メタエンジニアの眼シリーズ(124)
TITLE: 「2025年までに世界を変える」(その2)
書籍名;「地球全体を幸福にする経済学」 [2009]
著者;徐 ジェフリー・サックス 発行所;早川書房
発行日;2009.7.20
引用先;文化の文明化のプロセス Converging、
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
著者は、現代の開発経済学の第1人者といわれ、国連ミレニアム・プロジェクトとコロンビア大学地球研究所のリーダーを務める。日本語では、2006年から2112年までに3冊の「地球全体を幸福にする経済学」の視点で著書が発行されている。これはその第2冊目。
1冊目と同じく、概要がカバーの裏側に示されている。
『グローバル経済が着実に成長を続ける一方、自然環境の悪化や人口爆発によって世界はますます過密になっている。このペースを放置すれば開発途上諸国での水害や病気の蔓延、貧困の激化と政情不安定を引き起こし、連鎖的に先進国の社会や経済も深刻なダメージを免れない。私たちにとって21世紀の課題は、それらの危機の有機的なつながりを正しく見定め、持続可能な開発を成しとげ、世界共通の富を保全することである。それは夢のような話ではない。ごれまでの古い対立構図を捨てて、国際協調のもと、先進国が僅かなコストを振り向けるだけで解決可能なのである。』(カバー裏)
序文は、次の文章で始まっている。
『その卓越した経験と知識にもとづき、ジェフリー・D ・サックスがここにまとめあげた世界の現状に関するレポートは、緊急性をもつと同時に、現実的な面でもはかり知れない価値をもつ。きわめて明断な分析、統合、参考資料、フィールド・マニュアル、ガイドブック、予測、そして人間を幸福にするために欠かせない基本要素への提言が簡潔にまとめられている。この本は、地球に住む六六億人の運命に責任を負わされた人びとに、こう語りかける。この数字を見よ、と。
急激に変化した。その変化はより大きく、より速くなってきている。この数十年で世界は急激に変化した。
その変化はより大きく、より速くなってきている。私たちは科学技術を通じて多くのことをなしとげてきたが、それにもかかわらず、いや、むしろそのせいでというべきか、やがて残っている資源を使いはたしてしまうだろう。い まこそ、何が起こっているのか、正確に把握しなければならない。明らかな証拠には抗えない。私たちがこの惑星を壊してしまう前に、社会と経済に関する政策を建てなおす必要がある。入類がこの先、明るい未来を手にできるかどうかは、この一回限りの賭けにかかっているのだ。』(pp.14)
さらに続けて、
『人類の経済発展に見られる大きな特徴は、幾何級数的な成長という点にある。つまり、成長をくりかえす段階で同じくらいの成長を果たすのにかかる時間はしだいに短くなるのだ。人類が従ってきた単純な命令は、本来、生物学的なものである。産めよ、増やせよ―あらゆる面において急速な増加をめざせ。より正確にいえば、この成長はロジスティック曲線を描く。幾何級数的な成長もやがて減速し、しだいに衰えてゆくが、それはひとえに、環境から来る制限のせいなのだ。』(pp.15)
確かに、「人類が従ってきた単純な命令は、本来、生物学的なものである」のだが、なぜヒト族だけが、この命令が強くなってしまったのだろうか。
かつてのケネディ大統領の演説を引用して、
『ケネディの演説は何よりも、一見和解しがたいと思える敵とも協力できるとアメリカ国民に強く訴えることで歴史を変えた。ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフはこの演説を、フランクリン・ル ーズヴェルト以来の歴代アメリカ大統領による声明のなかで最高のものと評価し、核実験禁止条約についてケネディと交渉する意思があると表明した。六週間後、モスクワで部分的核実験禁止条約が締結されソ連とアメリカは暫定協定を交わした。これがきっかけで、やがて冷戦そのものが終罵を迎え、ロシアおよびソビエト連邦下の一四の国家が主権国家として独立を果たす結果につながったのである。』(pp.32)
