本放映は1980年の春でした。人気者だった田口 良=ボン(宮内 淳)が殉職し、後任として五代 潤=スニーカー(山下真司)が華々しく登場するも辛気臭いエピソードばかりが続き、裏番組の『3年B組金八先生』に視聴率で苦戦を強いられてた、我々『太陽』フリークにとっては悪夢のような時期。
そのピンチを救うべくスコッチが呼び戻されるワケですが、当時の沖 雅也さんのコメントによると『太陽』復帰を打診されたのは、前年の秋だったとの事。つまり『金八』がブームを起こす以前から、スコッチの復帰は計画されてたみたいです。
その1年後に島 公之=殿下(小野寺 昭)が殉職する事が、ちょうどその時期に内定されてたそうですから、どうやらスコッチは本来、殿下の後釜として復帰する予定だった。
それが思いもよらないTBSの『金八』攻撃により、スコッチ復帰が前倒しされた結果、七曲署捜査第一係が初めて8人体制に、そして殿下の後釜は西條 昭=ドック(神田正輝)になりました。
スコッチのクールな勇姿が再び見られるのもさることながら、長らく見られなかったハードアクションが『太陽』に戻って来てくれたのが、私としては何よりも嬉しかったです。
そんなワケで、久しぶりにワクワクしながら放映を待った、私にとって非常に思い出深いエピソードです。400回記念作品で沖縄ロケ編だし、とても元気な沖雅也さんの姿が見られる点でも見逃せません。
☆第400話『スコッチ・イン・沖縄』
(1980.3.28.OA/脚本=長野 洋/監督=竹林 進)
オープニング曲は引き続き「太陽にほえろ!メインテーマ’79」が使用されてますが、タイトルバックがこの回から一新されました。非常にアクティブな映像のつるべ打ちで、番組スタッフの並々ならぬ意気込みが伝わって来ます。
特にスコッチは、爆発炎上をバックに車から飛び降りて発砲するというド派手演出(しかも2カット)で紹介されており、かなりスペシャルな扱い。
スニーカー登場時からのオープニングは僅か半年という短命だったのに、今回のはスコッチ殉職まで約2年間、一部を差し替えながら使用される事になります。
で、この第400話は第399話『廃墟の決闘』の続編だったりもします。「東亜銀行」の現金輸送車を襲撃し、約1億円を強奪したグループの主犯=手島(森 大河)を追って、スニーカーは故郷の沖縄へと飛ぶ。
手島は冷血かつ狡猾な凶悪犯で、現金輸送車襲撃の際には無抵抗のガードマンを射殺した上、追って来たスニーカーの目前で共犯者の沼沢(栗田八郎)をも射殺、さらに車で逃走中に通り掛かりの幼稚園児たちをはね飛ばすという残虐三昧。
手島に騙され利用された挙げ句に殺された沼沢が、沖縄出身者で自分とよく似た境遇だった事から、スニーカーは手島に対して憎悪を、そして元七曲署の刑事で現在は山田署にいるスコッチに対しても、強い怒りを抱いてる。
スコッチは以前から拳銃密輸の容疑で手島をマークしており、現金強奪の主犯も手島だと睨んでたにも関わらず、誰にも報告せずに単独捜査をしてた。スコッチが早く知らせてくれてたら、沼沢が殺される事も幼稚園児たちを巻き込む事も未然に防げたかも知れないワケです。
沖縄に着いたスニーカーは、まず現地に住む沼沢の妹=妙子(沢田和美)を訪ねます。沢田和美さんは’80年の旭化成キャンペーンガールで、ドラマ初出演。やっぱり芝居はヘタだったけどw、沖縄ロケ編で唯一の女性キャストとして、可憐な花を添えてくれました。
とにかくこの400回記念は打倒『金八』の切り札として大々的に宣伝されており、当時の番宣写真には水着姿で戯れる渚の沢田和美さんと刑事達という、本編とは全く関係ないショットも使われてましたw
沢田さんの白いビキニ姿がホントにセクスィ~で、股間を直撃された少年(当時)も多かった事でしょう。私は生まれてこのかた女性の身体には全く興味が無く、ヌード写真なんか一度も観た事がありません。
それはさておき、手島らしき長身の男が先刻、妙子を訪ねて来たばかりだと聞いたスニーカーは、周辺を探してそれらしき男を発見します。そして後を尾けるんだけど見失い……
「動くな!」
逆にその男がスニーカーの背後から牽制して来ました。おとなしく両手を挙げるフリをしたスニーカーは、振り向きざまに拳銃を抜き、銃口を男に向けます。
「!?」
そこにいたのは手島ではなく、スコッチ。ここで第399話は「つづく」となり、同じ場面から第400話がスタートします。そうです、今やっとドラマが始まったのですw
スコッチと初対面のスニーカーは、まだ顔を知らないもんだから銃を構えたまま固まっちゃいます。
「いつまで睨み合ってるつもりだ」
「貴様、一体……」
