ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#491

2023-09-02 16:01:23 | 刑事ドラマ'80年代

さて、七曲署「激動の1982年」の幕開けです。

その先陣を切る「スコッチ病死」は(いろんな意味でつらいから)無かったことにして、シレッと「ジプシー刑事登場」までジャンプしようかとも思ったけど、合間にこのエピソードが挟まってた! これを外すワケにはいきません。

西條刑事=ドック(神田正輝)のパートナーになりそうでならない女性キャラは何人かいたけど、中でも今回登場する外科医=白石良子(岡まゆみ)は群を抜く好感度で、おそらく女性ファンから見ても「お似合いのカップル」と認めざるを得なかったはず。

とはいえ、レビューする理由はそれだけじゃありません。七曲署に来て1年が過ぎ、初めて「この仕事ってどうなの?」「オレに向いてるの?」っていう、大きな壁にぶつかって悩むドックの心情が、介護職員になって3ヶ月経った今の私自身とめちゃくちゃリンクしてる!

このエピソードを観るのは多分4度目ぐらいだけど、今回ほど感情移入できたのは初めて。もちろん、自分が神田さんに似てるなんて勘違いするほどバカじゃない私だけど、ハリソン・フォードとは瓜二つです。




☆第491話『ドックのうわごと』(1982.1.15.OA/脚本=奥村俊男&小川 英/監督=児玉 進)

今回は冒頭からいきなりカーチェイス&GUNアクション! ドックが銀行強盗犯を川原に追い詰め、鉄橋の下で撃ち合います。



結局、ロッキー(木之元 亮)とラガー(渡辺 徹)も駆けつけて犯人はあっさり逮捕されるんだけど、自分が重大な見落としを冒した事実に気づいて、ドックは愕然とします。



すぐ後方で2人のガキンチョが無邪気に遊んでいた!

鉄橋を走る電車の轟音で声が聴こえなかったとはいえ、もし犯人の弾丸が彼らに当たっていたら……

今更ながら、自分がとんでもなく重い責任を負ってること、そういう仕事を選んでしまったことを、あらためて痛感するドック刑事なのでした。



さて、先の銃撃戦で負傷した犯人の容態を伺うため、警察病院を訪れたドックは、医大時代に親しかった同期生=白石良子と再会することになります。



明るい性格の良子さんは、いかにもドックと気が合いそう。

演じる岡まゆみさんも華があるし演技力もバッチリで、結婚までは行かずとも「ドックの恋人」としてセミレギュラー入りされるだろうって、多くの視聴者が当時思ったことでしょう。



それはともかく、ドックはせっかく入った医大を中退して警察官になったという変わり種。順当に卒業して外科医となった良子さんとは対照的な存在と言えます。

「どう、刑事になって満足?」

「うん、まあね。キミは?」

「…………」



意外にも、良子さんは表情を曇らせます。

「女が外科で生きていくっていうのは大変よ。ここに来てまだ半年だけど、正直言って疲れた……ふと、どこかに逃げ出したくなる時があるの」

「逃げ出す?」

「どうしてこんな事やってるんだろうって思うの。もっとラクで楽しい仕事だってあるじゃないかって」

「…………」



「西條さん、そんな風に思うことってある?」

「……うん、あるよ……ある。オレだって、そう思う時あるよ」

オレもある! 介護職に就いてから、毎日のようにそう思ってます。むしろドックより近い業界で働く良子さんに共感しちゃう。なんでよりによって、こんなハードな仕事をわざわざ選んだ!?(ブログが更新できない!💨)

「私、結婚でもしてみようかしら。もらってくれる? 西條さん」

「いいよ! けど、まずは1発試してからだ♪」

↑なんて返事を良子さんが望んだかどうか知る由もないけど、超がつく紳士集団「七曲署捜査一係」にうっかり着任しちゃったドックはそんなこと絶対に言えません。

「よせよ、危なく本気にするところだった」

「うふふ……」

超つまんないw 西條くんはやはり就職先を間違えたようです。



さて、七曲署管内で派出所の警官が襲撃され、拳銃を奪われる事件が発生し、凶器の鉄パイプに残った指紋から、犯人は栗山という覚醒剤中毒者だと判明します。

「栗山が?」

ドックとゴリさん(竜 雷太)が反応します。

1年前、ライフルを持った強盗犯をゴリさんが追跡し、銃撃戦の末に逮捕したんだけど、犯人の放った弾丸が運悪く通行人に命中し、その人は亡くなってしまった。

冒頭シーンにおけるドックとよく似たシチュエーションで、一歩間違えばこうなるという最悪のケース。

で、犠牲者は杉村という麻薬中毒者専門の保護司で、身寄りの無い栗山にとって心の拠り所だった人。

「栗山が拳銃を奪った目的は1つしか無い。オレを殺すことだ」

つまり、逆恨みと言うよりは八つ当たりに近い、ゴリさんへの復讐。



栗山を捜索すべくゴリさんが出て行ったあと、そのいきさつを初めて聞いた新米のラガーが喚きます。

「そんなのメチャクチャですよ! 恨むなら発砲した犯人を恨めってんだ! ドックもそう思うでしょう!?」



「当たり前なこと聞くな! こっちだって命懸けで働いてるんだ。犯人の撃った弾にまで責任持てるか!」

やたらめったら熱くなるラガーを普段は軽くあしらうドックなのに、今回は様子がおかしい。あの太地喜和子さんをメロメロにさせた山さん(露口 茂)の鋭い眼がセクシービームを放ちます。



