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Gentiana veitchiorum蓝玉簪龙胆 (地域集団:四川省四姑娘山/長坪溝渓谷) 〔sect. Kudoa 多枝組〕
フタツバリンドウ蓝玉簪龙胆Gentiana veitchiorum。四姑娘山長坪溝。標高3500m付近。2006.9.18(以下同じ)
巴朗山の峠上方で「ナナツバリンドウ」を探索した日の前日に、四姑娘山本体に分け入る三つの渓谷の一つ、長坪溝の中ほどまで行ってみた。そこで出会った*のが、この「フタツバリンドウ」だ。
「中国植物志」に紹介されている対生葉をもつ「多枝組華麗系」14種・変種のうち、最もポピュラーな種の一つである「Gentiana veitchiorum蓝玉簪龙胆」に相当するものと思われる(「フタツバリンドウ」の和名を与えて置く)。
茎葉が輪生する「ナナツバリンドウの仲間」(=輪葉系series Verticillatae)と異なり、葉は対生、花筒が細く長く、花色が濃く、「輪葉系」とは別の「華麗系series Ornatae」の一種である。
*その時点では、リンドウの仲間に対しての知識も興味もさほどなかったので、必要とされるべき形質部分の撮影が十分になされていない。
「中国植物志」の記述に因ると、14種(3変種を含む)から成る「華麗系」の大半の種は、「輪葉系」の各種共々、「ロゼット葉」について「欠くか発達が悪い」とだけ記されている。その中にあって、この種(とチベット産の一種だけに)「ロゼット葉が良く発達する」と書かれている。
挿図を見ると、確かに株の根元から、細長い葉を四方に伸ばした、大きな単独のロゼット葉が描かれている。(文献には記されていない)「典型ナナツバリンドウ」のクラスターを成す超小型のロゼット葉塊とは、全く異なる構造である。しかし、株の根元に存在する、ということは同様である。
僕の撮影した写真をチェックしてみた。どの写真も株の根元周辺が他の草に覆われていたりして、よく確かめることは出来なかったが、幾つかの写真では、確かにそのような大型のロゼット葉が存在することを認め得た。
前回の項でも述べたが、この(「典型ナナツバリンドウ」と「フタツバリンドウ」が示す)正反対の「ロゼット葉」の、気質的、機能的な相関性を、(いつか将来)探ることが出来れば、と思っている。
下2個の花の上や、画面右上方などに、細長く四方に伸びた大型のロゼット葉が見える。
右上の大きなロゼット葉の中には、小さな葉群もセットになっているように見える。
長坪溝の渓流(日本の北アルプス・上高地にそっくり!)を挟んだ四姑娘山の対面に、頂上が鋭く尖ったピラミッド型の山が聳える。
【再掲】長坪溝渓谷の入口(標高3200m付近)から仰ぎ見た四姑娘山主峰6250m。2006.9.19
【再掲】左の5個体が、四姑娘山長坪溝の渓流に沿った林内の草地(標高3500m付近)に生えていたGentiana veitchiorum蓝玉簪龙胆。葉は一対づつの対生で、花冠筒部が長い。その他は、巴朗山の峠上方の高山礫地草原(標高4700m付近)。葉は三枚以上の輪生で、バリエーションに富む。葉数が少なく、疎で、幅が広く、花色が濃い個体から、葉数が多く、密で、幅が狭く、花色が淡い個体へと、形質は連続するように見える。右下の(やや発育の悪い)全株個体には、中央部から派出するロゼット葉の萌芽のような部分が認められる。2006.9.21
【再掲】左2個体がGentiana veitchiorum蓝玉簪龙胆。
「中国植物志」の図表から。「華麗系」3種。蓝玉簪龙胆以外の2種にも、基部の大型ロゼット葉は確かめ得るが、本文中には指摘されていない。