場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

「ヤスミン・アフマド特集」に行ってきた

2019年08月06日 | 映画・ドラマ

シアター・イメージフォーラムという映画館で「ヤスミン・アフマド特集」をやっていたので行ってきた。ヤスミン・アフマドは10年前に亡くなったマレーシアの映画監督で、上映されていたのはヤスミン・アフマドが撮った6本+ヤスミン・アフマドも参加したオムニバス作品の「15マレーシア」。そのうち私が観たのは「細い目」「タレンタイム」「15マレーシア」の3本。
「細い目」はマレーシア在住の日本人のサイトで紹介されていたのをかなり前に見たことがあって気になってはいたものの、観る機会は訪れないだろうなと思っていた。そうしたら思わぬところで。

私はマレーシアに関心があるんだけど、マレーシア映画って日本ではなかなか観られないからな。「タレンタイム」は2年くらい前に日本で上映されていたらしいが全然知らなくて観ていなかった。今回、映画館にマレーシア文化を紹介するフリーペーパーも置いてあったし、マレーシアの空気をたっぷり感じられて楽しかった。

3本の中で私が一番面白いと思ったのは「タレンタイム」。爽やかな青春映画かと思いきや、マヘシュの叔父さんが突然殺されたりハフィズのお母さんが病気でずっと入院していたりと案外重いところもあって、それでもラストシーンでは温かい気分になれる。
そして音楽がよかった。特にハフィズの歌う「I GO」。二胡の美しい音色がとても効果的に挿入されている。サントラがイメージフォーラムで販売されていることを後日知り、それを買うためだけに足を運んだりもした。

どの映画でも共通して感じられたのはマレーシアの多様性。宗教も見た目も言葉も違う複数の民族が一つの国で自然に共存しているところから醸し出される独特の雰囲気。日常会話で英語を使う機会が多いことにも驚いた。マレーシア人はほとんどがマルチリンガルだと聞いたけど、こういうことなのか。
日本は一つの民族が圧倒的多数を占めているし、比較的多い朝鮮系の人たちも見た目は変わらない。宗教はさほど重視されない。アメリカは人種の差ははっきりしているものの白人がメインでほかの人種は脇役みたいな空気がまだどこかにある。そして大概は英語話者で言葉の多様性はない。
マレーシアではマレー系が一番多数派だけど、どの民族も壁はあっても同じように主役な感じがしてそこが良かった。でもこれはヤスミン・アフマド監督だからなのか、他のマレー系監督だったら違ったのだろうか、などど考えたりした。

このシアター・イメージフォーラムでは「主戦場」がずっと上映されていて、今月末からは日本軍の戦争加害を扱った「日本鬼子」もかかる。反骨心も感じられる面白いセレクト。万人向けの娯楽策だけじゃなくこういうのも上映してくれるところがミニシアターの魅力なのかもしれない。


映画「新聞記者」感想

2019年07月06日 | 映画・ドラマ

先月観た「主戦場」の上映前に流れたCMでこの映画の存在を知り、面白そうだと思って観に行った。「主戦場」を観るような層ならこれも観たがると思ってCMを流したんだろう。多分それ、大正解。実際私も両方観てるし、セットでおすすめされているのを結構見るような気がする。

内容について。フィクションではあるけど、どう見ても実際の事件をモデルにしているとしか思えない出来事が次々と起こる。
特に伊藤詩織さんの話なんかはほとんどそのまま。現実と違ったのは、記者会見が普通にテレビで放送されていたこと。現実では黙殺されてたから、この映画より現実のほうがひどいのかもしれない。

終始暗くて重苦しい雰囲気の映画で、見終わったあとの爽快感はあまりない。でもこれがこの国の現実。悪い奴を倒してスカッとするような映画だったら嘘くさすぎるからな。

最近の出来事を扱い、安倍政権への批判をこめつつも、もっと普遍的なことも言っているように感じる。権力のチェック機関としての矜持、公僕としての矜持。それを失わないようにしたいという。たとえ上から理不尽に潰されそうになっても。
私だって安倍政権は終わらせるべきだと思うけど、安倍だけが問題なんだとも、安倍政権でなくなればすぐに物事が好転するとも思わない。お上に逆らうな、という意識の人間が多ければ、誰がトップに立っても多分すぐに同じようなことになる。

見る人が見ればいろいろと足りない部分があったとしても、今の日本でこういう映画が作られたことはとても意味のあることだと思う。だからヒットしてほしいしこれに続く映画がたくさん出てほしい。

