ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『琥珀の夏』『解毒』

2021-12-23 23:50:53 | 
『琥珀の夏』 辻村深月 文藝春秋
 かつてカルトと批判された〈ミライの学校〉の敷地から発見された子どもの白骨死体。弁護士の法子は、遺体が自分の知る少女のものではないかと胸騒ぎをおぼえる。小学生の頃に参加した〈ミライの学校〉の夏合宿。そこには自主性を育てるために親と離れて共同生活を送る子どもたちがいて、学校ではうまくやれない法子も、合宿では「ずっと友達」と言ってくれる少女に出会えたのだった。もし、あの子が死んでいたのだとしたら……。
 グイグイ読ませる。団体に子どもを入れたのは大人。子どもは、大人なしには生きてはいけず、大人に従うしかない。そして、大人に翻弄されるのは子供なのだ。真相が露わになり、大人が子供を利用したり、本能がむき出しになるのが、怖い。違和感が徐々に募っていく話の運びはさすが。
 ミカが親に会いたい気持ちで泉に絵の具を流す場面が、美しく、切実で辛かった。

『解毒 エホバの証人の洗脳から脱出したある女性の手記』 坂根真実 角川書店
 物心がついたころには家族ぐるみでエホバの証人に入信していた。エホバの教育を受けて育ち、21歳でエホバ信者と結婚するがDVに苦しみ離婚。その後、エホバではタブー中のタブーである再婚をしたことで「排斥」という処分を受け、家族と引き裂かれることに。2度目の結婚でもDVを受け、離婚。ストレスでアトピー性皮膚炎を発症し入院。それでも洗脳が解けず一人で集会に通い続ける。しかしあることをきっかけに洗脳が解け、アイデンティティを取り戻していく。
 図らずもカルトの本を読む。カルトの仕組みや依存からの脱却など勉強になった。子ども時代からカルトの教義にしばられ、さまざまな考え方を奪うのは怖いと思った。逃げ道が思いつかないのだから。
 最後のカルトが解ける場面は、圧巻だった。いい先生と巡り合えてよかったと思う。「子どもは自分が置かれている状況が壮絶だったとしても、子ども時代にそれを理解することが難しい」けど、「今の時代ヘンな家庭は多くあるので成育歴を深刻にとらえなくてよい」という先生、最高。わかりやすく説明してくれるので、機能不全家庭の子どもが大人の顔色をうかがう理由など理解ができた。
 作者の「他人と社会は変わらない。変えられるのは自分だけ。親や社会を恨んでも自分の人格が歪むだけ」と言えるようになった強さが素晴らしい。
 
コメント
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