ささやかな幸せ

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『知らなかった、ぼくらの戦争』

2017-07-18 22:14:41 | 
『知らなかった、ぼくらの戦争』アーサー・ビナード編著 小学館
 アメリカ出身の詩人アーサー・ビナード氏(1967年生まれ)が、日本人の太平洋戦争体験者たちを訪ね歩き、戦争の実態を探る。登場する語り手は、真珠湾攻撃に参加したゼロ戦の元パイロット、「毒ガス島」で働いた元女子学徒、戦後GHQで働いた元事務員など、実にさまざま。日本人以上に日本社会に詳しいビナード氏が、自身の受けたアメリカの教育とも照らし合わせながら戦争に対する考察を深める。日本民間放送連盟賞・2016年番組部門[ラジオ報道番組]最優秀賞を受賞した、文化放送「アーサー・ビナード『探しています』」を採録して再構成した書籍。
 まず、ビナード氏が日本で「戦後〇〇年」という表現に違和感を覚えたところに驚いた。日本では戦後と言えば、第二次世界大戦から数えるが、アメリカでは、第二次世界大戦の他に朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争とあり、「戦後って、いつの戦争のこと?」となると言う。そう言われればそうなのだが、アメリカって自国以外で戦争をしすぎ・・・。
 そして、知らなかったことがいっぱい。真珠湾攻撃では、撃沈されたら困る航空母艦は全て前もって避難されており、アメリカの宣戦布告の口実に使われたのではとか。軍医が重傷者ではなく次に使える人間を先に診て治療するとか。原爆で戦争が終わったと言われているが、原爆後も爆撃されたのはなぜ?とか。模擬爆弾パンプキンの存在とか。日本兵が食べ物を持っている同じ日本兵を殺し食べ物を奪うとか。
 ラジオが元になっているので、話が短いためにもう少し話を聞きたいという気持ちはある。ビナード氏と話し手が一緒に写っている写真の下に取材日の記載があるが、その横に〇〇年〇月永眠という記載の写真も多くあり、よく話してくださったと思う。
 最後の高畑勲氏(「火垂るの墓」などアニメ作家)との対談で、被害だけでなく加害にも言及するべきだとか、戦場での被害(南方での兵士の餓死やサイパンでのバンザイ突撃など)を知るべきとか、植民地支配時代の日本人が現地の人を無意識に虐げていたことを描きたいとか、日本の平和は沖縄の犠牲で成り立っているとかが出てくる。個々の物語が対談によってつながり、まとめになっていると思う。
 戦後がもっともっと続くようにしなくてはいけないと思う。
 まとまりのない感想になってしまったが、私の中では読むべき一冊。
コメント
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