キャストの豪華さの割にテレビなどでは宣伝がほとんどされていない感じなのは、大人の事情が絡んでいそう。直接的な圧力があったかどうかはわからんが、勝手にビビって宣伝に協力してくれないみたいなことは普通にありそう。

新聞記者役を韓国の俳優が演じることになったのは、オファーした日本の俳優にことごとく断られたから、という噂も聞いた。真偽のほどはわからないけど、さもありなんって感じ。ただ、誰が断ったとか具体名を出して記事にするのはあまり好かん。
シム・ウンギョンは最初はあまりピンとこなかったんだけど、表情がとても良くてだんだん引き込まれていった。特に神崎さんの机の前のシーンで杉原を見つめたあの表情。
松坂桃李も良かったし、俳優陣みんな良かった。他の俳優やスタッフもそうだけど、特に松坂桃李はよくオファーを受けてくれたよな。リスクありそうだし、いくらでも仕事を選べる立場だっただろうに。

最後に、いわゆる「ネトウヨ」の描写について。映画の中では内調の人間が国士様になりすまして政府に都合の良い情報をばらまいていた。これを見て、ネット国士様は全員あるいは大半が内調関係の人間であるという描写がなされている、みたいに受け取っている人がそれなりにいたが、それは違うのでは。「ネトウヨ」の全部じゃなくてごくごく一部の(多分影響力のある)アカウントがそうだということしかこの映画の中でも言っていないと思う。少なくとも私はそう解釈した。

でもね、ネット国士様の全部がそういうのだったらどんだけマシかと思うよ。ごく普通の、上からの圧力もしがらみも何もない市民がなぜか与党の熱烈なファンだったりヘイトをばらまいていたりするのが多分現実なんだから。そのほうがもっと怖くないか?
まあ、そのへんの有象無象じゃなくて影響力のある一部のアカウントは「お仕事」としてやっている可能性が高いかもね。


映画「轢き逃げ」感想

2019年05月25日 | 映画・ドラマ

とてもBLだった。秀一の一番幸せそうな顔が見られるのが婚約者とのシーンじゃなくて親友の輝とのラブラブデートシーンだったり。

この映画なあ、オタク系でBL好きな人に受けそうなんだけど、そういう層にはあまり届いてなさそうなのが残念。まずタイトルがつまらん。CMの感じだと硬派なヒューマンドラマのように見えるし、私もそういうつもりで見ていたら思いもしなかった要素が出てきて驚いた。

全体的には割と好きだったんだが、一つ残念なのは女性陣が添え物みたいな扱いになっていたところかな。轢かれた女性はただの舞台装置のような感じでどういう人物像だったのかよくわからないし、秀一の婚約者は都合のいい女性って感じがした。
千鶴子も優しすぎるんだよな。光央の千鶴子に対する態度は結構ひどくて、そこが若干光央への感情移入を阻害している感じがするんだが、千鶴子は全く怒ったりしないからな。
秀一・早苗夫婦も光央・千鶴子夫婦も妻が夫に寛容すぎるんじゃないだろうか。こういうところ、ちょっと水谷豊の女性に対する幻想を見せつけられた気がした。
まあ、この映画のメインはあくまで男同士の話だと思うので。

ここからネタバレ。

後半のどんでん返しには素直に驚いた。サスペンス要素があるとは露知らず、普通のヒューマンドラマのつもりで見てたから。
輝の秀一に対する感情の大きさがすごかった。本人は嫉妬だと思っていたようだけど、気付いていないだけで別の感情も混じっていた感じがしたなあ。歪んだ愛情と言えばいいのか。

輝のヤンデレっぷり、好きな人はすごく好きなんじゃないかと思うんだけど、こういうのが刺さりそうな人に売りを話すとネタバレになってしまうのがもどかしい。いっそあれをどんでん返しに使うんじゃなくて最初から前面に出していれば……なんて思ってしまう。


ドラマ版「昭和元禄落語心中」第1回感想

2018年10月16日 | 映画・ドラマ

アニメ版は全話見たんだけど、この作品を好きかと聞かれると少し答えに詰まる。ラストのある部分でこれはない、倫理的に許せないと思ったところがあった(ネタバレなので具体的にどういうことなのかは書けないが見た人なら分かる)ので。
それでもこのドラマを見たのは、アニメを見ていたときから実写向きの題材だと思っていて、どんな感じで映像化されるのか非常に興味があったから。

