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と第9条にある。もっとも「秩序を基調とする」の意味不明な言葉があるが。

日本国憲法にしたがえば、国民はタカ派(hawkish)であってはならないことになる。

アメリカの憲法にその規定がないから、アメリカ人のひとりひとりは、ウクライナの人びとに同情しても、タカ派になるかどうか、悩まないといけない。「正義を基調とする国際平和を誠実に希求し」ても、現実の世界はそうでないのだ。また、多くの「正義」は悪徳を内に秘めており、「正義」の名で悪の片棒をかつがされるかもしれない。

アメリカのタカ派は「プーチンをせん滅」し「領土の1インチまで解放」するまで戦うことを主張している(この部分は翻訳からはずされている)。ドゥザットは、そのためにアメリカがウクライナに、要求されるだけの額の軍事支援をし続けるのでいいのか、という疑問を提起している。

それだけではない。ドゥザットは言及してはいないが、アメリカのタカ派の中には、もっと冷酷な考えのものもいる。アメリカ人の血を流さすに、ロシア人とウクライナ人が殺し合うのがずっとずっと続いて、ロシアが他国と戦争する力のない状態に落ち込んでいるのが良いと言う。だからウクライナが勝たない程度に軍事支援続けるの一番良いと言う。

しかし、その間、ウクライナ兵も非戦闘員も死に続けるのである。資本主義国アメリカの繁栄のためにウクライナ人やロシア人が死に続けるのである。私は居たたまれない気持ちになる。戦費が大変だという話しだけでない。

それなのに、それなのに、ロシアのウクライナ軍事侵攻を機に、日本の憲法を改正せよとか、敵国の基地攻撃能力ために防衛費を2倍にせよとか、自民党や日本維新の会は言い出している。アメリカ人はタカ派であるべきか否かを悩んでいるのに、日本人は悩まないのか。



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1 コメント

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Unknown (春は遠い)
2022-06-19 00:00:14
福島の原発災害の時も日本のメディアは核心を書かなかった。「風評」という言葉が呪文のようでした。「春秋無義戦」、嘘と殺人が戦争の隠された素顔でしょう。
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