スコッチ(沖 雅也)再登場の翌週は、後にロッキー(木之元 亮)の妻、そして一係のマミー刑事となる七曲署交通課婦警=早瀬令子(長谷直美)の初登場エピソード。'77年秋の改編期スペシャル第2弾ってワケです。
☆第275話『迷路』(1977.11.4.OA/脚本=小川 英&中村勝行/監督=木下 亮)
マンションの一室で強盗殺人事件が発生。捜査に当たったボン(宮内 淳)&ロッキー(木之元 亮)は、マンションの表で駐車違反取締りのマーキングを発見。そこにチョークで書かれた時刻は、ちょうど犯行時間と重なっている!
つまり違反切符を切られたドライバーの中に犯人がいるかも知れず、ボン&ロッキーは交通課に協力を依頼。当日のチェックに当たっていた早瀬令子婦警(長谷直美)と一緒に未出頭のドライバーたちを調べることになります。
ところが鼻っ柱の強い令子は必要以上に交通課の業務を優先し、ボンをイライラさせます。「キミね、これは殺人事件の捜査なんだよ?」と急かすボンに、交通事故による死亡者数は殺人被害者数の約5倍いるんだと反論する令子。
「安全運転を守らないで人を死なせるのも、拳銃で人を死なせるのも、殺人には変わりないんです!」
確かに正論ではあるんだけど、だからって頭から反抗的な令子の態度には、ちょっと共感しづらいものがあり、いまいち魅力が感じられません。彼女が捜査課や殺人捜査に対する不信感なり、対抗意識なりを強く持つ理由を、何か具体的に設定すべきだったかも?
まぁ、後に令子は自ら志願して捜査一係に転属しますから、実は捜査課の仕事に対する強い憧れとコンプレックスを抱いていた……と、脳内補完しておきましょう。
かくも早瀬令子婦警の好感度はイマイチながら、全くソリが合わないボンと令子の傍らで、あくまでマイペースな毛むくじゃら人間=ロッキーというトリオ漫才の楽しさは新鮮で、後のマミーとボギー(世良公則)、ブルース(又野誠治)やマイコン(石原良純)らとの絡みに通じるものがあります。
特に、ただでさえコンパクトなミニパトの後部座席に、180cm超の大男2人がすし詰めになりながら移動し、容疑者の大型トラックを追跡してた筈がいつの間にか追いかけられ、あえなく横転したりするアクションもユニークで、これは秋の改編期スペシャルに相応しい回心の仕上がり。ロッキー登場から辛気くさいエピソードばかり続いて来ただけに、当時も観てて嬉しかった記憶があります。
さて、捜査そのものは空振り続きで行き詰まり、ボンとロッキーは諦めムードなんだけど、マンションからちょっと離れた場所に車のスリップ痕を見つけた令子が、独自に捜査を進めていきます。この鋭い着眼と探求心に、やがて一係の敏腕刑事=マミーとなる素質、その片鱗が伺えます。
「ただスリップの跡があったというだけで、交通課の婦警はその車に疑問を持った。それなのにお前たちは一体なんだ? それで一係のデカだと胸を張れるか?」
ボス(石原裕次郎)にどやされ、発奮したボン&ロッキーは再び令子に協力を求めますが、彼女はあくまで交通違反の捜査をしてるだけで、殺人事件に無関心な姿勢は変わりません。
「交通課の仕事が重要なのは解るけどね、交通事故の大半は過失だ。1回きりのもんだ。だけど殺人犯はね、ほっとけばまた人を殺す。何やるか分かんないだよ! それでもキミは交通課の仕事を優先させようってのか!?」
「そうです。私は交通課の人間なんですから」
ボンの必死の説得にも耳を貸さず、令子は単独でスリップ痕の車を調べ上げ、それが思いがけず強盗殺人の真犯人にたどり着き、口封じに殺されそうになったところを、結局ボン&ロッキーに救われることになります。
そんな危険も伴う捜査課の仕事がいかに大変か、身をもって知った令子は考え方を改め、最後にはボン&ロッキーをお礼の食事に誘い、ゴリさん(竜 雷太)をイジケさせるという流れになりますw
実は当初、令子をゴリさんとくっつける構想が制作陣にはあったそうです。けど、実際にゴリさんの恋人となった道代(武原英子)や晴子(水沢アキ)は、じゃじゃ馬の令子とはかけ離れた従順キャラ。ゴリさん&令子というカップルはあまりにイメージしづらく、初期プランは自然消滅する運びとなりました。
つまり後に夫となるロッキーは、本エピソードの時点じゃ全く令子の眼中に無かったワケです。剛たつひとの人質にされたり拳銃恐怖症をこじらせたりと、ダサい姿しか描いてもらえない当時のロッキーじゃ、まぁ仕方ありませんw
長谷直美さんは当時21歳。ヒロイン役でレギュラー出演したブレイク作『俺たちの朝』を終えたばかりで、翌年には『大追跡』でスコッチ=沖雅也さんと共演する、その狭間の『太陽にほえろ!』セミレギュラー入りでした。
私は『俺たちの朝』を観てなかったもんで、長谷さんのことは『太陽~』で初めて知りましたが、当時の注目度はかなりのもんで、本エピソードも大々的にPRされてたのをよく憶えてます。
以来、早瀬令子はセミレギュラーとして活躍、'80年にロッキーと結婚して双子を産み、ロッキー殉職後の'83年に「マミー刑事」として一係に転属。以後、'87年の『太陽にほえろ!PART2』最終回までレギュラーを務めますから足掛け10年、途中加入のキャラとしては最も長いご出演となりました。
私は東京で大学浪人してた時期('84年頃)に『太陽~』のゲリラロケに出くわし、長谷さんに握手して頂いた思い出があります。ただの自慢ですw
背後からいきなり声をかけたもんでビックリされてたけど、すぐに快く対応して下さり、まさにイメージ通りの気さくで明るい方です。