「俺の住んでる街なんて、ただ人が多いだけの、薄汚れた、
なんの取り柄もない街だけど、たまに西の空に、
ものすごくきれいな夕焼けのかかることがあるんだ。
でも、どんなにきれいな夕焼けも、自分のものにすることはできない。
ただきれいだなと思って見ているしかない。そのうち夕焼けは
消えてしまう。そして二度と、同じ夕焼けは見られない。」
言葉に詰まった。何か伝えたいのに、伝わらないもどかしさが胸に残った。
(『空のレンズ』片山恭一著 講談社)
*写真はgroovyが自分家のベランダ風景を勝手にコラボ
片山恭一さんといえば、あの…『世界の中心で、愛をさけぶ』の著者ですが、
(以前にも
コチラで他の作品の感想を書いてます)
これはチャットで知り合った少年少女の、
現実かバーチャルか分からない空間からの脱出劇。
随分バラエティに富んだ内容の作品があるんだなぁというのが感想です。
どうも頭で作ってしまったような感じを受け、
入り込めず少し距離を置いて読んでいたのですが、
最後まで読むと、そのリアリティの無さが
わざとだったのかもしれないとさえ思いました。
ところで↓こういう場面がありましたよ。
「テレビでタレントとかがくだらないギャグをかまして、
スタジオにいる連中がゲラゲラ笑うだろう。
そういうの見てると、ときどきみんな撃ち殺してやりたくなる。
わけもなくイラついて、なんか狂暴な気分になってくるんだ」
「どうするの、そういうときって」
「歯を磨いて寝る」
春樹ファンは↓この場面を思い出すんじゃないでしょうか?
「許せなかったらどうする?」
「枕でも抱いて寝ちまうよ。」
(『風の歌を聴け』村上春樹著 講談社)
あるいはシェービング・クリームの缶でしょうか?
いつもの病気。
ことあるごとに思い出して、『風の歌を聴け』の部分を読んでしまう。