『滅びの前のシャングリラ』『英語独習法』

『滅びの前のシャングリラ』　凪良ゆう　中央公論新社
　「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う。
　元ヤンキーの静香さんが最高にイケている。いじめられっ子の友樹、ヤクザの信士も繊細で優しい。荒れた世の中を生き抜くために盗みもするが、思いやりを持っていることに安堵する。殺伐とした世の中に、頑張っている人がいることが嬉しい。
　世界が滅びる時に、どう生きるのかで、個人が試される。きれいごとだけでは生きられない中、私は、どう生きるだろうか？

『英語独習法』　今井むつみ　岩波新書
　英語の達人をめざすなら、類義語との違い、構文や文脈、共起語などの知識に支えられた高い語彙力が不可欠だ。記憶や学習のしくみを考えれば、多読や多聴は語彙力向上には向かない。語彙全体をシステムとして考え、日本語と英語の違いを自分で探究するのが合理的な勉強法なのだ。オンラインのコーパスや辞書を利用する実践的方法を紹介。
　おもしろかったというか、目からウロコ。注意しているつもりでも、予期しないものは見逃してしまうことが多いとか。子どもによく言われる「都合のいいところしか聞こえていないな」は、当たり前のことなんだ。
　「努力もせず時間もかけずにプロの英語を習得できない。」真っ当だが、楽しようと思いがちの私には、改めて思う。やっぱり、勉強しないと英語はできないよね。
　英語と日本語のスキーマ（認知心理学での枠組みとなる知識）のずれがおもしろかった。具体例を示すので、わかりやすかった。
　「大事なのは内容。発音・文法を完璧に目指すより割り切る」以前、海外旅行の添乗員の発音がめちゃめちゃカタカナ英語で驚いたことがある。でも、「そっか、通じりゃいいのだ」と思い、英語の発音がよくないといけないというこだわりから抜けたような気持になった。
　具体的にどうすればよいかを書いており、いいと思う。しかし、私には英語にかける覚悟がないので、実践はしない。