ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『プリズム』#01~#02

2022-07-25 16:05:17 | TVドラマ全般

驚いた! やられた! 意表を突かれた! そうか、そう来たか! そう来ちゃうのか! さてどうしよう!?

2022年夏シーズン、NHK総合の火曜夜10時「ドラマ10」枠でスタートした、浅野妙子さんのオリジナル脚本による連続ドラマですよ!

杉咲花さんが主演ってことで何となく観始めて、何となく惹き込まれて、こりゃ最後まで観なきゃしょうがないかと思ってた矢先、まさかこんな展開が待っているとは!

観るのかオレは? 本当にこのドラマを最後まで観ちゃうのか!?



主人公の皐月(杉咲 花)は都内の園芸店でバイトしながら声優を目指し、養成所へも通ってるんだけど、オーディションは敗退つづき。

で、同じく声優志望でルームシェアしててバイト先まで一緒の親友=綾花(石井杏奈)が、先にアニメのオーディションに受かってしまい、嬉しいんだけど悔しい複雑な気持ち。



窮屈な故郷から抜け出したくて上京したのが本音で、声優への夢が果たして本気なのかどうか、皐月自身もよく分かってない。

そんな基本的な設定だけで、私は早くも彼女に感情移入しちゃいました。ドラマが始まってまだ3分も経ってません。

とにかく会社員になるのがイヤで映画監督を目指し、友人とライバル関係にもなった過去の私とよく似たシチュエーションだから、気持ちが痛いほど解っちゃう。

そんな皐月が、なんとなく趣味で始めたのが、オシャレな箱庭みたいなテラリウム作り。



で、作ったテラリウムをバイト先の片隅に並べて販売してみたら、それを手に取って見つめる、ちょっとイケメンな客がいた!



「買わへんのかい!」

だけどそのイケメン=陸(藤原季節)は、ガーデンプランニング会社の優秀なデザイナーであることが後に判明。ひょんなことで再会し、あれよあれよと距離が縮まり、どうやら恋愛関係になっていく模様。



あれ? これって恋愛ドラマなの? だったら私が観る理由が無くなっちゃうんだけど、そんな薄っぺらい作品とはどうしても思えない。

たとえば、カレシが別の女とキスしてる現場に、ヒロインが偶然出くわしちゃうようなのが、私にとっての薄っぺらい恋愛ドラマ。それは謎解きゲームと同じで、登場人物がその展開に合わせて動くだけの「駒」になっちゃってるドラマのこと。

この『プリズム』って作品は、そういうのとは明らかに違う。私がそれを確信したのが、次のシーン。第1話のクライマックスです。



実は皐月が中学生だった頃に両親は離婚してるんだけど、父の耕太郎(吉田栄作)は東京に住んでて、皐月は母にナイショで時おり資金援助してもらってる。

離婚の原因が耕太郎の浮気だったもんで、母は今でも彼を許してない。そして皐月も、いま耕太郎と同居してるその浮気相手とはずっと会わないようにして来た。

皐月の場合、父を許してないワケじゃない。ただ、その現在のパートナーが「男性」であることを、どう受け止めて良いやら分かんないだけ。そう、耕太郎はゲイだった! いや、正確にはバイセクシュアルって事でしょう。

で、皐月が陸と楽しくディナーしてたレストランに偶然、耕太郎がそのパートナー=信爾(岡田義徳)を連れて入ってきた!