「一見和解しがたいと思える敵とも協力できるとアメリカ国民に強く訴えることで歴史を変えることができる」とは、著者がまさに主張していることだ。
貧困地域の経済発展のための戦力としては、次の様に述べている。
『新しいテクノロジーを活用しようとするとき、経済が乗り越えるべきハードルが四つある。このハードルを理解しなければ、地域ごとに異なる活用法も含めた経済発展に関するさまざまな謎は解き明かせない。実際、この四つのハードルを認識し、適切に対処することによって初めて、国家規模の政策も効果を発揮する。その結果、国家単位の経済成長に加速がつき、地球に役立つ先端技術もますます発展するはずである。』(pp.282)
何よりもまず、ほんの少しの貯蓄とそれらを含む社会への投資が、始まりだとしている。そこから、「開発の梯子をのぼる」ことが始まるというわけである。
『開発の梯子を上る
現実に経済がどのように発展していくのかを知るために、経済成長の基本となる四つの段階を見ておくのもいいだろう。この段階をーつ上がるごとに、収入と開発の水準はより高くなる。この四段階は、自給自足経済、商業経済、新興市場経済、テクノロジー経済の順に進んでいく。段階が進むにつれて、福祉の水準と一人あたりの資本レベルは上昇する。
まず「自給自足経済」から始まる。この経済の特徴は、農業生産性が低いこと、公益事業やインフラ整備が十分とはいえないこと、輸出の量が少なく、その内容も狭い範囲の一次農産物(園芸品、原綿、毛糸など)に限られることである。生活形態はほぼ自給自足で、それ以下のこともある。収入のほとんどを生計のために費やすので、貯蓄をする余裕はほとんどない。個人は貯蓄ができないので、 民間投資はほんの少しか、あるいはまったくない。』(pp.284-5)
企業が進むべき道としては、次のようにある。
『企業の進むべき道には三つの方向がある。第一に、協力の一環としてミレニアム・プロジェクトに同意すること。第二に、創造性を発揮して、その企業ならではの技術、ネットワーク、専門知識でどのように貢献できるかを考えること。このプロセスは一つの発見であり、これれによって企業は世界各地で目の前の問題 に取り組んでいる人びとと足並みをそろえることができる。第三に、企業は、それまで足を踏み入れたことのない領域で働くことを覚悟しなければならない。マリ、 マラウイ、、タジキスタン、ボリビアなどで事業を開始しても、最初は利益がないだろう。だが、同じ志をもつ他の企業と提携して新たな土地に進出した場合、それほど大きな損失もないはずだ。ミレニアム・ ビレッジ・プロジェクトやこれに類したプロジェクトは、企業ならでは の役割を果たすのに向いていて、その初期には大きな力になれるジャンルである。』(pp.433)
「同じ志をもつ他の企業と提携して新たな土地に進出する」ことが、第1歩というわけの様だ。単独ではリスクが大きすぎる。
そして、政府と企業以外の非政府活動への期待を示している。
あとがきでは、最終的な提案事項として次の4つを上げている。
『本書で提案される解決策には、たとえば次のようなものがあります。
・科学的なテクノロジーを開発し、規制をとりいれて、持続可能なシステムを構築する。
・ 医療や女子教育の充実など、積極的な介入により出生率を低下させる。
・豊かな国がわずかな金銭的援助をすれば、貧困国は貧困の罵から脱出できる。
・その一歩が踏み出せずに迷うときは、ミレニアム・プロジェクトをもう一度見直そう。
世界が協力すれば、問題はけっして解決不能ではないのです。この本は私たちに大きな希望を抱か
せてくれます。ミレニアム・プロミスの実現に向けて、できることからまず始めようではありませんか。』(pp.459)
このような流れの中で、アメリカ国民はトランプを大統領に選び、America Firstの道を突き進み始めた。どちらが、最終結果を出すのだろうか。
