今年の梅雨はとても長く、夏はとても暑かった。それに春先からコロナ感染騒ぎが続いた。
私のいるNPOは心に問題を抱えている子どもたちの教育を行っている。知識の伝授ではないので、リモート学習も試みたが、対面でないとうまくいかないことが多い。この間、綱渡りのような対面学習を続けてきたが、幸いなことに、まだコロナ感染者を出さないですんでいる。
しかし、夏の疲労で倒れるスタッフが出ている。私も仕事が終わると寝ころんでいる日々である。
ことしは、肉体的な疲労だけでなく、心も疲れ果てた人たちがいたのではないだろうか。心の悩みは、人との接触で作られるが、その悩みは、また、人との接触によって癒される。
大野裕は『「うつ」を治す』(PHP研究所)で、「うつ」は再発しやすいと、書いている。治っても薬を飲み続けろと、主張している。
薬に依存性はないと彼は言うが、やめるときには離脱症が生じるという。「治っても薬を飲み続ける」では、依存性とどこが違うのだろうか。精神科医が関わって「制御」されているから安全なのだろうか。
また、再発しやすいだけでなく、何年も何年も薬を飲んでいて、治らない男の子もいる。その子が20歳になったので、今年、私のいるNPOで成人式をし、みんなで祝う予定であったが、コロナ騒ぎで できなかった。来月に、遅ればせながら、NPOでの成人式をすることにしている。
同じ歳の女の子だが、その子が、今年の8月に、夜間に寝付けず、頓服薬リスパダールOD錠1錠を飲んだら、けいれんを起した。翌日、総合病院に受診して、ミオクローヌスと診断され、リボトリール錠0.5㎎を毎日のんだ。その後、職場にパラパラとしか通えなくなった。
その子の持病に てんかんの小発作(欠伸発作)があり、また、中学、高校、卒業後も何度か、うつ状態を示すことがあり、両方の薬を異なる病院で処方されている。私は医者でないので口をだせない。問題は、そのことではない。
9月に職場から「昼休みは元気だし、福祉ではないから、これ以上休まれると困る。完全に治るまで来ないでください」と言われ、休職扱いになり、給料が出なくなったことである。高校と先ほど言ったが、特別支援学校高等部で、職場は「特例子会社」である。障害者手帳で就職したので、「福祉」でないと言われても本人が戸惑うだけである。
この件で、女の子の相談にのったが、わからないのは母親の態度である。職場の「ジョブコーチ」の言い分を信用するが、自分の娘には「まとわりついて欲しくない」という。どうも、家庭が崩壊しかかっているのではないか。
2年前の春にも職場に通えぬということがあり、その後、落ち着いたので、安心していた。
心の病(やまい)は、薬だけで治るものではない。脳科学者の加藤忠史は「うつ」はこれから自分に起きることへの不安からくるという。細菌感染の治療薬は細菌を殺す。それに対し、心の病の薬は対処療法である。薬を使って症状を和らげるあいだに、自分の力で回復することを期待している。周りの人たちも、自分で自分を治すのを助けるのが望ましい。「自力」だけでなく「他力」もいるのだ。
今回のコロナ騒ぎのせいか、暑い夏のせいか、職場のジョブコーチも母親も心の余裕を失っている。特に母親の心の状態が心配である。だれか、寄り添ってあげないと、母親の心が壊れたままになる。
心を病む人は多いが、心を癒やす人はまだまだ少ない。きょうは涼しくなって、秋が来たようだから、事態は好転するかもしれないが。
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