ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『太陽にほえろ!』#400―2

2018-11-08 18:00:31 | 刑事ドラマ'80年代









 
東京・七曲署捜査第一係の刑事部屋に、野崎太郎=長さん(下川辰平)が悲しいお知らせを持ち帰って来ます。現金輸送車襲撃事件の際、車に同乗していた銀行員の麻田(佐々木勝彦)が、責任を取って故郷の大阪に帰ったとの事。

「そうか……此処にも犠牲者がいるんだな……」

殿下(小野寺 昭)が気の毒そうに呟きますが、そういう立場の人間こそ怪しいってのが刑事ドラマの定石ですよねw

それはさておき沖縄にいるゴリさん(竜 雷太)は、襲撃グループの主犯=手島(森 大河)と拳銃密輸組織との縁が既に切れているとの情報に、疑問を抱きます。1億円もの現金を隠し持つ手島と、取引相手=金に汚い暴力団があっさり縁を切る筈がないってワケです。

「ロッキー。少し手荒い仕事になるかも知れんぞ」

そして七曲署名物・暴力団荒らしが始まりますw いきなり事務所に乗り込んで、とにかくヤクザどもに問答無用で体罰を与え、襟首をつかんで締め上げ、情報を拝聴するという、実に手っ取り早い捜査法ですw

昭和の刑事ドラマにおいて、ヤクザはチャンバラ時代劇の斬られ役みたいもんで、人権も何もあったもんじゃありませんw 私はこの世で極道が一番キライですから、彼らに関してだけは「駒扱い」大歓迎です。

それにしても今回の「駒扱い」は酷いもんで、ゴリさんとロッキー(木之元 亮)が事務所に入って来る場面すら省略されて、いきなり2人がヤクザどもに殴る蹴るの暴行を働いてる光景ですからねw もしかするとヤクザの皆さんは、自分がなんで殴られてるのか分かってないかも知れませんw

で、大乱闘の末に聞き出した情報が、手島は確かに事務所に来たけど金は持っていなかった、けど「金はすぐに届く」と言っていたという、その2点だけ。さんざん殴られてまで隠すようなネタとは思えませんw

金はすぐに届く……つまり手島は、1億もの現金を持ち歩くワケにもいかず、自ら宅配便で沖縄に送ったらしい……となると、宛先は何処なのか? 手島に殺された共犯者=沼沢の家としか考えられません。手島が沼沢の妹=妙子(沢田和美)に接近していたのは、彼女宛てに届けた金を強奪する目的だったワケです。

それを聞いたスニーカー(山下真司)が慌てて沼沢宅に駆けつけると、既にスコッチ(沖 雅也)が張り込んでました。しかし、家の様子がおかしい。

「勤めを持ってる娘が8時を回っても雨戸も開けず、物音ひとつ立てない。こりゃおかしいとは思わんか?」

「まさか!」

「1分後に行動開始だ!」

スニーカーにそう指示すると、スコッチはチェーン付きの懐中時計で時間を測ります。持ち物1つ1つに英国趣味が反映されており、彼が「スコッチ」と呼ばれる由縁です。

郵便局員を装って妙子を呼び出すと案の定、手島が中に潜んでました。どうやら昨夜の内に侵入したらしく、妙子が無事に一夜を過ごせた筈がないと思うんだけど、残念ながら裸じゃありませんでしたw

「動くな! 近づいたらこのオンナ殺すぞ」

手島は妙子を人質に取り、ナイフを彼女の首もとに突きつけます。こうなると刑事ドラマの刑事さんは大抵、拳銃を捨てるしかなくなるワケだけど、スコッチだけはひと味違います。彼にそんな脅しは通用しません。

「……3つ数える」

そう言うとスコッチは、拳銃を捨てるどころか銃口を手島に向けて構えます。Newスコッチの愛銃=コルト・トルーパーMkーIII・6インチ、初のお目見えです。

「その間にその女を離せ!」

全く想定外の対応に、スニーカーも手島も呆気に取られますw

「か、数えてみな。こいつが見えねえのか、こいつが!」

「ひとつ……」

「殺すぞ……ホントに殺すぞぉ?」

「やめろ! 奴は本当にやる気だ!」

スニーカーの制止を無視し、スコッチはトルーパーの撃鉄を起こします。

「ふた……」

「やめろっ!」

スニーカーがスコッチに飛びかかり、その隙に手島は妙子を突き飛ばして逃走します。

「バカモン!」

スニーカーを蹴り飛ばし、手島を追いかけるスコッチですが、時すでに遅し。手島は行方をくらまし、スコッチも再び単独捜査へと向かいます。

遅れて駆けつけたゴリさんとロッキーに、スコッチのあまりに常識外れなやり方を告げ口し、口汚く批判するスニーカー。あのまま放っておいたら、手島は妙子を刺し殺したに違いないとスニーカーは主張するのですが……

「スコッチは3つ数えるって言ったのか?」

「ええ、自信たっぷりにね!」

スコッチの事をよく知るゴリさんには、彼の真の狙いが読めたみたいです。

「スコッチは3つ数えたか?」

「は? いえ、2つ目ぐらいで俺が飛びつきましたから」

「……手島のやつ、命拾いしたな」

「はぁ?」

「スコッチは多分、2つ数えたところで撃っただろう」

「何ですって?」

大抵の人間は、3つ数えると言われれば、3つ目に掛かった所で行動を起こす。つまり、2つ目で撃たれたら何をする間もなくやられてしまう。スコッチは、手島を殺す気満々だったワケですw

「汚ねえ! それじゃ完全に騙し討ちじゃないスか!」

「確かに綺麗な手とは言えんさ。しかしな、相手が3人も殺した凶悪犯なら、それぐらいの事は平気でやる。そういう男だよ、スコッチって奴はな」

そう、この狡猾さと非情さこそが、七曲署のマジメ一直線刑事たちには無い、スコッチ最大の魅力なんです。そしてそれは、沖雅也という役者さんでなければサマにならないのです。

にも関わらずスニーカーに邪魔され、またもや手島に逃げられた事で、山田署におけるスコッチの立場はますます悪くなっちゃいます。上司は全ての責任をスコッチに、引いては彼の身柄を預かった七曲署に押しつける魂胆なのです。

「あくまでも責任逃れか……スコッチも辛かったろう……そういう署で、いつも白い眼で見られていたんでは……」

感傷的になる長さんに、七曲署捜査一係のナンバー2・山村精一=山さん(露口 茂)が、スコッチの上をいくクールさで言い放ちます。

「辛いだけで済めばいいが……」

「山さん……」

「今度の命令無視は、奴としてもかなり極端だ。恐らく、奴の胸の内は……」

その頃、スコッチは沖縄の真っ青な海を見つめながら、文字通り胸の内ポケットから1通の封書を取り出します。そう、辞表です。彼は今回の事件を最後に、刑事を辞める覚悟を決めているのでした。

(つづく)
 


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