3日前(12月6日)の岸田文雄首相の所信表明全文を読み、この人は何をやろうとしているのか、私はわからなくなった。実態として安倍路線を継承しながら、聞こえが良いことを四方に向かって語っているだけなのか。それとも、安倍晋三のもつ力を抑え込むまで、自分を隠してじっと耐えているのか。よくわからない。
外交・安全保障についての岸田の所信は、安倍路線を継承している。
「日米同盟の抑止力・対処力を一層強化」が彼の基本路線である。沖縄の基地問題に関しては「辺野古移設を進め」「普天間飛行場の全面返還」の繰り返しである。核問題に関しては、「核兵器国と非核兵器国の信頼と協力の上に、現実的な取組」の一点張りである。
中国とは「建設的かつ安定的な関係の構築」をめざし、ロシアとは「領土問題を解決し」、韓国とは「わが国の一貫した立場に基づき、引き続き適切な対応を強く求め」、これも同じである。
それだけでなく、「敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化」とまで言っている。これは、安倍晋三もおおやけには言わなかったことで、自民党内極右勢力に気を使ってのことだろうか。
岸田の所信演説には「福祉」という言葉がでてこない。「最低賃金」「生活保護」の言及がまったくない。「社会保障」という言葉も、「社会保障」のために生じる「若者・子育て世帯の負担増」を抑制する改革を「全世代型社会保障構築会議」で行うという形でしかでてこない。すなわち、弱い者のための「社会保障」がみんなに迷惑をかけていると考えているように見える。
岸田は所信演説で「新しい資本主義実現」で「分厚い中間層を取り戻していきます」と言っているから、弱い者を切り捨てるというのが本音のようである。
岸田は「新自由主義」から決別すると言っているが、リベラルを自称する人は、能力のある人びと中心の社会を考えがちである。能力がなくても生きていく権利があると私は思う。社会保障、福祉は必要である。貧困をなくすことこそが、政治の目的である。「中間層を増大」しても、「貧困」があるかぎり、安心で平和な社会は実現しない。
「中間層を増大」と言う主張は、岸田自身が「新自由主義」者であることを告白したのに等しい。
企業の税優遇で社員の賃金を上げるという岸田の言葉は、受けを狙った言葉で、国民をだましている、と私は思う。
所信演説では言及がなかったが、日本学術会議の6名の会員任命拒否を撤回するかどうかは、岸田を評価するかどうかの、つぎの重要な踏み絵になりそうである。
また、ふるさと納税も廃止しないといけない。見返りがあるということは「キックバック」と同じである。こんなことをしていたら、京都市でなくても、ほかの大都市も赤字自治体に落ちていく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます