浄心庵・長尾弘先生「垂訓」

八正道と作善止悪

「講演集」より。

2015-02-27 00:12:01 | 浄心庵 長尾弘先生垂訓

          恩師のご著書「講演集」より


              講演集、 二


        我が子を救いたい親の愛


まだ一か月も経っていませんが、先日或る方が御相談に見えました。
足が痛くて引きつって歩けないのですね。
話しを聞きますと、夜中二時頃に起きて、藁人形をもって氏神様の森へ行き、
一生懸命呪いの釘を打っていられるのです。
こんなことは昔の物語かと思いましたら、今でもあるのですね。
鼈甲(べっこう)
の櫛を口にくわえて、鏡を胸に吊り下げ、頭に三徳をのせてロウソクを
三本立てて白衣を着ておられます。
鼈甲の櫛で口が裂けたように見えるのです。
そして人を呪い殺すのです。

これは人間の想念、行為の中で最も恐ろしい思いと行いです。
これをやりますと、相手を倒すだけでなくて、自分も倒します。
鬼の心にならないとそういうことはできないのです。
その方に言いました。
「あなたはどうかそれだけは止めて下さい。いろんな事情はあると思います。
しかし、それをやりますと、やがてあなたご自身がやられます。
これは間違いありません。だから、その恐ろしさに目覚めなさい」と。
足の痛い原因について、何か思い当たることがあるでしょうと尋ねますと、
実は丑の刻参りをしていますと告白されたのです。
普通ならお参りしているところを他の人に見られても人に知られても、
願いが成就しないのです。
そして自分の命が無くなるともいいます。
それを、その人は告白されました。
そこで、その恐ろしさを話しさせてもらいますと、「もう今日から止めます」
と言われました。

では、あなたの足、腰の痛みを治しましょうと言って光を入れますと、ポッと治ってしまいました。
あれほど跛(びつこ)を引いて痛んでいたのに、もう何ともありませんとのこと。
その鬼の思いに、鬼が食らい付いているのです。
これも話しをきけば無理がないのですが、その方はお譲ちゃんのことで心を痛めていたのですね。
お譲ちゃんというのは、勉強はよくできる、高校、大学と一度も親に心配をかけず、
よい大学を出られたそうです。
それが卒業して就職されると同時に、悪い男の人にひっかかったのですね。
それは暴力団の人だということです。

フィリピンからの女の人を連れてきては売っているような男にひっかかってしまって、
歳は二十も上で奥さんもある人なのですね。
こういう悪い人からどうしても離れられないでいたところ、
結婚の話しが持ち上がって結納も頂いたのに、
そのお譲ちゃんは嫌だと言うので、なぜ嫌なのかと問い詰めますと、
実はこういう人と付き合いがあると告白されたのです。
何とかしてそんな人と別れさせなくてはいけないと、両親は娘さんをきつく
責めたのですね。
お前がそんなことをするなら、私たちは死んで世間にお詫びをするとまで言われたのですが、
あまり厳しく言われたものですから、お譲ちゃんが家出してしまって、
一つ先の駅の所にあるアパートに住んで生活しておられたそうです。
それは男から逃げる為ですか、と尋ねますと、荷物はヤクザさんが運んできたもので、
男の為のものなのです。
お譲ちゃんのお兄さんが、あちこち探し回って居場所を突き止めて、アパートを訪ねた時に、
そのヤクザと会ったそうです。

そこで辛抱できなくなって、お兄さんがその男を殴ったのですね。
すると、逆にねじを食って二百万円も巻き上げられてしまったのです。
親にしてみれば、娘は取られるわ、銭は取られるわで、居ても立ってもいられず、
何とかしようと思って、こういう呪い事をしてしまったようです。
親は子への愛情の故に、鬼になってでも子を救おうとします。
たとえ地獄に落ちるとも、その子に代わることを思うのです。
大きな親の愛だったのですね。
それでお母さんを責めることはできませんから、「そういうことをしても、
お譲ちゃんは絶対に帰ってこられません。今日から止めて下さい」と話しますと、
「よく分かりました。来て良かったです。助けていただきました」と言って帰られました。


              ~ 感謝・合掌 ~



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