猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

アメリカ政府はロシア側のいうように「折れた葦」なのか、『イザヤ書』36章

2022-03-21 21:53:02 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

(キエフ Київ)

いま、毎朝起きると、キエフは大丈夫か、ゼレンスキー大統領が生きているか、不安をもって、BBCやCNを見る。戦いが続いていて、ウクライナの地で人びとが大量に死に、自分の住処から逃げるしかない人びとに、やるせない思いを強める。

4,5日前から加藤陽子の『この国のかたちを見つめ直す』(毎日新聞出版)を少しづつ読んでいる。装丁が悪く、開くと、ぎっしりと詰まった文字に圧倒される。編集も悪く読みづらい。しかし、そのうちに慣れてきた。

その136ページに、第1次世界大戦後のパリ講和会議で、イギリス大蔵省代表のケインズが、ドイツに報復的賠償を科すことに怒って、パリを去ったとある。そのとき、ケインズがウィルソン米大統領に「あなたたちアメリカ人は折れた葦です」と言ったという。

本当にどう言ったか探しているのだが、“a broken reed”は英語圏では有名なイデオムでどの辞書にも載っている。いざとなったときに役をたたない人や物をさす。

この語を聞いて、まさに、現在のアメリカ政府をさす、と思った。

加藤は、これが旧約聖書の『イザヤ書』36節6節に出てくる言葉だ、と、牧師の人に教えられたと書く。

「今、お前はあの折れかけた葦の杖、エジプトを頼りにしている。だが、それは寄りかかる者の手を刺し貫くだけだ。」(聖書協会共同訳)

「あの折れかけた葦の杖」はヘブライ語「על־משענת הקנה הרצוץ הזה」の訳である。韻を踏んでいる。

もともと、誰が誰にそう言ったか、わかると言葉に重みがでてくる。『イザヤ書』36章の「折れかけた葦」は、現在の英語圏の「折れた葦」と異なったニュアンスで使われている。

アッシリア国王から遣わされた将軍ラブ・シャケが、ユダ国王の使いに言った言葉である。希望はない、降伏しろと言っているのだ。言葉だけで助けに来ないエジプトなんかを頼みにするな、と言っているのだ。

《ユダ国王の使いは「どうか僕たちにはアラム語で話してください。私たちは聞いて理解できますから。城壁の上にいる民が聞いているところでは、私たちにユダの言葉で話さないでください」と将軍に頼む。》

今も昔も情報戦なのである。

《将軍は答えた。「アッシリア国王が私を派遣されたのは、お前の主君やお前にだけ、これらのことを伝えるためだというのか。むしろ、城壁の上に座っている者たちのためではないか。彼らもお前たちと一緒に、自分の糞尿を飲み食いするようになるのだ。」

そして将軍は立ち上がり、ユダの言葉で大声で叫んだ。「大王、アッシリアの王の言葉を聞け。ユダ国王にだまされるな。彼はお前たちを救い出すことはできない。

私と和睦し、降伏せよ。そうすれば、お前たちは皆、自分の畑のぶどうやいちじくを食べ、自分の水溜めの水を飲むことができるようになる。

私が来て、お前たちを、お前たちの土地と同じような土地、穀物と新しいぶどう酒の土地、パンとぶどう畑の土地にまで連れて行く。」 》

そうなんだ。「折れかけた葦」などに期待せず、降伏し、捕囚になれと言っているのだ。

ウクライナの20世紀の歴史をみると、住民の強制移住(捕囚)がロシアによって行われている。今回もクリミアとロシアを結ぶ町の住人がロシアに連れ去られたと報道されている。

「折れかけた葦」とは、軍事侵攻する側が降伏を迫るために、希望をくじくための言葉である。アメリカ政府が、ロシア政府の言う通りの「折れかけた葦」であっては、ならない。この厳しい戦いの中、ゼレンスキー大統領はよく国民を束ねている。アメリカと世界は彼の頼みを聞け。


8年前のETV特集『歴史と民族から考えるウクライナ』座談会が面白い

2022-03-20 23:04:41 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

昨日のETV特集『ウクライナ侵攻が変える世界 2014 対立の原点』が興味深かった。これは2014年5月24日の『歴史と民族から考えるウクライナ』の座談会の再放送にコメントを加えるものだった。

現在、日本で見られる報道の多くはロシアが悪い、プーチンが狂人だ、の大合唱である。私もロシア軍のウクライナ侵攻は悪い、ただちにロシア軍は撤退すべきであると思うが、なにか、その報道に納得できかねないものが潜んでいると感じる。それは西側(the West)の一元的価値観の賛美である。

西側とはなんなのか。CNとかBBCを聞いていると、西側とはアメリカやイギリスのことを言っていて、この両国がひきいる自由主義経済の世界支配を主張している。問題は、そうではないでしょう。人道的問題でしょう。力で人を従わせていいものではないでしょう。軍事侵攻をはじめたら制圧できないからと言って、無差別攻撃をはじめていいものでないでしょう。私はそう思う。

