『スキマワラシ』

『スキマワラシ』　恩田陸　集英社
　古道具店を営む兄と、ときおり古い物に秘められた“記憶”が見える弟。彼らは亡き両親の面影を追って、古い「タイル」を探していた。ある日、ふたりはビルの解体現場で目撃された少女の噂を耳にする。白いワンピースに、麦わら帽子。廃ビルに現れる都市伝説の“少女”とは?
　読んでいて頭に浮かんだのは、キリコの絵「街の神秘と憂愁」。通りを女の子が走って輪回しをしている絵。それから、ハナコの作品の説明は、六甲ミーツアートで芸術作品を見ているような気持になった。本作は、作品が目に浮かぶような印象だ。そして、爽やかな草原の風を感じる。
　しかし、何だろ。いろいろな謎は解決されるものもあるし、未解決のまま読者に託されるものもある。煙に巻かれて終わるような、なんとも不思議な味わい。