『橋本治のかけこみ人生相談』『銭湯図解』

『橋本治のかけこみ人生相談』　橋本治　幻冬舎文庫
　橋本流の謎解きと意外な処方に、生きる気力がわいてくる。壁にぶつかる人生も、たまには悪くないのかも。
　お悩みに橋本治さんが答えるのだが、橋本治は賢いなー。私なら何と答えるだろうかという相談にズバッと言葉にして答えるのだ。「コンプレックスで胸をはれない」のではなく「胸をはれないから、コンプレックスにつぶされる」「合うか合わないか」ではなく「合わせることができるか、できないか」「好きになるためにはある程度の時間が必要」そうそう、そうだよねと文を読んで思うのだ。
　根底には橋本治さんの温かいまなざしがある。自分の幸福を考えていいのだと。

『銭湯図解』　塩谷歩波　中央公論新社
　杉湯番頭兼イラストレーターで設計事務所出身の著者が、建築の図法（アイソメトリック）を用い、銭湯の建物内部を精密な俯瞰図で描く「銭湯図解」。
　味のあるイラストで見ていて楽しい。また、銭湯への愛を感じた。サウナの入り方など、銭湯初心者にもわかりやすく銭湯の入り方などをレクチャーしてくれるのもうれしい。子どもが小さい時、西村繁雄さんの『おふろやさん』（福音館書店）の絵本にはまり、家族で銭湯によく行っていたことを思い出した。絵本の真似をして、お風呂から上がる時に男湯に向かって「お父さん、出るよー」と言うのが子どもが好きだったのだ。夫は、女湯から聞こえる子どもの「お父さ～ん」の声がかわいくて、うれしかったとよく言っていたな。