アルキメデスは手を汚さない

2007-08-17 20:50:51 | 日記風
 夕方本屋さんへ行く。
 普段の私は足が遠のいている場所だ。何故行かなくなったんだろう、考えると、いつの頃から本屋へ行くと眩暈を覚えるようになった。それが足を遠のかせた。
 ・・・ように思うが、真相はどうだったかな。

 今どきの出版事情がどうなっているのか知りたかったのさ。
 ほぉって感じだ。こういう新刊で、こういう作家が売れてる訳ね。

 昔の本屋っていうのは、ずっと同じ本を本棚に並べてたもんだけど、ある頃から本屋は1ヵ月も経てば丸まる本棚を入れ替えるように売れ筋以外の本は消えるようになった。
 いつもあの本屋のあの本棚に行けばあった筈のあの本はあっと言う間に姿を消す時代となった。
 
 そのシビアさは未だ変らずでしょう。

 けれど、ひとつこんな流れも起きている。復刊ブーム。何らかの事情で再版されなくなった本が読者の熱意で再び違う出版社から出版される。
 こういう本は懐かしい物が並ぶ。あの時胸をときめかせたあの作家の本や、あの時買わずに終わった本、それが再び違う装丁という衣装をまとって現れる。
 こうして甦る本は、読者を掴んだ本だから、ある意味それは当然の運命。そういう意味では優れた本は永遠の生命をやはり掴んでいるということか。

 本日見付けたのは、かつて江戸川乱歩賞を受賞し華々しいデビューを飾った小峰元さんの「アルキメデスは手を汚さない」
 残念ながら私はリアルタイムでこの本を知らないので、その当時どういう受け入れられ方をしていたのか、噂でしか判らない。ただ時代背景として、70年代、学生運動の頃に出たものだそうだから、そういう時代を孕んだ作品らしい。その当時としては珍しい、青春推理、悪漢小説。ここからその後を継ぐ作家が多く生まれたという。私の場合、その後を継ぐ作家さんの方に馴染みが深いってことになるのかな。
 正直学生運動も知らない。あくまで後付け、こんなことがあったと聞かされて知っただけ。つか先生の舞台で「飛龍伝」(学生運動を背景にした機動隊員と学生戦士の女性の悲恋の物語)があるので、これから辿って、学生運動ってこういうものだったのねって納得の仕方なんだけど。ちょうど小峰さんの本もこの頃をリアルタイムに切り取ったって所なのかな。

 学生運動ともリアルタイムじゃない私にしても、でもこの本の復刊は懐かしい。私のリアルタイムに生きた時代を私にだけ思い出させてくれる。
 そういう意味で。

 本は永遠だ。永遠であって欲しい。