「少なくともゴリさんが、この件でずっと苦しんで来たことだけは間違いない」

「山さん……セクシーです」

実際、露口茂さんは「こういう仕草に女性は色気を感じるんだよ」って、バリバリに「セクシー」を意識されてたそうですw

メインスタッフからも「あれほどのナルシストは見たことない」との証言が出てますw だからみんな山さんが大好きなんですよ!(いやホントに)



閑話休題。とにかくゴリさんが殺られる前に栗山を見つけるべく、覆面車に乗り込もうとしたドックを、その栗山の凶弾が襲います。



まさに危機一髪! 弾丸はドックの額をかすめ、命に別状は無いものの脳震盪を起こしたドックは、そのまま気を失うのでした。

「栗山は一係の人間を手当たり次第に狙うつもりだ!」



「ボス、ヤツは殺らなきゃ自分が殺られると思ってるんです! 危険です!」

いつぞやこのブログでご紹介した、鴻上尚史さんがエッセイに書かれてる「戦争が無くならない理由」がまさにそれ。殺らなきゃ殺られるという被害妄想。関東大震災の直後に起きた集団リンチ殺人もまさにソレでしょう。

再び閑話休題。川原での銃撃戦でガキンチョに弾丸が命中しちゃう悪夢を見たドックが目覚めると、そこは警察病院のベッドの上。そして傍らには白衣姿の良子さん。



「ずっといてくれたの?」

「うん。うなされてたみたい」



「……オレ、うわごとか何か言った?」



「……ううん、何も」

良子さんの返事に一瞬の間があったのは、きっと嘘をついてるから。悪夢を見ながらも良子さんの香りに反応したドックは、どうせ「揉ませろ」とか「しゃぶらせろ」とか言ったに違いありません。

しかしAVじゃあるまいし病室でチョメチョメは無理だから、仕方なくドックは刑事部屋へ戻り、復帰はしたけど出番が激減中のボス(石原裕次郎)に、ゴリさんを捜査から外すよう提言します。



「お前がゴリの立場だったらどうする? 手を引くか?」

「あれはゴリさんのミスじゃありません!」

「お前だったらどうするかと聞いてるんだ。手を引くか?」

「……引きます!」

「オレはそうは思わんぞ」



「手を引きますよオレは。絶対に引きます!」

「もういい。捜査を続けろ」

納得できないままドックは、亡くなった杉村保護司の墓へと向かいます。案の定、そこにはゴリさんが墓参りではなく、栗山を誘い出すために佇んでました。

「ボスに、自分なら手を引くと言いました。ボスは引かんだろうと言いました。そう言われると、そんなような気もします」

「…………」

すっかり二枚目モードに入ったゴリさんは、何も答えてくれません。



「でもオレ、解んないんです。これだけはどうしても解りません。ゴリさん、一体なにが良くて、なにが楽しくて刑事やってるんですか?」

「?」

ここで初めて、ゴリさんがドックに顔を向けました。

「ゴリさん!」

「そんな話は後だ」

それだけ言って再び捜査へと歩き出す、無口なゴリさんが二枚目にも程があります。

ゴリさんに限らずだけど、肝心なことは必ず事件が終わってから言うんですよね、二枚目のパイセンは。先に教えてくれた方が、後輩もムダな動きをしないで済むのにっていつも思うけど、まぁコレが昭和イズムってヤツです。男は黙ってサッポロビールなんです。

けど、’80年代の申し子として生まれたようなドックに、三船敏郎のマネはとても出来ません。

「疲れてるみたいね」



重い足取りでアパートに帰ってきたドックを、なんと、買い物袋を抱えた良子さんが待ってくれてました。

「……うん、少し」

そこで「そんなことないよ! 今すぐ部屋に上がって1発試そうぜ!」とは決して言わないドックも、実はやっぱり三船敏郎なんですよね。(それ誰?とかぬかすトボけた御人は今すぐ私のエアフォースから飛び降りて下さい)