皐月は激しく動揺し、父に気づかれないよう店を出ようとするんだけど、陸は当然ワケが分からない。

「どうしたの?」

「父なんです。離婚してて、ちょっと色々あって……」

さて、男性諸君。あなたならどうしますか? 私なら多分「あ、そうなの」って感じで皐月の意志を尊重し、親子の問題には立ち入らないようにすると思います。

ところが! なんと! この陸ってヤツは、逃げようとする皐月の腕をとり、耕太郎と信爾の席まで彼女を連れてってしまう! そして社会人らしく名刺を渡して挨拶し、こう言うんです。

「よかったら、お食事ご一緒しませんか?」

耕太郎は戸惑いつつ、断る理由も無いから受け入れる。で、耕太郎は建設業、信爾は演劇の美術デザイナーなもんで、陸や皐月と話が合うワケです。

それでも信爾は遠慮して席を立とうとするんだけど、皐月が呼び止める。

「いて下さい。いつか、お話したいと思ってました。いて下さい」

「…………」



楽しいひと時を過ごし、解散したあと、皐月は陸に言います。

「意外と、平気でした。父は父だし、あの人も悪い人じゃなかった。それが分かっただけでも良かったです」

で、それを聞いた陸は、自分のことのように嬉しそうな顔をする。なんてイイ奴なんだ!

一方、耕太郎と二人きりになった信爾は、堰を切ったように泣き崩れるんですよね。彼は彼で、耕太郎の家庭を壊してしまった罪悪感に、今までずっと苦しんで来たんでしょう。私も貰い泣きしちゃいました。岡田義徳さんの芝居がまた良いんです!

しかし、それはともかく、陸ですよ。イケメンで仕事もデキる上、あの優しさと大胆さ! 何より凄いのは、レストランで耕太郎たちと出くわした時、皐月の「ちょっと色々あって」っていう説明(?)だけで全てを察し、とっさに「逃げちゃダメだ」と判断し、すぐ行動に移した機転の利き方!

当然、こうなっちゃうワケですよ!



「誰かを好きになることは、時によってすごく難しいのに……時によっては、すごく簡単だ」

これなら納得するしかありません。そりゃ惚れない方がどうかしてる。

ただ単にステキってだけじゃない。なんだか袋小路に迷い込んで先が見えなくなってた自分を、この人なら変えてくれる!って、そりゃ思いますよね。

決して恋を描くための恋じゃない。こういう恋愛なら、皐月の成長ドラマにおいて重要な意味を持つに違いないから、私だって観てられる。もしかしたら今季のナンバー1ドラマは、これかも?

……って、その時は思ったんだけど……

つづく第2話を観て、私は冒頭に書いたとおり大きな衝撃を受けるワケです。で、第3話以降も続けて観るべきかどうか今、悩んでます。

いったい、第2話でなにが起こるのか? あなたは予想できますか? ヒントは、先程のレストラン。あの場面における陸の行動には、彼のポテンシャルを我々に見せつけるだけじゃない、もう1つの重要な意味があった!

そして第1話ラストシーンで唐突に登場する、この男! 森山未來くんですよ。見るからに胡散臭い彼が、実は重要な鍵を握ってる! ああ胡散臭い!



第2話で、声優の養成所を辞めた皐月は、テラリウム作成の才能を買われて、陸が勤めるガーデンプランニング会社の契約社員に採用されます。

だから陸とは毎日会えるワケだけど、なぜかデートには誘ってくれない。あの夜、チョメチョメしたのに!

「ワンナイトの関係ってこと? それでいいの?」

親友の綾花に言われて、皐月はこう返します。

「まあ、そういう事もあるじゃん」

杉咲花さん、いつの間にかオトナになってる! 1997年生まれで、もう24歳なんですね。多部未華子さんはそれくらいの頃『デカワンコ』をやられてましたけどw



そんなある日、皐月は祖母の七回忌で数年ぶりに帰郷します。母の梨沙子(若村麻由美)には「声優なんか諦めて早く帰って来なさい」って連呼されるし、それ以上にしつこい説教魔の大叔母が泉ピン子だったりするしw、そりゃ脱出したくもなるってもんです。

で、皐月は気づいてしまう。家族のアルバムから父=耕太郎の写真がぜんぶ剥がされてることに。ショックを受ける皐月に、梨沙子は言います。

「お母さんは、ウソつかれてたの。お父さんに騙されてたの。みんなウソだったの」

耕太郎はバイセクシュアルでしょうから、梨沙子との結婚がカモフラージュだったワケじゃなかろうと思うんだけど、妻の立場からすればそりゃ「裏切り」以外の何ものでもない。ずっと秘密にされてたことに何より傷ついたんでしょう。