だから、「西側」だけが世界ではないという、『歴史と民族から考えるウクライナ』座談会の立場を評価したい。ロシアには反米感情が渦巻いている。ロシアだけでなく、世界にも反米感情が渦巻いている。それがあるから、ウクライナ軍事侵攻でロシアを非難する国連決議に35ヵ国が棄権し、12ヵ国が無投票だった。

アメリカ中心の秩序が面白くないというプーチンの立場、ヨーロッパとアジアとが溶け合ったユーラシア主義が、これまでの「西側の傲慢 western hubris」のため、いまはさざ波でも大きなうねりになるかもしれない。


戦う人と見ている人の分断が21世紀の戦争なのか―ウクライナ軍事侵攻

2022-03-19 23:00:38 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

きのうの朝日新聞にポール・クルーグマンのコラム『プーチン氏の二重の誤算』(Wonking Out: Putin’s Other Big Miscalculation)があった。これは3月4日のニューヨークタイムズOpinionへの寄稿の翻訳である。原文を読みたかったが、有料購読者でないと読めないようになっていたので、読んでいない。以前は無料で読めたのに。

読みたかったのは、じつは、クルーグマンの書き出しの文が気になったからである。

《ウクライナが驚くほど効果的な戦いを繰り広げてきたにもかかわらず、大半の軍事専門家は火力で圧倒するロシア軍の優位性が最後に勝ると考えているようだ。専門知識のない私に異論をはさむ余地はない。》

どういう気持ちでこの文章を書いたかは原文を読まないかぎりわからない。言語は、話者の考える事実を伝えているようで、実際には話者の気持ちを同時に伝えている。

とにかく、わかることは、しばらくウクライナ人が善戦がしているが、兵器に勝るロシア軍が勝つとアメリカの軍事専門家が思っているようだ。

ウクライナ政府は18歳以上60歳以下の男性はウクライナに残って闘うように要請している。報道によれば、プーチンは、ロシアの属国の若者を最前線に送り込んで、国内の反戦機運の盛り上がりを防いでいるようだ。

ロシアは攻撃側だから、ウクライナの都市へミサイルを撃ち込めば確実にウクライナ人を殺せる。20世紀からの戦闘では民間人と軍人と区別がなくなっている。ウクライナは攻撃される側だから、残っているウクライナ人はすべて殺戮の対象となる。

一方、ロシアはウクラナイ軍の攻撃の対象ではないから、ロシア人の多くはこの戦闘をゲームかのように見ている。

クルーグマンは経済封鎖が効くとみているようだが、アメリカの18歳以上の60歳以上の男が戦闘への参加を強要されいないから、呑気なことをいえるのではないか、と思う。

「ウクライナが驚くほど効果的な戦い」のなかに、ゼレンスキー大統領の手腕が含まれる。ウクライナもロシアも多民族国家である。ゼレンスキーはウクライナ国民をうまくまとめ上げ、ロシアの武力侵攻に抵抗させ、いっぽうでロシアとの停戦協議を継続させ、しかも、世界各国に即時停戦への支援を呼びかけている。賞賛したい。

考えてみよう。19世紀に代議制民主政が普及したのは20世紀の国民総力戦を予期してのことだったと思う。

ところが、21世紀の戦争は、死を予期しながら闘っている人びとと、それを見ながら自分は死ぬことはないと思っている人びととに、分断している。これは今だけの現象なのか。人の世が不平等を許さないとすれば、分断はいずれ崩れて、死を予期しながらの戦闘に誰もが巻き込まれていくのだと思う。


ロシア軍のウクライナ侵攻を日本に置き換えて考える

2022-03-18 22:42:07 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

(ドイツ議会で演説するゼレンスキー大統領)

ロシア軍のウクライナ侵攻が3週間たってもまだ続いている。日本軍の中国侵攻は1937年に始まったのだから、日本の敗戦まで8年続いたことになる。

ロシア政府は、ウクライナ侵攻といわず特別軍事作戦といっているようだ。当時の日本政府も日中戦争といわず、支那事変を正式の呼称とした。どうも、日本政府は中国を国と認めていなかったから、宣戦布告もなく、他国を攻めているという意識がなかったようだ。

戦闘が長く続いたということは、中国の人びとに自分の国、自分たちの政府、自分たちの軍隊という意識があったということと、軍事支援する国々があったことだ。

日本軍の中国侵攻が8年で終わったことは、日本政府が戦線を世界に拡大し、敗戦したからである。もう一つの要因は、昭和天皇が無条件降伏をしても、自分の位置は変わらないという思いがあったからではないか。責任をすべて大日本帝国陸軍に押しつけて、自分や天皇制は生き残るという思い込みがあったからではないか。残念ながら昭和天皇の読みは正しかったようだ。

