1週間前の5月20日に、朝日新聞の〈コラムニストの眼〉にトーマス・フリードマンの不可解な記事がのった。不可解というのは、何が言いたいのか私は最初わからなかったからである。
これはニューヨク・タイムズのOpinionの欄に5月6日にのった記事を日本語に妙訳したものである。「抄訳(しょうやく)」とは一部を省略したものである。
日本語訳のタイトルは『ロシアのウクライナ侵攻 米に迫る「巻き込まれリスク」』である。元のタイトルは “The War Is Getting More Dangerous for America, and Biden Knows It”である。「戦争がアメリカ人にとってだんだん危険なものになっていることをバイデンはわかっている」という意味であろう。
翻訳で省略されたのは、上院議員だったバイデンが2002年にアフガニスタンを視察したことと、今回、ロシアへの軍事支援をしないようにバイデン大統領が習近平に働きかけたことの3つのパラグラフである。
何度も何度も英文と日本文をよんで、私が理解したのは、ロシアもウクライナもアメリカを戦争に巻き込もうとしているが、ウクライナも汚職にまみれた国であり、アメリカはnational interest(国民の利益)を中心に考えて、距離感をもってゼレンスキーを支援し、ロシアとアメリカの直接の戦争にならないようにすべきで、バイデンはそれが分かっているとトーマス・フリードマンが言いたいのだ。
プーチンは地上戦でも出口戦略でも面目を失っているだけでなく、フィンランドとスウェーデンのNATO参加に動き、追い詰められたプーチンの行動予測がむずかしくなっている。不安定要素が増しているのに、アメリカがウクライナに情報を与えてロシア軍将校の殺害に手を貸したとか、黒海上のロシア軍の戦艦の位置をウクライナに教えてミサイル攻撃で沈没させたとか、ロシアを刺激するような自慢をアメリカ政府高官がするなということである。
アメリカにこのような慎重な意見があるとは気づいていなかった。私は、ロシアを挑発した責任をアメリカがとって直接参戦すべきであると思っていたが、考え直す必要があるかもしれない。
しかし、バイデンの発言は意図的なのか軽率なのかわからないことも多い。先月にはプーチンを政権の座から引きずり落とさないと戦争は終結しないと言ったり、2、3日前には中国が台湾に侵攻したら台湾を守るために参戦すると言ったりしている。
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