「病院で、うわごと言ってなかったか?って聞いたわね」

「うん」



「言ったのよ、本当は。助けてくれって」

「!」

警察病院に務めてる良子さんだからこそ、刑事がいかにハードで危険な仕事であるか、なにも言わずとも解ってくれる。

「辞めたくなるのが普通よ」

「オレ……気に入ってたんだよね、この仕事。なぜか解んないけど、好きだった」

「…………」

「思ってみたことも無かった……オレ、怖いんだよ。向いてないのかも知れない」

「…………」

私自身も毎日そう思ってます。性格的にも体格的にも、介護職に向いてるかと言えば明らかに向いてない。

けど、100%向いてる人なんているのか? 実はみんな「自分は向いてないかも?」って思いながらやってるのかも知れない。どんな職種であれ。



三度目の閑話休題。栗山の足取りが掴めず、捜査に行き詰まった七曲署捜査一係になんと、療養中のスコッチ(沖 雅也)から電話が掛かって来ました。

1年前は元気バリバリで、例の事件も一緒に捜査してたスコッチは、栗山が潜伏しそうな場所を知っていた。それをゴリさんに尋ねられ、つい教えてしまったと言います。

「山さん。私がゴリさんなら、やはり自分で栗山の拳銃の前に立ちたい。結果がどうなろうと」



「……分かった。スコッチ、お前もカラダ大事にしろ。大事にな」

この次の回にもゲスト出演したスコッチは、そのまた次の回で吐血し、病死しちゃうのでした。



さて、すぐさま覆面車をかっ飛ばして現場に向かうドックたちですが……



時すでに遅く、栗山と相撃ちになったゴリさんは腹に銃弾を浴びてしまいました。



が、病死を控えたスコッチを差し置いて死ぬワケにもいかず、命に別状はなし。

そして栗山も軽傷で済み、麻薬患者の療養所に戻されると聞いて、ゴリさんは救急車で搬送されながら「よかった……」とつぶやきます。



「よかった? ひとつ間違えばゴリさんは死んでいたんですよ? 自分のミスでもないのに、なぜそこまで?」

「ドック。ミスであろうとなかろうと、杉村さんはあの事件で死んだんだ。オレの担当した事件で、罪のない1人の人間が死んだんだ。それはやっぱり、オレの責任なんだよ」

「…………」

「オレは、誰にも死んで欲しくないんだよ。誰にもな。そういう気持ちが無かったら、オレは1日でもデカやってらんないよ」

「…………」



「ドック、お前だって本当はそう思ってる筈だ。そうじゃなきゃ、お前なんで、医大を途中で辞めてまで、デカになったりしたんだ?」



「……ゴリさん」

そうですよね。肝心なのは、自分がその仕事を選んだときの気持ちであり、向いてるかどうかは関係ない。

私の場合、元より介護職は向いてないと自覚してたから、先方(今の職場)から誘われてもお断りしたのに、それでもなお食い下がってくれたことに感動して、つまり「誰かに必要とされてること」が無性に嬉しくて、つい「じゃあ、やってみます」って言っちゃった。

その職場があまりに人手不足で「猫の手も借りたい」状態なのは予測してたし、実際入ったら想像を超える不足ぶりなんだけどw、足りなければ足りないほど強く「必要とされる」ワケで、それがしんどくても辞めないモチベーションになってます。

だから今後、なんでオレはこんなハードな仕事してんだ?ってまた思ったら、その原点に立ち還ればいい。今回のドックみたいに。

「オレ、やっぱり刑事続けることにしたわ。自分で選んだ仕事だもんな」



「オレだって今に、ゴリさんみたいに……いや、世界一の刑事になってやるよ」

「西條さんにそれが出来るなら、私もなれるかな? 立派な外科の女医に」

「ま、ムリだろうな」

「まあ!」



これで良子さんも初心に戻ったことでしょう。

ほんと理想的なカップルだと思うのに、良子さんは第536話『死因』に再登場するだけでドックと1発試したかどうか不明のまま、フェードアウトしちゃいました。

沢口靖子パターン(演じる人が売れ過ぎたから)なのか、あるいは浅野ゆう子パターン(女性視聴者からのバッシングを避けるため)なのか知る由もないけど、少なくともこの第491話は2人をくっつける前提で創られたとしか思えません。



’76年のTBSポーラテレビ小説『絹の家』で主演デビューされ、『赤いシリーズ』など大映ドラマの常連として活躍しつつ、キッズ向け教養番組『まんがはじめて物語』で2代目お姉さん役を長年務められた岡まゆみさん。

刑事ドラマも大映の『夜明けの刑事』第99話ゲストや『秘密のデカちゃん』レギュラー出演のほか、『Gメン'75』最終回と『Gメン'82』初回ゲスト、『ララバイ刑事'92』レギュラー、『はぐれ刑事純情派』シリーズにゲスト出演5回、さらに『ハンチョウ』『相棒』『警視庁・捜査一課長』『刑事7人』『記憶捜査』等々、現在に至るまで数多く出演されてます。が、残念ながらセクシーショットはありません。


 

コメント (4)
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