(2021年10月に撮影したアサギマダラです)
小学校5年生の秋
運動会の最終の種目はリレーだった
アンカーには足の速い少し内気な友達が選ばれた
彼が走り出したときは最後尾
でも1人、2人と抜き去り必死に先頭へと迫る
小柄な体が弾み まるで白い運動靴が回転しているように見えた
町工場を営む彼の父親が声を張り上げ太い腕をぐるぐると回す
生徒や父兄の大歓声に包まれ彼は先頭でテープを切った
代休明けの教室はリレーの話題でもちきり
くるり とした目で はにかむ彼はいちやく人気者になった
6年生の新学期 学級委員を決める選挙があった
いつも選ばれるのは よく勉強のできる男女である
ところが意外に彼の票が伸び僅差で学級委員に選ばれた
ざわめく教室の中 彼だけが戸惑ったように俯いていた
「ぼく、嫌や・・・」と下校の道で彼はつぶやいた
雨が降っていた
いきなり彼は道路の水たまりに入っていく
白い運動靴に泥水がしみた
「やめとけや」と言っても彼はやめなかった
私の転居で疎遠になったが
30歳の頃 往来でバッタリ
近々 郊外に新社屋が完成する と彼は笑顔で語った
あの日の父親と同じ太い腕 作業中の白いシャツ姿が
今 思っても羨ましいくらい輝いて見えた
【竹田健次(79)(大阪市中央区)さんの朝晴れエッセーです】
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運動に秀でていたり
絵や書道に光るものを持っていても
目立つことが苦手な子どもたちは結構いるもの
小学校高学年の姪の娘は書道で賞を何度か受けるうち
もてはやされるようになり
それが嫌で手を抜いているのだとか
でも 彼女は本当は書道が大好き
*ヒーローや賞というものには
全く縁のない自分には
羨ましい話だと思うのですが・・・*
エッセーのなかのヒーローは
その後 学級委員を引き受けたのか どうなのか
書かれていないので分かりませんが
後にバッタリ会ったときに作者が感じた
羨ましい程の彼の輝きから
立派に学級委員を引き受けたのだと思えます
ヒーローは「嫌」という
彼もひとつづつ
目の前の苦手とすることを克服して
ステキな大人になったように
姪の娘も乗り越えていって欲しいものです
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