けど、今でも父が好きで、頼りにもしてる皐月としては、楽しかった家族のメモリーまで否定されちゃ堪らない。そこまで元夫を恨む母の気持ちがよく解らない。

逃げるように東京へ戻った皐月は、陸にいきさつを話し、「あれが全部ウソだったとは思いたくない」と想いを吐露します。

「ウソだと思わなくていいんじゃない? そのとき楽しいって思ったなら、きっとそれはウソじゃないんだよ」

若くしてこんなことが言える陸は、やっぱり今の皐月に必要な存在なんでしょう。

「ウソとホントの境目なんて、お父さんにもきっと分からないと思う。その時間を、キミが大切だと思うなら、自分の中で大事にしていけばいい」



そんな陸に、皐月はますます惹かれて行っちゃう。そりゃもうラブラブです。幸せです。絶好調です。

ところがどっこい!

第2話の終盤。ここからが、例の衝撃シーン。鋭い読者さんならそろそろ……いや、とっくに気づかれてるかも知れないけど、私は完全に意表を突かれました。

「心が通じ合って、ひとつになれたと思った人が……突然、目の前からいなくなっちゃった事ってある?」

さっきまで皐月とチュバチュッチュしてた陸が、なぜか独りで暗い顔して、バーの店主(飯田基佑)にそんな愚痴をこぼしてる。どうやらかつての恋愛を思い出しちゃったみたいです。



「そんな話、珍しくもないでしょう? 今はこんないい時代になったけど、それでもワタシたちは堂々と腕を組んでは歩けないもんネ」

ん? 飯田さん、いつになく言葉遣いが柔らかい。そこで他の客に呼ばれて、彼はこう返事します。

「は〜い、今いくわ」

なぬ? 今いくわ? いく、わ?

そういえば随分とオシャレな店なのに、客の顔ぶれに何だか違和感がある。よく見れば男しかいない。おいちょ待てよ、もしかして……まさか?

ここで陸が、かつて同じカウンターでその「突然いなくなった」張本人であろう、恋人とデートした時のツーショットを回想するのでした。



髪は長いけど、背中がやけに広い! そして何だか胡散臭い! こ、これはもしかして……いや、間違いなく!



出たあーっ!! ついに出た、森山未來ーっ!!

じんじん、キタキタぁあああーーーっ!!!



そう、じつは陸もゲイ、あるいはバイセクシュアルだった! だからレストランで耕太郎と信爾を見たとき、一瞬で察したワケです。だから彼らの気持ちがよく解るし、皐月にも解って欲しくて咄嗟に動いたんでしょう。

そしてラスト、海外から戻って来た森山くんが、陸と再会してしまう。計らずも皐月は、母とまったく同じ立場になってしまった! さて、どうする!?



まぁ、そこはテレビ番組ですから、母の梨沙子も含めてジェンダーの複雑さを理解する方向に持っていくしか無いとは思います。

けど、あの胡散臭い森山くんがこの清らかな世界をどう掻き乱してくれるのか、それを皐月がどう乗り越えていくのか、すでに感情移入しちゃってるだけに私は見届けたい。

けどけど、男どうしがイチャイチャする場面だけは見たくない! ジェンダーうんぬん抜きにして、映像としてむさ苦しいから。胡散臭いから。髪ボサボサでヒゲ生やしてるから!

とは言いつつ、やっぱ観るしかないでしょう。してやられました。こういうどんでん返しなら大歓迎です。

そんなワケでポートレートは主役の杉咲花さんと、その親友役でいま最もおっぱいを見せるべき女優の石井杏奈さん。そして陸の妹役でこれから登場予定の、小野莉奈さん。『アルプススタンドのはしの方』で主役を演じられた女優さんです。


 

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする