恩師のご著書「講演集」より
講演集、 二
調和は幸せの根源――紙屋さんの話
I島に行きました時に、紙を漉いておられるお宅へ初めて伺いますと、
ジャンパーを着て貧乏髯を生やしていかにも貧乏たらしくみえるご主人が、
私を見てうさん臭そうにしておられました。
そこのお仏壇にお参りさせていただきますと、たくさんの金が出てきました。
おばあちゃんはその金を持ってご近所に見せに回っておられました。
お仏壇の真っ黒けの位牌を拝みますと、忽ちに文字が浮かんできて、金箔を
塗ったうるしの位牌がきれいになりました。
ご主人が小学校五年の時、修学旅行で奈良へ行き、金箔を塗った大仏様の
小さいのを自分の小遣いを全部はたいて買ったというのが、
お仏壇の奥から出てきました。
これも真っ黒です。
お仏壇には、お仏壇の作法がございます。
まず宗旨によって、正面の中央にはご本尊様、右側には祖師様―――
その宗教を興された方、左側には中興の祖―――
一旦滅びかけたのを再び興して下さった方をお祀りするのが普通のしきたりです。
そこのお宅にはそういうものが何もないので、やはり作法に従ったほうがよろしいと言いまして、
その奈良の大仏さんの模型は毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)ですから、
大日如来様をこしらえましょうと言って、光を入れて大日如来様をこしらえまして、真ん中におきました。
次に、弘法大師様の色紙がありましたから、それで弘法大師さんをこしらえて置き、
不動明王様の代わりには観音様の首の落ちかけたのがありましたから、
これで不動明王様をつくり、三体揃えて光を入れますと、忽ち真っ黒だった
大仏様が光輝いてきて、お位牌も真新しいようになりました。
古いものは古いなりに光ります。
その方がおっしゃるのですね。
働いても働いてもお金は溜まりません。
その辺りにA教という宗教があるのですが、
それを信仰したらお金が溜まると聞いたので、
そこへ入ろうかと思っていたと言われるので、
「いやいや。そんなところへ入ったら、余計貧乏になります。
なぜかというと、信仰したら必ずお金をあげなくてはいけないから、
出した分だけ貧乏になります」と言ったのです。
「これでお金が溜まりますか」と聞かれるので、「お金がいっぱい溜まります」
と言って帰ってきました。
その後、一年経ってから再びそこへ行きますと、
きちんと背広を着てネクタイを締めてパリッとした方が迎えに来てくれました。
「あなたは初めてですか」と尋ねると、
「いや私はあの貧乏の紙屋です」と言われるので、びっくりしました。
あれから紙が売れて、二千枚綴じた半紙を壁の土間から座敷まで山のように積んであったのが忽ちに売れて、
注文に追いつかず、もう一年先までの注文がきているということです。
あの時、紙を安くたくさん買っておけば良かったと思うぐらい、それほど
売れっ放しになっているのですね。
主人いわく、「今度は紙の値段を高くして下さい」と、私は「知りません」と答えました。
この前の時、ご近所に金を見せに行かれたおばあちゃんが、
「先生はほんとうに福の神様ですのぅ、不思議な方です」とおっしゃいます。
これは、ご先祖様が救われ、家中が調和するからです。
光を頂いて調和しますと、身体は健康になり、商売は繁盛し、
家の中が明るくなって、幸せが訪れます。
~ 感謝・合掌 ~