TITLE: 「2025年までに世界を変える」(その2)
書籍名;「地球全体を幸福にする経済学」 [2009]
著者;徐 ジェフリー・サックス 発行所;早川書房
発行日;2009.7.20
引用先;文化の文明化のプロセス Converging、
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
著者は、現代の開発経済学の第1人者といわれ、国連ミレニアム・プロジェクトとコロンビア大学地球研究所のリーダーを務める。日本語では、2006年から2112年までに3冊の「地球全体を幸福にする経済学」の視点で著書が発行されている。これはその第2冊目。
1冊目と同じく、概要がカバーの裏側に示されている。
『グローバル経済が着実に成長を続ける一方、自然環境の悪化や人口爆発によって世界はますます過密になっている。このペースを放置すれば開発途上諸国での水害や病気の蔓延、貧困の激化と政情不安定を引き起こし、連鎖的に先進国の社会や経済も深刻なダメージを免れない。私たちにとって21世紀の課題は、それらの危機の有機的なつながりを正しく見定め、持続可能な開発を成しとげ、世界共通の富を保全することである。それは夢のような話ではない。ごれまでの古い対立構図を捨てて、国際協調のもと、先進国が僅かなコストを振り向けるだけで解決可能なのである。』(カバー裏)
序文は、次の文章で始まっている。
『その卓越した経験と知識にもとづき、ジェフリー・D ・サックスがここにまとめあげた世界の現状に関するレポートは、緊急性をもつと同時に、現実的な面でもはかり知れない価値をもつ。きわめて明断な分析、統合、参考資料、フィールド・マニュアル、ガイドブック、予測、そして人間を幸福にするために欠かせない基本要素への提言が簡潔にまとめられている。この本は、地球に住む六六億人の運命に責任を負わされた人びとに、こう語りかける。この数字を見よ、と。
急激に変化した。その変化はより大きく、より速くなってきている。この数十年で世界は急激に変化した。
その変化はより大きく、より速くなってきている。私たちは科学技術を通じて多くのことをなしとげてきたが、それにもかかわらず、いや、むしろそのせいでというべきか、やがて残っている資源を使いはたしてしまうだろう。い まこそ、何が起こっているのか、正確に把握しなければならない。明らかな証拠には抗えない。私たちがこの惑星を壊してしまう前に、社会と経済に関する政策を建てなおす必要がある。入類がこの先、明るい未来を手にできるかどうかは、この一回限りの賭けにかかっているのだ。』(pp.14)
さらに続けて、
『人類の経済発展に見られる大きな特徴は、幾何級数的な成長という点にある。つまり、成長をくりかえす段階で同じくらいの成長を果たすのにかかる時間はしだいに短くなるのだ。人類が従ってきた単純な命令は、本来、生物学的なものである。産めよ、増やせよ―あらゆる面において急速な増加をめざせ。より正確にいえば、この成長はロジスティック曲線を描く。幾何級数的な成長もやがて減速し、しだいに衰えてゆくが、それはひとえに、環境から来る制限のせいなのだ。』(pp.15)
確かに、「人類が従ってきた単純な命令は、本来、生物学的なものである」のだが、なぜヒト族だけが、この命令が強くなってしまったのだろうか。
かつてのケネディ大統領の演説を引用して、
『ケネディの演説は何よりも、一見和解しがたいと思える敵とも協力できるとアメリカ国民に強く訴えることで歴史を変えた。ソ連の指導者ニキータ・フルシチョフはこの演説を、フランクリン・ル ーズヴェルト以来の歴代アメリカ大統領による声明のなかで最高のものと評価し、核実験禁止条約についてケネディと交渉する意思があると表明した。六週間後、モスクワで部分的核実験禁止条約が締結されソ連とアメリカは暫定協定を交わした。これがきっかけで、やがて冷戦そのものが終罵を迎え、ロシアおよびソビエト連邦下の一四の国家が主権国家として独立を果たす結果につながったのである。』(pp.32)
