ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『あさひが丘の大統領』#25

2020-11-28 00:00:02 | 探偵・青春・アクションドラマ










 
前回のロッキー刑事=木之元亮さんに続いて、今回は長さん=下川辰平さんが『太陽にほえろ!』撮影の合間を縫って応援ゲスト出演!

VTRでサクサク撮れちゃう昨今の連ドラと違って、フィルム作品の『太陽~』や『あさひが丘~』は撮影にとても時間がかかる上、10話やそこらじゃ終わらないからスケジュールが非常にタイト。ゆえに掛け持ち出演は相当な激務だった筈で、これぞまさに「友情出演」です。

『太陽~』マニアとしては、長さんがボンを「先生」って呼ぶたびにクスッと笑わずにいられませんw 長年お世話になった大先輩に「先生」呼ばわりされちゃう宮内さんも、きっとこそばゆい思いをされてたんじゃないでしょうか?

そういう楽屋オチ的なことを抜きにしても、下川さんはじめキャスト陣の真摯な熱演により、これは泣けるエピソードになりました。

(なお、放映日が前回#24から1ヶ月以上も空いてるのは、ナイター中継による順延に加え、諸事情につき次の#26が先に放映されたから。DVDでは制作順に収録されてるので、ここでもそれに準じます)


☆第25話『生徒の親の再婚問題!』

(1980.5.21.OA/脚本=奥村俊雄/監督=土屋統吾郎)

ラグビー部の内田(小野沢 淳)が、チームメイトで仲のいい松野(星野浩司)がタバコを持ってることを竹内教頭(高城淳一)に報告したもんだから驚いた!

「停学だ。松野は停学です」

そう言ってニンマリ笑う竹内教頭の顔がホントいやらしいw ドSで小賢しい中間管理職を演じさせたら高城淳一さんの右に出る者はいませんw

内田はどうも、離れて暮らす父親=洋平(下川辰平)から「再婚したい人がいるんだ」と言われて以来、様子がおかしい。いや、そう聞いて最初は喜んだのに、父の再婚したい相手=雪江(星野晶子)が同じあさひが丘学園で風紀委員長を務める山本夏子(一ノ瀬康子)の母親だと知った途端、おかしくなったのでした。

人一倍モラルにうるさく、他人にも自分にも厳しすぎる夏子は、能天気なラグビー部の連中を特に嫌っており、だから内田たちにとっても誰より煙たい存在。しかも同学年なのに誕生日がわずかに夏子の方が早く、内田は彼女の義弟になってしまう。そりゃあイヤでしょう。

だけど、それがなぜ、友達の松野を教頭に売るような行動に繋がったのか? そもそも松野はイキがってタバコを持ってるだけで、吸ってたワケじゃない。その事実を内田は知っているのに。

原因はどうやら夏子にあるらしく、涼子先生(片平なぎさ)は彼女の潔癖さに理解を示しつつ、その真意を探ります。

「あなたぐらいの年頃にはそういう時ってあるし、もちろん私にだってそういう時期があったわ。でもね、自分に対しても他人に対しても、あんまりあなたが厳しすぎたら、他の生徒たちから孤立しやしないかって、私はそれが心配なの」

「……私、独りでも生きられます。私、寂しいなんて思ったことありません!」

そんな思いをことさら強調する夏子は、再婚すなわち、たった一人の家族であるお母さんを取られるみたいで怖いのかも知れません。

一方、回りくどいことが苦手なハンソク先生(宮内 淳)は、ストレートに内田から本音を聞き出そうとします。

「どうしたんだよ? 松野はお前の友達だろ? みんな仲間だろうが」

「……オレ、どうしたらいいのか……」

どうやら内田は夏子から、再婚を受け入れるにあたっての条件を突きつけられたようです。その条件とは、ラグビー部の連中とはもう付き合わないこと、そして夏子が言う通りの真面目な生活を送ること。だから内田は彼女に言われるまま、タバコの件を教頭に報告したのでした。

「オレが、オレがそれさえ守れば、親父は結婚できるんだよ!」

妻を亡くして以来15年、洋平は苦労して息子を男手一つで育てて来た。洋平はどんな時でも息子を信じ、味方でいてくれた。内田はそんな父親を心から愛してるのでした。

「オレ、今まで親父の為に何もしてやれなかったんだ。その親父が、15年ぶりに好きな人が出来てあんなに喜んでるんだよ。オレ、親父に幸せになってもらいたいんだよ!」

「内田……」

「それが……それがこんな事になるなんて……オレ、どうしたらいいんだよ?!」

悩みに悩んだ挙げ句、内田は教頭先生に「タバコの件はオレの思い違いでした」と前言撤回するんだけど、それが夏子をますます激怒させちゃいます。

「やっぱりあなたはあの連中と同じよ! あなたのお父さんだって……」

「いや、親父は違うんだよ! いい男なんだ! キミだって一度会ってみれば……」

「会わなくたって分かるわよ! あなたを見てれば分かる。だらしなくていい加減な人よ!」

「なに?」

「そんな人と母を結婚させるワケにはいかないわ。あなたのお父さんなんか、私の母が好きになるワケないのよ!」

「なに言ってんだ! なんで親父をそんな風に言うんだっ?!」

逆上した内田は夏子にビンタしてしまい、事態はますます悪化。見かねたハンソク先生が夏子の説得に当たるんだけど、彼女が長さんの悪口ばかり言うもんだから内田以上に激怒しちゃいますw

「お前、内田の親父さんに会ってもいないんだろが!」

「会わなくたって分かります! 内田くん、私に暴力を振るいました。内田くんのお父さんだってそういう人です!」

「甘ったれんなっ! お前な、自分のお袋も信じられんのか?」

「えっ……」

「お前のお袋さんは、内田の親父さんが好きで、親父さんを信じて一緒になろうとしてるんじゃないか! だったらどうして信じてやらないんだ?!」

「…………」

「お袋さんは、今まで一生懸命お前を育てて、いま幸せになろうとしてるんじゃないか。どうしてそれを解ってやろうとしないんだよ? いい歳をして甘ったれんなっ!!」

さすがは主人公! ハンソク先生の言葉は夏子にガツン!と響いたみたいです。

そう、夏子も母=雪江のことを心から愛してる。親に幸せになって欲しいっていう気持ちは内田とまったく同じなんです。なのに雪江を独占したい気持ちが勝ってしまうのは、ハンソク先生の言うとおり彼女の甘えに過ぎません。

だけど、気づくのが遅かった。お互い我が子の気持ちを優先したい洋平と雪江は、話し合って再婚を諦めるという結論を出してしまいました。

「そうですか……やめるんですか……」

洋平が宿泊する旅館を訪ね、それを聞いたハンソク先生はとても残念そう。初対面の筈なのに他人事とは思えない様子ですw

「知りませんでした……息子があんなに苦しんでいたなんて……それなのに結婚だなんて」

そんな二人のやり取りを、部屋の外で夏子が聞いています。洋平がどんな人なのか自分の眼で確かめる為に、彼女も此処を訪ねて来たのでした。

「あの人は本当にいい人なんです。優しくて、思いやりがあって……この歳になって、やっと巡り会えた人だっていうのに……つらいです。つらいですよ……でも仕方ありません」

「長さん……いや、内田さん」

「ボン……いや、先生」

最後の部分には私のアドリブが混入してますけどw、この会話が夏子の心を大きく動かしたのは言うまでもありません。

「ボン……いや先生、いろいろお世話になりました」

「長さん……いや、内田さん……」

ハンソク先生と息子に見送られ、洋平はあさひが丘駅の改札口に向かいます。その後ろ姿に私は泣きました。長さん……いや、下川辰平さんほど背中で哀愁を語れる俳優さんはなかなかいない事でしょう。

ところが! 改札の前で洋平を待ってる人がいました。そう、夏子です。

「内田さん……」

「?」

「母を……母をよろしくお願いします!」

それだけ言って、夏子は走り去りました。こうして彼女も一歩大人に近づいたワケです。

そして例によっていつもの砂浜で、夏子はハンソク先生に問います。

「先生……お母さん、幸せになれますよね?」

「ああ、内田さんはいい人だ。幸せになれるよ、きっと」

「私……私……」

夏子が何か言おうとしたところで、涼子先生とラグビー部員たちが満面の笑顔で砂浜を走って来ます。この光景もこれまで何度見たことか!w もちろん、最後は夏子も一緒になって走ります。

とにかく、何かあれば砂浜へ行く。そしてみんなで走る。それが日テレ青春シリーズの伝統であり様式美で、そこに意味など何もありませんw

こうして文章にするとありがちなストーリーに過ぎないんだけど、下川さんが全身で滲ませる哀愁と、内田役の小野沢淳さんや夏子役の一ノ瀬康子さんの真っ直ぐな情熱が心を震わせてくれます。私はそこに「魂」を感じました。ドラマはこうあって欲しいです。

一ノ瀬康子さんは当時20歳で、片平なぎささんとは堀越学園の同級生。本作が放映された'80年には映画『きらめきの季節』で主役を張り、セクシーショットもそのプロモーションの一環で撮られたみたいです。
 

コメント (2)
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