3月25日、東京都知事の小池百合子は、このままでは「首都封鎖(ロックダウン)」になりかねないと、都民ひとりひとりの責任を訴えた。その効果があって、今週末の28日、29日の人出は普段の土日の半分以下であった。しかし、こんなことで、新型コロナの爆発的感染は防げるのだろうか。
同じ精神論なら、メルケル首相の3月11日、3月18日、3月25日のスピーチのほうが、格調が高い。民主主義、個人主義の立場から、生命の危機に面して、国民の助けあい、すなわち、連帯(Solidarität)を訴えている。
ここでは、医療体制についてコメントしたい。
新型コロナは、現在、指定感染症になっている。日本では、感染していることが発覚したら、入院措置になっている。ところが、きょうのテレビでは、入院者が指定感染症病院の病床数を越えている、という。また、PCR検査で2回陰性でないと、退院させられない。すなわち、厚生省は、新型コロナを指定感染症からはずすか、指定感染症の例外扱いの法的根拠を与えるか、しないといけない。
現在、噂では、町医者には風邪の患者を受け付けるなという医師会からの達示がきているという。表現はどうであろうと、風邪の症状を示す患者のいくらかには、新型コロナの感染者がいる。町医者には、新型コロナの感染を防ぐマスクやゴーグルや防護服や消毒薬が用意されていない。新型コロナの感染者を診たら営業停止に追い込まれる。
だから、厚生労働者は、風邪の患者に家でじっと我慢をしていて、死にそうなほど苦しくなったら、保健所に相談しなさいとしか言えない。
町医者が電話相談で患者を診断し振り分けるといっても、非常にむずかしい。私の近所の耳鼻咽喉科医は、これまで、4~5分に1人の割合で、診察治療をすましている。いっぽう、40年前、私がカナダにいたときのファミリードクター(かかりつけ医)は普段から30分はかけて健康状態を診察してくれる。したがって、カルテもしっかりとできている。私の息子が高熱を出したとき、彼はすぐに肺炎と診断し、町の中核病院の大学付属病院に連絡し、入院の手続きをしてくれた。
日本では、町医者が、電話で患者を診断し振り分けるのは、夢物語である。
新型コロナの爆発的感染の前に、この1,2週間に、指定感染症の法を越えて、指定感染症病院から軽症、中程度の新型コロナの感染者を他の病院や収容先に移し、重症者のために、指定感染症病院の病床を開けておかないといけない。
大きな病院でも感染者の受け入れを拒否しているという。なぜ、拒否するのかの言い分も聞き、とにかく、軽症、中程度の感染者をうけいれてもらわないといけない。院内感染を防ぐにはお金がかかる。何らかの経済的補償が必要だろう。
また、感染指定病院以外に、発熱外来を設け、風邪症状の患者の診断を受け付けないといけない。発熱はインフルエンザかも知れないし、細菌性肺炎かも知れない。ほっとけば死ぬかもしれない。診断し、医療の機会を与えなければならない。
このままでは、新型コロナ感染の大爆発のまえに、日本の医療体制が崩壊するかもしれない。最初に、指定感染症病院の医療従事者が疲弊し感染者になり、ついで、保健所の職員が倒れ、町医者に感染者が別の病気で訪れ感染を広げ、全医療体制が崩壊するかもしれない。
検体の採取と検査は民間企業に丸投げしないと、新型コロナ感染爆発に対抗できない。
電話相談は、コールセンター会社に代理でしてもらうしかない。
東京都の新型コロナ感染者の累積は、3月29日で、430人である。ところが、3月11日に、メルケル首相が、連邦保健大臣とロベルト・コッホ研究所所長とともに記者会見し、国民に免疫もなく、治療薬もない現状では、国民の3分2が感染しないと、新型コロナは収束しないといった。
2015年の東京都の人口は13,294,632人である。人口の10パーセントでも1,329,463人、1パーセントでも132,946人である。感染して免疫をもった人の数は、まだまだ、足りない。これから、感染者数が10倍、100倍、1000倍にならないと、何度も何度も、感染爆発が起きるだろう。
同じことが日本全体にも言える。物資が移動するときは人間も移動するのである。必ず感染が広がる。
ドイツは4万9000人が新型コロナに感染している。それでも、国民の0.06パーセントの感染が終わったにすぎない。しかし、そのドイツは感染者の致死率を0.7パーセントに抑えている。日本は、致死率が3%を超えている。なんとか医療体制の崩壊を防ぎ、致死率を1パーセント以下にもって行ってほしい。
そのためには、メルケル首相の言う「連帯」とお金がいる。景気対策の「おさかな券」「旅行券」を配ることを論じる前に、新型コロナ対策の医療体制構築にお金を投じないといけない。これから、感染者数が10倍、100倍、1000倍になるのだ。
非常事態を宣言しようと、外出禁止令を発しようと、公共交通機関を止めようと、統治者の自己満足で、感染者が広がり続けても致死率を1パーセント以下に抑えられる医療体制を築かないなら、国民を精神的にも物質的にも虐待しているだけである。
[追記]
メディアでは経済活動の自粛に対する補償が中心になっているが、予算を医療に集中し、国民が生きるに必要な経済活動は維持するが、個人ひとりひとりがこれまでの生活スタイルを変容させ、また、社会全体として産業構造も変えていくべきだろう。
人間は別に飲み屋に行かないでも生きていける。お酒を飲んで騒ぐ宴会も必要はない。
感染爆発の頂点を抑えるということは、今後、10年、20年と新型コロナとの闘いをつづけていくことになる。経済補償の議論がお金のバラマキを求める欲得の争いにならないように願いたい。
[追記]
新型コロナ感染対策として、トランプ大統領がGMに人工心肺の製造を命じたニュースを真に受けている人がいるが、これは、政治家のパフォーマンスにすぎない。
設計図も製造機械も製造ラインも製品検査のノウハウもないなかで、精密医療機器を作れるはずがない。
既存の医療メーカが他産業に部品の納入を求めるか、組み立ての生産ラインを他産業から借りるか、そうでないと、できないことだ。
あまりにも製造業のことを、政治家や役人は知らなすぎる。
[追記]
3月30日夜の東京都知事の小池百合子の緊急記者会見で、政府クラスター対策班の西浦博が東京都の感染状況を報告した。聞いていてわかりにくいが、深夜から早朝にかけて営業している接待飲食の特定業種で、感染が増えているとのことだ。
キャバレーやナイトクラブで新型コロナの感染が増えているから、そんなところに行くな、と、どうしてストレートに言えないのだろう。
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