My Favorite 《ゴールデンイーグル&Sleeping lion》

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「父は忘れる」 リヴィングストン・ラーネッド

2013年07月16日 | 

「息子よ、聴いてほしい。いま目の前できみが眠っている。小さい片手がほっぺの下敷きになり、カールした金髪が汗ばんだおでこに張りついているね。お父さんはここへこっそり入ってきた。いままで書斎で書類を読んでいたのだけれど、後悔が押し寄せてきて、じっとしていられなくなったのだ。自責の念でいっぱいになって、いまきみのベッドの脇にいる。

 息子よお父さんは気が付いた。きみに腹を立ててばかりいたね。きみが学校へ行く支度をしている時に、顔をタオルでちょっと濡らしただけだといって叱ったし、靴を磨いておかなかったといってとがめた。自分のものを床に散らかしておいたといってどなりつけた。

朝ごはんのときも、だめなところばかり目に付いた。こぼしちゃいけないとか、もっとよく噛みなさいとか、テーブルにひじをつくんじゃないとか、パンにバターをつけすぎだとか言いどおしだったね。きみは遊びに行くときも、駅へ急ぐ私を振り返って手を振り、「いってらっしゃい、お父さん」と大きな声で言ってくれた。私は顔をしかめて、こう返事をした。「もっと背筋を伸ばしなさい!」

夕方も同じだ。家の近くまで帰ってくると、君が地面にはいつくばってピー玉で遊んでいる。見ると長靴下がやぶれている。お父さんは君を家へ引っ立てていきながら、友達の前で恥をかかせた。「長靴下は高いんだよ、自分でお金を稼いで買うんだったら、もっと大切にするはずだ!」信じられるかい、これが父親の言葉だなんて!

その後のことは覚えているかい?書斎で書類を読んでいたら、きみがおずおずと入ってきた。ちょっと悲しそうな目をして。仕事を中断されて苛立った私が書類から目を上げると、きみは入り口で立ち止まったままだ。「何の用だい?」と、とげとげしい声で聞いたね。

きみは何も言わなかった。だが走り寄ってくるといきなり私に飛びついて、首のまわりに腕をまわしてキスをしてくれた。細い腕が私をぎゆっと締め付けた。神様がきみの心に花開かせた愛を、ないがしろにされてもなお萎れない愛を私に注ぎ込むように。そしてきみは出ていき、階段をパタパタと上がっていった。

デジタル時代の人間関係の原則  D・カーネギー 人を動かす2

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