9月5日の京急線衝突事故について、翌日の15時30分にハフポストにニュースエディター小笠原遥が『「#がんばれ京急」がトレンド入り。京急の責任を検証する報道への「違和感」』と称する記事を載せた。
趣旨は「現在、事故原因は明確になっていないのに、京急に責任があるような報道をするな」というものである。
この記事はジャーナリストの佐々木俊尚が今回の衝突事故にそうコメントしたかのような誤解をネット上で与えているが、佐々木は5月8日の大津の自動車人身事故についてそう言及しただけで、小笠原もあくまで「今回のような報道について」と書いている。
「京急に責任があるような報道をするな」は小笠原の意見である。
しかし、現実の報道は、あくまで、京急発表や警察発表や目撃者情報にもとづくもので、逆に、メディアが、当局発表や目撃者の情報の不都合な点まで分け入ってコメントしていかないと、真実に到達しないのではという危惧を私はいただく。真実は、利害の異なる立場からの追求によって、はじめて明らかになるのであって、衝突したトラック運転手が死んだ以上、メディアは運転手よりの推理をして良いと思う。
これが報道の自由である。
最初、私は、踏切の前で左にも右にも曲がれず、約20分も立ち往生しているトラックの運転手を誰もが助けなかったのではないか、と心配した。
事故や喧嘩の目撃者がたくさんいる場合、ほとんど誰も助けに入らないことを「傍観者効果」現象という。その瞬間において正しい行動とは何なのか、目撃者は自信がもてず、お互いの行動を見合ったまま、誰も反応しないと見て取るや、立ち去るのである。
しかし、京急の休憩中の運転士と車掌が手助けをし、非常ボタンを押したとのことである。私は、この報道を受けて、ほっとした。
にもかかわらず、なぜ、トラックと特快電車の衝突事故が起きてしまったのか。メディアがこれを不思議に思い、問うのはあたりまえではないか。
私は、京急に電車をできるだけ止めないという文化があるのではないか、と疑う。人命のために、電車を止めても良いのである。
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ここで67歳のトラック運転手の立場にたってみよう。
トラックは、荷台の架装が左右に開くウイングタイプで全幅2.4m、積載量13t(総重量25t)、通常より長い全長13mのロングボディだった。午前11時30分ごろ、事故現場の京急神奈川新町駅から東南へ約800メートル離れた出田町倉庫でレモンなどを積み、千葉県成田市に午後1時ごろ到着予定で、向かった。
首都高速11号横羽線に乗るには、第1京浜(国道15号線)との交差点で左折し、いったん、仲木戸駅方向に第1京浜を走る必要がある。そして、仲木戸駅に行く道との交差点でUターンすれば、首都高速11号横羽線の乗り口がある。しかし、トラックの運転手はなんらかの理由でUターンできなかった。そのまま、右折し、仲木戸駅に向かってしまった。
トラックにはナビがなかった。運転手は携帯をナビに使っていたという。
仲木戸駅ヨコの踏切を過ぎると、その道路は、JRの東海道線の高架の下をくぐるようになっており、高さ、2.4mの制限の標識があった。
トラックは高さ3.8mという。
そこで、トラック運転手は仲木戸駅の踏切を過ぎて、右折する。道路は、幅4.1mで、京急線にそって、神奈川新町駅方向に向かっていた。ところが、道幅はどんどん狭くなり、幅2.5mとなって、神奈川新町駅の踏切の道路で行き止まりになった。
トラックにバックモニターがない。
左折するしか右折するしかない。
右折すれば、踏切である。それで、トラック運転手は左折を何度か繰り返した。この時点で休憩中の京急の運転士と車掌に助けを求めたようである。
現場の踏切は神奈川新町駅のホームのすぐ横である。
左折が上手くいかないので、トラック運転手は右折を始めた。この辺から、関係者の証言が不鮮明になる。それに左折できても、JR線があるから、その先で大型トラックは行き止まりになるのではないか。
電車を止めて、トラックは右折するしかなかった、と私は思う。
午前11時40分ごろ、特快電車は、トラックの横に衝突し、脱線する。トラック運転手は死亡する。
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こんどは、特快電車の運転手の立場にたとう。
遮断機が下りているとき、踏切でセンサーが高さの30㎝以上のものを見つけたとき、信号機が赤で点滅するという。現場の神奈川新町駅ヨコの踏切から、10m、130m、340m手前にある信号機が赤で点滅し、600m手前で緊急ブレーキをかければ、踏切で止まるという。
京急線で踏切がいくつあって、それぞれ、どこで緊急ブレーキをかければ良いのだろうか。運転手にその訓練をどのようにおこなっていたのだろうか。そのような判断を人間ができるものだろうか。
京急の特快電車は120kmで走っている。これは、秒速33mにあたる。特快は、駅を通過するとき、スピードを落とさないのか。
私は昔、東武の急行を使っていたが、急行の通過に合わせて、結構、ホームからの飛び込みがある。したがって、急行は駅を通過するとき、スピードを落としていた。
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並行するJRの京浜東北線とスピードを争うために電車を止めないよりも、安全のため電車を止める文化が京急に必要なのではないか。
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