ドラマ化されるという以外の事前情報は入れないまま、放送の直前にラテ欄のキャスト一覧だけ見て、この中だったら顔のイメージ的に竜星涼が青年期の八雲役だろうなと予想していた。それで老八雲は当然青年期とは別の役者が演じるんだと思っていたので、老けメイクで出てきた岡田将生を見ていろいろな意味で衝撃を受けた。

岡田将生は頑張っていたとは思う。でもやっぱり老人役は無理があった。青年期だけ演じて老八雲は別の役者を使った方が良かった。
じゃあ誰がいいのかと言うと……男らしい暑苦しい俳優では合わないし……とちょっと考えたら、すぐ近くにいたわ。松田さん役をやってる俳優さんだ。この人だったらピッタリ。Twitterで少し検索してみたら同意見多数だった。サスペンスで何度か見たことがあるので顔は認識していたものの名前は知らなかったけど、篠井英介っていうんだ。覚えておこう。

そういう年齢的な違和感を別にすれば、キャスティングは悪くなかったと思う。与太郎が意外にハマっていたし、岡田将生も青年期ならピッタリとはいかないまでも違和感はなさそう。
助六も良さげ。イメージにも合っていたし、落語が上手すぎて驚いた。第一話では出番が少ししかなかったけど、それでも強烈な印象を残してくれた。原作の助六は八雲より背が高くてガタイがいい感じなんでそこは違うんだけど、そんなことどうでも良くなるくらい。顔の濃さ加減は合ってるし。だから過去編になる第二回以降が楽しみ。

ただ小夏は全然合ってないね。漫画やアニメのイメージを消してもダメ。子供っぽすぎて、姐さんって呼ばれてるのにすごく違和感があった。口調も無理してる感が強かった。この役者はどちらかと言うと、お上品なお嬢様のほうがハマるんじゃないかな。知らんけど。

落語部分については、竜星涼と山崎育三郎は上手かったけど、岡田将生の落語は名人芸と言うには無理があった。弟子の方が上手く聞こえてしまうってのは問題かもしれない。
仕方ないんだけどね。落語は一朝一夕で身に付けられる芸ではないうえに、老人っぽさを出しつつ落語をやるという無理難題を出されているんで。ここはいっそのことプロの吹き替えで対応しても良かったんじゃないかな。


「遺留捜査」第5シリーズ第5話感想

2018年08月18日 | 映画・ドラマ

今回はあらすじとキャストを見て予想していたとおりの人が犯人だった。
最近、サスペンスの見方が純粋にストーリーを楽しむというより犯人当てゲーム感覚になってきているような。汚い大人になってしまったな。

一條さん(アシスタントの里中さん)は犯人じゃないと思ってた。だって一條さんだから(よく犯人になるというイメージを持っている人もいるようだけど、一條さんが犯人パターンは実はかなり少ない)。
里中さんがゴーストデザイナーだったとか、師匠が死んでからイキイキしているとかいう情報で、犯人ではないという確信を更に強めた。明らかに動機がありすぎる人は犯人にならないってのがサスペンスのセオリーだからね。そうやって一條さんを犯人っぽく見せて真犯人から視聴者の目を逸らそうとしてるんだなと。

一條さんは怪しいけど犯人ではなく、死体にもならず、犯人の動機に密接に関わっている人というイメージ。あと、いつも女性を不幸にしている。一條さんの妻だったり恋人だったり一條さんに片思いしている人は大体、一條さんが原因で殺されるか犯罪者になる。今回もちゃんとそのパターンを踏襲してたな。

今回は一條さんの扱いが最近の出演作の中ではかなり良かった気がする。犯人ではなかったけど、トータル出番は犯人と同じくらいか下手したらそれ以上にあったし、クズでもなさそうだったし。「刑事7人」は出番が2シーンだけ、「警視庁・捜査一課長」は後半ほぼ出番無しでクズ、「刑事夫婦3」にいたってはほぼモブだったから、それに比べるとかなり。

そして来週のゲストは櫻井淳子さんなんだね。また「おみやさん」からか。
「おみやさん」と言えば、一條さんって「おみやさん」の高岡刑事より「仮面ライダー龍騎」の芝浦淳 / 仮面ライダーガイとして認識されることのほうが多いんだね。芝浦なんて5話しか出てなくて、おみやさんではずーっとレギュラーだったのに。印象薄いんだね高岡刑事。いてもいなくてもいい役だったもんな。高岡刑事に限らず、「おみやさん」の刑事は大体そうだけど。