Feelin' Groovy 11

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誤記憶について

2005-02-20 | 
「言葉の通り、誤った記憶、ということです。つまり、実際には体験しなかったことを、
 さも体験したかのように記憶しているわけですね。見たことのないものを見たと
記憶している、会ってない人と会ったことを記憶している、習ったことのない架空
の国の言語を、ペラペラとまくしたてることができる」

そして「記憶のほとんどが、次々に生み出される誤記憶で構成されている」患者も
いるという。「覚えていることのほとんどが、実際になかったこと」なのだ。
それを聞いた主人公は次のように言っている。

「それじゃあ、その人というのは、この現実とは全く無関係に、別世界に存在している
 ということじゃないですか。それってつまり、その人はこの現実の中には存在して
 いないというのと同じじゃないですか」
                        (「」部は『シナプスの入江』清水義範著) 



私たちにも経験のある「既視感(デジャ・ヴュ)も、誤記憶の一種」だそうだ。
これは少しショックだった。
「既視感(デジャ・ヴュ)」はかなり具体的に記憶しているのにこれが「誤記憶」
だったならば、それと同レベルで普通に記憶していることも誤記憶ではないか
と疑ってしまう。
今まで生きてきたという証明は記憶によって裏づけられているとすると
先回「存在について」に書いたように、他人が自分の存在を証明してくれたとしても
その他人が実は誤記憶で作られた存在だったならば何の証明にもならないのだ。

作者によるあとがきに「読んだ人がふと自分の存在に不安を感じてくれれば嬉しい」
とあるが、その意図は成功していると思った。

誤記憶をつかさどる脳を解明すれば、マトリックスの世界も現実となるね。


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