「一見和解しがたいと思える敵とも協力できるとアメリカ国民に強く訴えることで歴史を変えることができる」とは、著者がまさに主張していることだ。
貧困地域の経済発展のための戦力としては、次の様に述べている。
『新しいテクノロジーを活用しようとするとき、経済が乗り越えるべきハードルが四つある。このハードルを理解しなければ、地域ごとに異なる活用法も含めた経済発展に関するさまざまな謎は解き明かせない。実際、この四つのハードルを認識し、適切に対処することによって初めて、国家規模の政策も効果を発揮する。その結果、国家単位の経済成長に加速がつき、地球に役立つ先端技術もますます発展するはずである。』(pp.282)
何よりもまず、ほんの少しの貯蓄とそれらを含む社会への投資が、始まりだとしている。そこから、「開発の梯子をのぼる」ことが始まるというわけである。
『開発の梯子を上る
現実に経済がどのように発展していくのかを知るために、経済成長の基本となる四つの段階を見ておくのもいいだろう。この段階をーつ上がるごとに、収入と開発の水準はより高くなる。この四段階は、自給自足経済、商業経済、新興市場経済、テクノロジー経済の順に進んでいく。段階が進むにつれて、福祉の水準と一人あたりの資本レベルは上昇する。
まず「自給自足経済」から始まる。この経済の特徴は、農業生産性が低いこと、公益事業やインフラ整備が十分とはいえないこと、輸出の量が少なく、その内容も狭い範囲の一次農産物(園芸品、原綿、毛糸など)に限られることである。生活形態はほぼ自給自足で、それ以下のこともある。収入のほとんどを生計のために費やすので、貯蓄をする余裕はほとんどない。個人は貯蓄ができないので、 民間投資はほんの少しか、あるいはまったくない。』(pp.284-5)
企業が進むべき道としては、次のようにある。
『企業の進むべき道には三つの方向がある。第一に、協力の一環としてミレニアム・プロジェクトに同意すること。第二に、創造性を発揮して、その企業ならではの技術、ネットワーク、専門知識でどのように貢献できるかを考えること。このプロセスは一つの発見であり、これれによって企業は世界各地で目の前の問題 に取り組んでいる人びとと足並みをそろえることができる。第三に、企業は、それまで足を踏み入れたことのない領域で働くことを覚悟しなければならない。マリ、 マラウイ、、タジキスタン、ボリビアなどで事業を開始しても、最初は利益がないだろう。だが、同じ志をもつ他の企業と提携して新たな土地に進出した場合、それほど大きな損失もないはずだ。ミレニアム・ ビレッジ・プロジェクトやこれに類したプロジェクトは、企業ならでは の役割を果たすのに向いていて、その初期には大きな力になれるジャンルである。』(pp.433)
「同じ志をもつ他の企業と提携して新たな土地に進出する」ことが、第1歩というわけの様だ。単独ではリスクが大きすぎる。
そして、政府と企業以外の非政府活動への期待を示している。
あとがきでは、最終的な提案事項として次の4つを上げている。
『本書で提案される解決策には、たとえば次のようなものがあります。
・科学的なテクノロジーを開発し、規制をとりいれて、持続可能なシステムを構築する。
・ 医療や女子教育の充実など、積極的な介入により出生率を低下させる。
・豊かな国がわずかな金銭的援助をすれば、貧困国は貧困の罵から脱出できる。
・その一歩が踏み出せずに迷うときは、ミレニアム・プロジェクトをもう一度見直そう。
世界が協力すれば、問題はけっして解決不能ではないのです。この本は私たちに大きな希望を抱か
せてくれます。ミレニアム・プロミスの実現に向けて、できることからまず始めようではありませんか。』(pp.459)
このような流れの中で、アメリカ国民はトランプを大統領に選び、America Firstの道を突き進み始めた。どちらが、最終結果を出すのだろうか。
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