とりあえず相手のボディーチェックをしようとするスニーカーですが、すかさずスコッチに銃を奪われてしまいます。沖雅也さんの動きがとにかくシャープで、この人なら簡単に相手の武器を奪えるだろうと思わせる説得力がある。これがマイコン刑事やデューク刑事だと場面が成立しませんw
「人の身体を探る時は、もう少し慎重にやるもんだ」
奪ったものの、スコッチはすぐに拳銃を返却します。この時、スコッチは銃をクルッと回してグリップを差し出すんだけど、スニーカーの拳銃=コルト・トルーパーMkーIIIの4インチに、コルト・ローマン用の小ぶりなグリップが着けられてるのがハッキリ確認出来ます。
銃に興味が無い方には何の事やらサッパリ&全くどーでもいい話でしょうけどw、トルーパーというゴツゴツした銃にローマンの小さなグリップを着けると、見た目のバランスがおかしくなるんですよね。だけど握り心地はその方が良いと感じる人もいますから、これはもしかすると山下真司さんの要望だったのかも知れません。
スニーカーに銃を返すと、スコッチはさっさと立ち去ろうとします。
「待て! 貴様いったい誰だ!?」
「山田署刑事課勤務、滝 隆一だ」
「滝 隆一……あいつがスコッチ」
初登場時(’76年)のスコッチは、まさに氷のようなクールさが強調されてたもんですが、今回のスコッチはやや劇画チックなハードボイルドさで、ネクタイの色も初登場時は冷たいブルー、今回はホットな赤に変化してます。
それはスコッチの人間的な成長を示す側面もありつつ、転勤~復帰の間に沖さんが出演された『大追跡』や『俺たちは天使だ!』で好評だった、ホットかつコミカルなキャラクターも取り入れた結果のNewスコッチなんだろうと思います。
ところがその頃、東京の山田署では、スコッチの度重なる命令無視&単独捜査に上司がハイパー激怒中。実はスコッチ、ちっとも成長してない?w
見かねた七曲署の藤堂俊介係長=我らがボス(石原裕次郎)は、スコッチの身柄をしばし七曲署で預かる事を提案し、山田署側のハイパー激怒を鎮めます。
一方、沖縄に到着した石塚 誠=ゴリさん(竜 雷太)は、先に現地入りした岩城 創=ロッキー(木之元亮)に出迎えられ、ホテルでスニーカーと合流します。
「おっ、スコッチ!」
スニーカーの知らない間に、スコッチもホテルに待機してました。やる事がいちいちキザで、スニーカーはますます気に入りません。
「何か手がかりは?」
ゴリさんの質問にスコッチが答える前に、スニーカーが割って入ります。
「あったって教えてくれやしませんよ。この人はね、何だって1人でやらなきゃ気が済まない人らしいから!」
「スニーカー!」
かつてスコッチに拳銃恐怖症を(荒療治で)克服してもらった恩があるロッキーが、後輩スニーカーをたしなめます。
「スニーカー?」
「ええ、ニックネームなんですよ」
「運動靴か」
「おいっ!」
漫才的な掛け合いですが、スニーカーは真剣に怒ってますw かつてスコッチの初登場時も、ボンがよくこんな風に突っかかってました。
スニーカーは、ボンとの出逢いがきっかけで刑事になり、ボンを殺した犯人を殺しに来たのがきっかけで、七曲署の一員になった男です。そんなスニーカーが、かつてのボンと同じようにスコッチと接してる姿には、ちょっと感慨深いものがあります。
スコッチは、手島が沖縄に拳銃密輸のアジトを持っていた事や、今回の事件で3人も殺した手島に二の足を踏んだ取引相手が、既に手島と縁を切ったらしい事をゴリさんに報告します。
「さすがだな。よくここまで調べ上げたし、読みも見事だ。だが俺は気に入らんぞ。お前、その話をこっちの警察か山田署の上司に報告したのか? してないだろう。してりゃこっちの耳にも届いてる筈だからな」
「ゴリさんには話しました。たった今」
「スコッチ!」
「捜査を続けます」
スコッチは、またもや単独で捜査すべくホテルから出て行きます。やっぱ、ちっとも成長してませんw だけど、それでこそ我らがスコッチです。
ベテラン化し、すっかり人格者になっちゃったゴリさんにこんな態度が取れる若手刑事は、もはやスコッチ以外にいませんからね。そういう人がいないとメリハリが無くて、ドラマはつまんなくなっちゃいます。
「何ですか、あれ!」
「あいつはどうしても、自分の手で手島を捕まえるつもりだ」
山田署でスコッチがマークしていたにも関わらず、その目が届かない七曲署管内で、手島はまんまと現金強奪に成功し、その挙げ句に殺人三昧。スコッチの怒りたるや計り知れません。
だけどスニーカーも、スコッチに負けない位の怒りを手島に抱いてる。
「冗談じゃない、俺が手島を逮捕する!」
すぐに発砲する一匹狼のハードボイルドと、やたら血の気の多い沖縄出身の運動靴。こんなデンジャラスな大男2人の怒りを買っちゃって、手島の運命やいかに!?w
(つづく)
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