今回のロシア軍のウクライナ侵攻は、アメリカが事前にそれを知っていながら、アメリカがそれに反撃する用意があるとロシアに警告しなかったことにある。そして、いまも、アメリカ軍の派遣をバイデン大統領は否定している。アメリカが参戦すれば、ウクライナの軍事侵攻はただちに終わるだろう。

かつてアメリカが天皇制に手を付けず、昭和天皇を退位させなかったように、プーチンを戦争犯罪人として裁かなければ、すなわち、ロシア大統領の位置を不問にすれば、第3次世界大戦にならずに、核戦争にならずに、すぐ、軍事侵攻は終わるだろう。

戦後、日本は非武装中立の憲法もった。ところが、非武装中立の憲法をもっているにもかかわらず、1950年に朝鮮戦争が始まると警察予備隊が編成され、日本はアメリカ軍の後衛部隊に編制された。日本は中立ではなかったのである。ウィキペディアによれば、「日本は、朝鮮出撃の基地となったほか、掃海部隊の派遣、占領軍労働者による兵員物資輸送、各種労働者の韓国派遣、従軍看護婦の召集など、戦争に対する橋頭堡の役割を果たし、多数の日本人が直接戦場に派遣され、少なからぬ犠牲者も出た」のである。

日本は、アメリカに占領されていたから、日本国憲法の非武装中立を踏みにじって、アメリカの忠犬になっていたことも、ある程度しかたがないことだろう。がまん、がまん。しかし、いつまで我慢すれば良いのだろうか。

日本には、1945年の敗戦から、アメリカ軍の基地がある。1965年から1975年までつづいたアメリカとベトナムの戦争のとき、アメリカ軍は日本のアメリカ軍の基地から出撃した。同じことはアメリカとアフガニスタンと戦争、アメリカとイラクの戦争のときも、日本のアメリカ軍基地からアメリカ軍が出撃した。

数年前に日本政府はみんなの税金を使って高価な対ミサイル警戒システムを設置しようとした。当時の防衛大臣の河野太郎が反対したから設置とりやめになったが、日本の防空システムとして機能せず、アメリカ本土を守るためのものだった。

日本国憲法第9条の非武装中立の精神を踏みにじりながら、日本政府はアメリカ軍の軍事活動をサポートしてきた。それなのに、いまになって日本政府は、どうして、ウクライナへの支援が軍事支援と思われるのを極度に恐れるのか。

ウクライナは、ソヴィエト連邦が崩壊するまでは、アメリカ、ロシアにつぐ核兵器が配置されていた連邦内の共和国であった。工業国であった。最近のテレビ解説で知ったのだが、ウクライナ共和国が1991年に独立したときに、アメリカ、イギリス、ロシアがウクライナの安全を保障することを条件に、ウクライナは核を放棄したという。この国際的約束はどうなったのか。

2014年のロシアのクリミア併合をまのあたりに見て、ウクライナ政府は、NATOやアメリカの支援を受けてウクライナ軍を強化したとのことだ。しかし、今回の軍事侵攻では、アメリカのバイデン大統領は、プーチン大統領を戦争犯罪人となじりながら、軍隊を派遣しようとしない。本当の平和主義者だからなのだろうか。

私は、子どもたちの間に、いじめがあったら、暴力があったら、すぐさま介入して止めることにしている。そのほうが、両者とも、精神的にも肉体的にも傷つくことが少ないからだ。

わざわざ、第3次世界大戦に仕立てることもなく、第3次世界大戦になることもないと思う。軍事侵攻を止めるために名称は平和維持部隊でもなんでもよいから軍隊を派遣すれば良いだけである。


勇気あるポーランド、チェコ、スロベニア首相ら、戦地キエフに入ってウクライナ大統領とあう

2022-03-17 21:54:45 | ロシアのウクライナ軍事侵攻
ポーランドの首相と副首相、チェコの首相、スロベニアの首相がウクライナの激戦地、キエフにはいって、ウクライナのゼレンスキー大統領と会談をもった。小国であるが、自分の実の危険を顧みず、キエフに入ったことを大いに評価すべきである。軍を派遣しなくても、人の楯になれるのである。

日本も岸田文雄首相や他の閣僚がウクライナの戦闘地にはいり、人の楯として、平和を訴えることができないものか。

今回、ニュースを見ていると、フランスは兵器をロシアに輸出していることが明らかになり、ドイツの経済封鎖も穴があるがわかってきている。アメリカ、ドイツ、フランスは西側the Westという言葉を使うが、自分たちの社会に戦渦が飛び火をすることを恐れ、あくまで、ウクライナとロシアの戦争ということに、装っている。欺瞞である。

ゼレンスキー大統領は、英国、カナダ、アメリカ、ドイツの議会にリモートで助けを訴えている。軍備が劣っても、このような手があるのだ。議会に訴えれば。英国、アメリカ、ドイツの国民に影響を与える。

ゼレンスキーは日本の国会にもリモートで訴えることを望んでいるが、自民党幹部の一部が反対しており、実現しない。なぜ、ゼレンスキー大統領が日本の国会に直接訴えることに反対するのだろうか。