制球力、修正力、そして総合力。
とにかく基本ですね。
プロ野球選手としては小柄な部類で、威圧感もなく、特に球のスピードが速いとかでもなく、一見した感じでは、なぜこれほどダントツの成績を残せているのかよくわからない気もする山本由伸選手が凄いのは、基本が完璧という点にあると思います。
当たり前のことなのだけれど、その当たり前が難しい。
野球だけではなく、全てにおいて言えるでしょう。50歳余年上の僕も、山本君を見習わねばなりません(殊に修正力)。
なんだかんだ言っても、大谷君と由伸を獲得したドジャースは、流石に強いです。問題はポストシーズン。大谷君に“力み”が出なければ良いのですが。
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ユリ科の話
Genus Fritillaria 1 暗紫貝母F.unibracteataと川貝母F.cirrhosa
僕が中国と日本で撮影したユリ属の種の紹介は前回までです。この後9回は、ユリ属以外の狭義のユリ科植物を紹介していきます。
最初の2属、バイモ(クロユリ)属とウバユリ属Cardiocrinumは、ユリ属にごく近縁で、ユリ属とともにユリ亜科のユリ連(さらにユリ亜連)に所属します。
よくクロユリのことを、「ユリと名が付くけれどユリではない」という言い方をしますが、それは違います。ユリ属に含まれていないとしても、ユリにごく近縁の植物であることは確かなので、「ユリ」であると考えても、必ずしも間違いとは言えないのです。
*ちなみに「ユリ」という種名の植物は存在しません。ただし中国ではLilium brownie(日本名:ハカタユリ)が、「百合」に相当します(「野百合」ともいう)。
一方、ユリ属とは類縁的に遠く離れた広義の(旧分類体系の)ユリ科植物の中には、姿もユリに似て、00ユリと名付けられた種が幾つもあります。それらに関しては「ユリと名が付くがユリではない」と言うことが出来るでしょう。クロユリやウバユリの場合とは、置かれた状況(関係性の距離)が全く異なるのです。
線引きの問題もあります。少し前までは、ユリ連の中でもNomocharis属、バイモ属、ウバユリ属の3属がユリ属に非常に近縁で、研究者ごとに、それぞれの属をユリ属に併合させる提唱が成されてきました。
現時点の解析結果においては、このうちNomocharis属の各種が、ユリ属の幾つかのグループの種と同一分枝に位置づけられることが判明したため、次の2つの処置のどちらかを選択する必要に迫られることになりました。
①Nomocharis属と同一分枝に入るユリ属の種と、それ以外のユリ属の種を、別の属とする。それ以外のユリ属も、バランスを考慮すれば、多数の属に分かれることになる。Nomocharis属の名が残る可能性はあるが、場合によってはユリ属の名は消滅してしまう可能性も出て来る。
②ユリ属の中にNomocharis属を併合する。
まあ、②の選択が、妥当なところでしょうね。
では、Nomocharis属同様に、ユリ属にごく近いと考えられるバイモ属やウバユリ属はどうなるのか、というと、
両属とも、ユリ属のいずれかの種と単系統を構成することはないことから、
③ユリ属に組み込む。
④そのまま独立属として据え置く。
の2つの選択肢が成り立ちます。
④を選ぶにしても、Nomocharis属に於ける①の場合のように、複雑な再構築をしなくて済むのです。
ということで、現行のユリ属をそのまま生かすには②の処置を選ばざるを得なかったNomocharisとは違って、(ユリ属に併合しなくてはならないという必然性はないことから)従来通り、バイモ属、ウバユリ属も生かすことが出来るわけです(むろん、ユリ属に併合する、という見解が有っても良い)。
バイモ属には、2つの名の知れたメジャー植物が含まれます。漢方の代表種のひとつバイモ(貝母)と、高山植物として人気のクロユリです。ただしバイモ(貝母)は日本では移入植物で、自生はしていません。自生種はよく似たコバイモの一群で、地域ごとに幾つもの種(亜種や変種とする見解もある)に分けられています。また、クロユリも、複数の下位分類群に分かれます。
今回は、中国西南部山岳地帯に分布する2種、次回は、日本のクロユリとコシノコバイモを紹介していきます。
ところで、このシリーズの冒頭に、「狭義のユリ科の大半はユリ属の種が占める」と記したように記憶していますが、正確に言うと、そうとも限らないのです。確かに、日本や中国など東アジアに於いては、そのように捉えることが可能ですが、ユーラシア大陸の西部や北米大陸を視野に入れれば、ユリ属に匹敵する種数を擁する属が幾つかあります。バイモ属もその一つで、ユーラシア大陸の西半部では、(同じくユリ連の一員であるチュ-リップ属やチシマアマナ属とともに)ユリ属を上回る繁栄を遂げています。
バイモ属は、中国植物志によると世界に130種、うち中国に20種、日本には(コバイモ類を細分した場合)10種前後が分布します。
中国で僕が撮影した2種は、四川省と雲南省の、いずれも標高4000m超の高山岩礫地に生育していました。
雲南省の白馬雪山では、前回、前々回に紹介したユリ属の小型種、尖被百合Lilium lephophorumや小百合Lilium nanumと同じ地域(ただし生育地はそれぞれ重ならない)に生えていました。四川省の雪宝頂でも、白馬雪山とほぼ同じような環境に生えていました。
前者を暗紫貝母Fritillaria unibracteata(分布:四川・青海・甘粛)、後者を川貝母Fritillaria cirrhosa(分布:四川・雲南を含むチベット高原~ヒマラヤ地方周辺地域)と同定しておきますが、確信はありません。
暗紫貝母Fritillaria unibracteata
四川省雪宝頂(峠) alt.4200m付近 Jul.4,2005
暗紫貝母Fritillaria unibracteata
四川省雪宝頂(黄龍渓谷) alt.3200m付近 Jun.24,1989
*峠頂の個体とはかなりイメージが異なりますが、一応同じ暗紫貝母として扱っておきます。
川貝母Fritillaria cirrhosa
雲南省白馬雪山(峠) alt.4100m付近 Jun.16,2009